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元社員への聞き取りについて_1

聞き取り実施日:2024年8月20日

聞き取り実施者:益岡 隆弘

対象者:遠藤さん(元社員)

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えっ?矢白が榊さんの引き継ぎをした日のこと?

覚えてますよ。あの日は、なんというか、空気がちょっとピリついてた感じでしたね。

無断欠勤が続いてたけど、結局榊さん、退職しちゃったじゃないですか。


正直、引き継ぎ資料があまりに不十分でね。

矢白も「こんな状況で引き継ぎって無理だろ!」って怒鳴る勢いで文句言ってました。


怒ってた理由もわかりますよ。榊さんの資料、驚くくらいスカスカで。

肝心の顧客情報や契約履歴が抜けてたり、重要なやりとりの記録も不十分だったんです。

僕も横で聞いてて、ああこれは相当腹立ててるなって思いました。

まあ、ああなるのも無理はないです。


でも、一通り怒ったら、さっと頭を切り替えて、榊さんの営業日報を探し始めてました。

僕もちょうど仕事の連絡待ちだったんで、一緒に探してたんです。


それで見つけた営業日報、なかなか興味深かったですよ。

榊さんが入社したばかりの頃からの記録が残っててね。最初の方なんて、怒られた話ばかり書いてあったんです。

「上司にミスを指摘されました」とか、「お客様対応で失敗しました」とか。


読んでて、ちょっと笑っちゃうようなエピソードが多かったんです。

今の榊さんって、部署内でもトップセールスだったじゃないですか。

それが新人の頃はこんなだったのか、と思うと、なんだか親近感が湧きましたね。


でもね、ちょっと気になることがあったんです。

営業日報の中に、頻繁に出てくる名前があって。


「■■さま」って書かれてたんです。


最初はなんとも思わなかったんですけど、何度も何度もその名前が出てくるんで、不思議になってきて。

「■■さまと新しい契約を締結しました」とか、「■■さまから追加発注をいただきました」みたいにね。

だんだん榊さんの顧客の中でも取引が大きくなっていってるみたいで、そういう記録が出てくるんですよ。


でも、僕、その名前に聞き覚えがなかったんです。


普通、そんなに大口の取引先がいれば、部署内で共有されていてもおかしくないじゃないですか。

これが普通の中小規模の取引先なら分かりますよ。

でも、日報を見る限りでは、■■さまは榊さんの営業成績を支える大口の得意先だったはずなんです。


誰なんですかね、「■■さま」って?


矢白もやっぱりそれが気になったみたいで、「■■さま」について顧客管理リストを調べてました。

特に榊さんが担当していたような大口顧客なら、詳細が記録されているはずです。


でも、驚いたことに、何も出てこなかったんですよ。


名前も、住所も、メールアドレスも。もちろん電話番号もなければ、商談履歴もゼロ。

それどころか、「■■さま」に関連するファイルや資料が何も登録されていなかったんです。


こんなこと、普通じゃ考えられませんよね?

どんな取引があったか分からなければ、引き継ぎどころじゃありませんよ。


僕も矢白も顔を見合わせて、「これ、どういうことだ?」って思いました。

顧客リストに載っていない顧客なんて、そもそも取引が成立するわけがない。

それなのに、榊さんの日報には確かに「■■さま」との商談が記録されている。それも、かなりの頻度で。


おかしいですよね。


榊さん、一体誰に、何を売っていたんでしょう?

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