有憂の美。
〜〜栗崎〜〜
尋問も終わり、行く宛もなく野原を歩く。
俺が気絶している間にどれだけ移動したか知らないが、情景が山地とは一変している。
「こう云うのもありかもな……」
そう思いながら、平和を謳歌する。。………
ガン"!!!ガン"!!!ガン"!!!ガン"!!!
金属の鈍く、そして何よりも大音量で流れる鐘の音。誰よりも早く、誰よりも丁寧なモーニングルーティーンを過ごさなければならない。
#シェアハウスの優雅な1日。
(60人が窮屈なハンモックで"無理矢理"暮らしているだけ。)
#在宅勤務
(社内に寮へと繋がる通路があるから、実質在宅勤務。というか会社じゃない。)
#ユーモアな1日
(ユーモア溢れる。ではなくユーモアな1日。ブラックは外から見れば面白い。)
何故こんな暮らしをする羽目になったのだろう。
それは、約二日前に遡る。
尋問を終えた俺は、優雅に外へ飛び立った。
………筈だった。
周りには顔を真っ黒なヘルメットで隠した兵隊が俺に目掛けてあらゆる刃物を構える。
「あっ!ごめーん。今人手足りて無いから拉致らせて貰うよ〜〜。今日から宜しく〜〜………w。」
遠くから聴こえる。あの女性尋問官の声。すかさず俺は扉を見た。
そこには、今までにない満面の笑み。人生で一番幸せそうな顔をしていた。尋問を終えて、安心し切ったところをこの仕打ち………
図って実行したのなら、相当な悪趣味だ。
俺は兵士たちに従うしかなかった。後ろを振り返ると、彼女はバラエティー番組を見ているような引き笑いをしていた。
「そのまま笑い死ね!!」
そう、彼女の顔を見ていってやった。ただそれでも「負け犬の遠吠えだ!」と軽く流され、云って笑うのをやめなかった。
これが、俺の入隊日記である。
そして今、俺は訓練を受けている。
どうやらこの世界には、"魔法"という物があるらしい。
………いや、もう分かり切った事か。
俺は、初日から魔法についての基礎知識を教授に叩き込まれた。
実践、実践、授業、実践………
どうやら俺には魔法の才能があるらしく、これまで難なく過ごしてきた。
(そんなに才能があるのなら、特待制度で………早く休みたい。)
そう思う1日を、今まで二日分過ごしたのである。