転生者狩り
「それと、魔法医学の一環で……って言うのがあるんだ。」
源二さんの口からは、現実では考えられない事ばかりを教えてもらった。
魔法や魔族、勇者、賢者、僧侶、魔法使い………
「そうなんですね。勉強になります。」
この一時間、僕と源二さんの間には、少し距離感が生まれていた。
始めの内は良かったが、段々と、軽度の記憶喪失を患っている僕は、彼にとってはお荷物なのかも知れない…………そう思い始めた。
「ところで、あの………!」
「しーっ…」
僕がそのことについて切り出そうとすると、彼は人差し指を僕の口に当てて静止させた。
周りを、見渡している。
「隠れろ…!!」
源二さんは声を押し殺しながらも、力強い声色で警告する。
「隠れろって、何から?」
僕がとぼけたような声で云うと草むらの中から指を指した。
「あれだよ!!」
その方向には、20m前あたりに人間が2人。どちらも銃を構えている………
〜〜銃!!何でここに!?〜〜
取り敢えず僕は、源二さんとは反対側にある草むらに隠れ、二人の様子を伺っていた。
微かに……聴こえる!
僕は聴覚を巡らせ、二人の会話を耳にする。
「……でさ、またあいつやらかしたんだよね〜。」
「これでもう何回目だよ、で?それであいつは今懲戒室にいるん?」
「いや、もしかしたらもうクビになってるかも。物理的に。」
「やめろよそんな冗談、冗談じゃ無くなるだろ。」
「………」
「………」
(急に……黙った?なぜ?)
僕は草むらから彼等がいた方向を覗いたが、もう誰もいない。
足音もせず、源二さんも何が起こっているか分からないみたいだ。
ガサガサ……
草むらを掻き分ける音がした。
僕よりもっと前方、丁度源二さんが見やすい方向にある。
「おい!!!そこにいるのは分かっているぞ!!!」
銃を持っていた片方の怒鳴り声がした。足音もこっちに近づいている。
バン!!バン!!
銃は草むらのあらゆる所から貫通した。僕は草むらより奥の少し大きな窪地に入る。
「はぁ………はぁ……」
僕がさっきまでいた草むらから、誰かが出てきた。
肩から血を流し、一瞬目が合ったが、相手は構わず走った。
源二さんと僕が隠れた草むらの奥に山道があり、そこに向かおうとしたのだろう。
バン!!!……ぐちゃぁ
山道には、もう一人の仲間がいた。あの息が荒い人はその人にどこかを撃ち抜かれて死んだ。
死体の頭部だけは、こっちを向いて白目を剥いている。
「やったか?」
銃を持った男は、仲間と合流する為、奥の山道に消えた。
声だけは聴こえるが、いつの間にか遠くにいる。
「今だ!!逃げるぞ!」
源二さんは中腰になりながら走り、僕と一緒に窪地より奥に向かった。
「あの人達、何なんですか?銃持ち出したりして、物騒じゃないですか。」
話しかけた時、僕は源二さんを見たが、源二さんは僕を見ずに、前だけ向いて話す。
「あいつらは、転生者を狙う転生者。盗賊だ。」