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密室に、男女2人。何も起きない筈はなく……

「おーい、ここがどこだか分かるか〜。分かるわけね〜か。」



 目を覚ますとそこには、見知らぬ女性が1人。いや、俺を気絶させた奴と同じ声質の女性が1人立っていた。

手脚は拘束され、身動きが取れない。



「尋問やって〜ってお願いされたんだけど〜、別に聴くことないしね〜。」



 ノートを片手に座る彼女は、何かをメモしながら時々こっちの顔色を窺ってくる。


「君、運無いよね〜。下っ端の云うこと間に受けてさ〜。さっさと逃げればよかったのに〜。」


「そのせいでこんなダルい事やらされてるんだよ〜……!」


 気のせいなのか、徐々に彼女の顔が強張っている気がした。そして、本人は隠しているつもりなのか、言葉の節々に怒りの感情が表れている。



「まぁ基本的な質問していくよ〜。」


 彼女は姿勢を正して、怒りの感情も抑え、向かい合うように座る。


「君、転生者……?」

 語尾を伸ばす癖が消え、鋭く凍てついた言葉が僕の心を揺さぶった。もし俺が嘘をつくつもりであったら、動揺しているのが一発でバレていただろう。


「そ、そうだ。」


 俺が若干引き気味な口調で答えると、彼女は執拗に俺の頭上を見た。

 まるでそこに真偽が写されているかのように、真剣で、冷酷な表情をノート越しに見せる。


「な〜んだ。君は白だったか〜、残念だ〜。今から拘束を解くよ〜。」



 ガラスをソプラノ、アルト、テノールの音階で割ったような、破壊音のユニゾンが、この部屋に響いた。


 と同時か以後か、手脚の縛られた不自由感が消えた。拘束が解かれたのだ。



「出口はあっちだから〜。困ったら〜近くのジジイに聴いて〜。」


 ノートを見ながら出口の方を指差す。まるで俺には興味がないような態度をとられたのだ。


 別に特別な待遇は求めていないが、こんなに冷たくあっさりだと、少し異世界の幻想が崩れる。




 僕は静かに立ち上がり、出口へと向かった。

「ちょっと待って〜。」


 彼女は突然声を上げた。それは咄嗟に思い出したかのように、突発的な行動に見えた。


「私の名前、真上 里穂(みかみ りほ)って言うんだけど、見覚えある。」


 語尾の伸ばす口調がまた消えた。しかも、こっちの質問は俺の生死を別ける物だと、彼女の表情が教えてくれた。それ程までに、感情が抑えきれていなかったのだ。


「知らないっす。」


 またもや、彼女は俺の頭上を見る。ノートと見比べ、気が済んだのか手で追い払う仕草をした。



 (もう興味ないから、さっさと帰れって事か…‥)


 俺はこの様子を見て、何故か安堵した。選択を間違え、生き絶える未来が見えたからだ。



(真上 里穂……か〜。ちゃんと和名だな。異世界も名前は和名なのか?)


 そんな疑問を抱くも、この世界に来て自己紹介された事がない俺には、判断をすることができない事だった。


 それはまるで、異世界に来ても俺に人望が無いと暗示しているようで、心に潜む古傷が少し開いた気がした。


 


 



 





 

 

 

 

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