組織に執拗な人材
〜〜栗崎〜〜
「じゃあ決まりだな。丁度近くに活動拠点がある。案内しよう。」
彼はそう云うと、右側の山道。いや、どちらかと云えば、道を森林が阻む獣道に消えて行った。
「………」
心の内はまだ決まっていないが、ここは従うしかないだろう。僕も彼を追い、獣道を歩く。
周りを3m程ある大きな雑草や、そのさらに上を囲む木々で埋め尽くされたこの道は、ほんの数mも見えない。
僕たちは、山を一つ越えれるくらい長い時間歩き続けた。
すると、途端獣道は途絶え、雑草や木が意図的に狩られたような雑草のアーチで囲われた道に出た。
「何だ、ここは?急に整備されてる……」
「拠点に近づいた証拠だ、登るぞ。」
彼は歩くペースを上げて傾斜を渡る。道を辿るように視線を巡らせると、頂上に白い人工物が見えてきた。
「あれが拠点ってやつか?」
「そうだ。」
彼は拠点が見えた途端、傾斜にある階段のような凸凹をすんなりと踏み歩き、あっという間に頂上へ着いた。
「お〜い、待ってくれよ〜」
一方俺はまだ整備された道の半分程度で行き詰まっている。
(あいつ、マジでバケモノだな。)
やっとの事で拠点の正面に着いた。そこは山中とは考えられないほど平坦な庭に一軒の豪邸を携え、周りは依然として草がアーチ状に囲っている。
すると、目線の先に、彼が見えた。
豪邸のやや右奥で、彼とその仲間が俺の方を一瞥し、仲間の方が小声で何かを話している。
すると、彼の言葉が仲間を刺激したのか、突然胸ぐらを掴み、大声で叫ぶ。
「おい、何云ってんだ。ここは部外者を入れない決まりだろ。」
彼は自身のやり方を信じて、沈黙している。
「テメェの分際で何で黙っていられる。大体テメェが生きていられるのは俺たちのお陰だろ!?なんか云ってみろよ!!」
その仲間も怒りで息遣いを荒くしただただ彼を睨んでいた状態で、両者の仲は膠着していた。
その時だった。
豪邸の扉が開き、熊のように背が高く、威圧的で、スーツ姿の老人が現れた。しかし、この立ち姿はそれを感じさせないほど若々しく、圧倒的であった。
「どうしたんだ、こんな朝っぱらから……」
パジャマ姿の彼は目を掻きながら呟いた。
一目で分かる。あいつはやばい。
奴の声だけで重力が何倍も重く感じた。
「「………!!」」
ふと彼らを見ると、恐怖の眼差し。その一言でしか表せないくらい、畏怖している。
足の節々は子鹿のように、口は小刻みに、全体は背骨を抜かれたかのように、体の制御が効かず、ただただ震えているように見えた。
「あ〜、またやってるね〜。」
「!!?」
突然、僕の隣には人が立っていた。身長は……
「ぐはっっ。」
身体の特長を上げる前に、地面が突然迫って来た。いや僕が倒れたのか。
「はぁ……全く、何で部外者を入れるんだ。役立たたずめ…..!」
この言葉が辛うじて聴こえ、俺は意識を失った。