暗闇は何を映す?
※注意
当作品には主人公が2人登場します。本当なら、章ごとに入れ替えるのが筋ですが、この作品ではそれぞれの視点をep2を区切りにして投稿しています。
(例) 主人公No1視点 ep1.ep2.ep5.ep6
主人公No2 視点 ep3.ep4.ep7.ep8
時には両者の視点が交わったりしますので、多少混乱するでしょうが、「それも一興!!」
と受け入れてもらえると幸いです。
一方、栗原と???方面では……
「急にどうしたんだ。そんな………動揺して。」
「………」
彼は何も言わない。いや、言えない。性根尽きたようであって何故か”清々しい様子”で動かない。そこにあったのは彼の息切れした呼吸音だけだった。
「いつまで経っても慣れないな。この感覚。」
彼はそう呟いた。冷や汗はまるでランニングした後の体のように全身を覆い。いつの間にか、また俯いていた。
「おい……どうしたんだ。大丈夫か?」
彼の重篤そうな様子を見ていると、彼の事が心配でもあり、根拠のない不安で頭がいっぱいになりそうだった。
「……大丈夫だ。これも”転生の通過儀礼”。驚かせてすまない。」
彼は顔をあげた。前とは少し雰囲気の違った様子で……いや。少しダンディーぶったイタい雰囲気を醸し出していた。
「通過儀礼?」
「そうだ。通過儀礼だ。」
彼はキメ顔でそう云った。
(いやなんで2回云うんだよ。キメ顔もダセーぞ。)
彼のどこか格好つけている様子に、俺はつい本音を云ってしまいそうになってしまったが、なんとか堪える。
「具体的に教えてくれ。今まで起こった事は一体なんだったんだ。なんでそいつは俺を殺そうとしたんだ。」
僕は、その彼が座っている死体を指差してそう云った。彼は(あっ、そうだこれ死体だった。)といった様子で、服と死体が接していた部分を叩き、そこから右の少し出っ張った岩肌に座る。
「今は云えない。まだ儀式の途中だ。」
彼は何処からともなくタバコを出し、あろう事か吸い始めた。(悪気はないんだろうが、密室でタバコ吸うなよ!非喫煙者の配慮もしろよ。服が臭くなるだろ!そういう所が祟って彼女出来ないんだよ!?)
僕がそう思っていても、彼は話も”タバコ”もやめずにこちらを見る。
「お前に今から二つの選択肢をやる。取り敢えず……ここを出るぞ。」
彼も煙たくなった洞窟が嫌になったのか、そのまま外に歩き出した。
「わ、分かった。」
僕は不満を抱きながらも、彼についていった。
「君は、この景色を見てどう思う?」
外に着いた途端、彼はそう云った。いつの間にか辺りが暗くなり、山の側面だからなのか、一層寒くなった。
僕は一生懸命景色を見ようとしたが、暗闇で遠くは何も見えなかった。
「どう思うって、暗闇で何にも見えない景色に何を求めているんだ?」
「いや、暗闇だからこそ……だ。」
彼は景色を見渡し、何処か悲しい様子でいる。