裏ルートからの招待
「着いたな。」
息を切らしながら走っていると、初めの転生して来た所に着いた。30度程の斜面で油断したら落ちそうなくらい傾いている。
傷だらけの男が歩いたのを目撃した山道には、僅かながら血が散乱している。ここに来る時にかの山道を通ったが、血が噴き出ているのは"ここだけ"であった。
そして、頂上に視線を向けてみるとあの女に引きずられた跡がある。
〜〜手掛かりは無さそうだな〜〜
折角ここまで来たのだが、何やらそれ以上の情報は望めない。僕は来た道を戻ろうと斜面を降りた。
その時だった。
人の話し声と足音が聞こえてくる。しかもあまりにも鮮明で、今にも影から表れそうである。
〜〜どこか……隠れなきゃ〜〜
本能でそう感じた僕は、山道のしたにあるちょっとした凹地に身を潜めた。
息を殺して山道を見上げる。
すると、1人の面影が見えた。この角度ではあまりよく見えない。
よく目を凝らして見ると、両太ももに傷。腕も怪我をしている。そこでついこの前、山道を横切った傷だらけの男がフラッシュバックした。
なんでここに……
"あの男だ"
捕まったんじゃ無いのか
なぜここにいる。
〜〜一体何をしに来た。〜〜
様々な思考が走馬灯のように脳へと流れ込み、混乱と驚愕で少しだけ戸惑った。
その戸惑いの間、僕の記憶には少しだけ隙間できた。その時の記憶は、いつまで経っても思い出せない。
気付くとあの男は消えた。
一体ここへと何をしに来たのか、それは分からない。だからこそ、探索しなければならない。
僕は立ち上がった。山道の高さを頭だけはみ出し、その状態でそっと周りを見た。
〜〜目の前に、革製のバックがある。〜〜
そこに目を向けた僕は、山道に登り中を確認する。するとそこには、日用品や少しのガラクタ、そして"一枚の地図"が目に入った。
その地図は所々見えなくなっており、真ん中に大きくバツ印がされてある。
〜〜この地図………もしかして!〜〜
警官の女性から貰って、右ポケットに仕舞った村への地図。それとこのボロボロすぎる地図を比べてみた。
それはちょうど村の反対側を指し、木が生い茂る森林の中を通った先を示している。
〜〜手掛かり、あった!!〜〜
思いついたが吉日。僕はバツ印がされてある方向を目指した。
もしかしたら、凶悪犯罪者のアジトかもしれない…
そんな考えは不自然にも生まれなかった。傷だらけの男が現れて、突如として消えたあの僅かな空白に、何か大事な情報があったかもしれない。
その微かな後悔が、僕の行動を後押ししたのである。