???は何かを隠している
※注意
当作品には主人公が2人登場します。本当なら、章ごとに入れ替えるのが筋ですが、この作品ではそれぞれの視点をep2を区切りにして投稿しています。
(例) 主人公No1視点 ep1.ep2.ep5.ep6
主人公No2 視点 ep3.ep4.ep7.ep8
時には両者の視点が交わったりしますので、多少混乱するでしょうが、「それも一興!!」
と受け入れてもらえると幸いです。
「お前も"転生者"なのか?」
俺が立ち上がると同時に彼はそう言った。その顔は少し暗く達観している様だったが、何処からか焦燥感を露わにする様な冷や汗を掻いていた。
「転生者って何だ?」
俺は今の雰囲気に合わない素っ頓狂な顔でそう言った。
「まぁ、そうなるのも無理ないか……」
彼は懐から帽子を取り出し、深々と被る。それはまるで少し格好つけている様にも見えて、少し"目線"を気にしている様だった。
「いいか、ここはかつて教会の中枢となる祈りの間として使われていんだ。だが、ある日その祈りの間でとある"儀式"を行った。さながら実験の様なもので、少数の神官と軍人が同伴していたらしい。そこで生み出されたのが……」
「「転生者だ。」」
僕は彼の熱弁に水を刺す、すると彼は「そうだ。」
と云って後ろにある死体に座った。
僕もそれに便乗する様に対角線上で座り込み、どちらも真剣な顔で互いを見つめ、蝋燭の炎と陽炎が揺れる。
その折、彼は目線を下げながら話し始めた。
「その転生者って云うのは人類初めての"冥界技術"として名を馳せた。その実験自体も、神官も、そしてその国も……」
「ちょっと待て。」
僕は彼の言葉を中断させ、彼はこちらを向いた。
帽子越しでも分かる。"何か"に気づかれて焦っている様な顔色をしていた。
「その"冥界技術"って云うのは何だ。」
この質問をした時、彼の動揺はより顕著となった。手足は震え、身震いし、そして冷や汗がはっきりと目に写る。
「それは……関係ない。お前にとって知ってても何もならない情報だ。」
「だったら何でそんな動揺しているんだ?」
「!?」
彼は思わず下唇を噛む。「しまった」と、そういう後悔の念がじわじわと伝わってくる。
「それは、だな。」
彼は重い口を開け、重圧で押しつぶされそうな体を起こし、僕と目を合わせた。
それはまるで心臓発作を発症した患者が倒れた時にする目の様に、何かからもがき苦しむ心が垣間見える。
「死者の魂と現世を繋ぐ技術。しかし、本質はそこじゃない。」
連続して彼は続ける。まるで今、何か大切な事を告げるかの様に。
「実験は、肉体と魂を使う。ただ、そんな実験の為に犠牲になろうとする人も、死体を抱える遺族もいない。そこで、君ら転生者が現れた。」
彼は全てを吹っ切るようなスッキリした顔立ちを見せる。
「つまり君らは人権のない"鼠"として実験に無理矢理その体を捧げた。」
盗賊は真実を明かした。何の関わりのない赤の他人1人を正しい方向へと導く為に。
栗崎は、この盗賊の”勇気”で救われた。しかしそれは本当に彼が純粋に”救いたい”と思ったからとも限らない。
もし、彼の話が全て”嘘”だったら?
いや、そんな事は無いにせよ、彼は必ず嘘をついている。彼の本心は善意か悪意か。これからそれが明らかとなる。
ただ、今は少し情報が足りない。もう少し、別の角度で物事を見る事にしよう。
今から丁度一時間前。森林の小槍で、また転生者が現れたらしい。だが、情報によれば彼が目を覚ましたのはその五時間後……彼の身に一体何があったのだろうか。
"そして舞台は、ここから南西にある、遠方の島々に移る。"