譲席の項
掲載日:2026/10/22
「おじいちゃん、どいて下さい」
若者は、席を奪い取ろうとした。
座っていた初老の、白髪が混じった頭髪と、その皺とを見るとある程度そうしても不自然ではない光景だった。
が、
「いや、結構です」
その初老の人は、きっぱり言い切った。
困った様子の若者は、その動作の着地点を見つけることが出来ずにいた。
俺はその光景を、複雑な思いで見ていた。
バツが悪そうにしている若者、それを無視しどこか不機嫌な初老。
仕方ないのに、と俺は思っていた。
すると目の前の、JKが急に。
「おじいちゃん、どいてください」
と、私が座っている席を無理やり奪い取って来た。
そして、着席するなりフルスピードで処理しだした。
新たに開発された「不揮発量子素子」なんだろう。
ああそうか、俺もそんなバージョンになったのか。
オレタチの様に古い機械はもうお払い箱。
ここはPC回路の中、チップは新たなバージョンに都度変わっていく。
件の初老のチップもその席を抜き取られ、ICソケットに新たなバージョンのチップがはめ込まれたのは言うまでもない。 了
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