2択なら…
「俺のスキルは分かった。2択なら絶対に勝てる――これは絶対の力だ!」
俺が向かったのは、やはりルーレット。
「赤か黒か」のシンプルな2択は、まさに俺のスキルの本領を発揮できるゲームだ。
「さあ、赤に全額20枚賭ける!」
ディーラーが円盤を回し、白い玉がカタカタと音を立てて跳ねる。俺の心臓もそれに合わせてバクバクと跳ねる。
結果は――「赤」。
「きたあああ!」
金貨は倍の40枚になり、俺は勢いに乗る。
「やっぱり俺のスキルすごくない?!」
次も「黒」に賭けて勝利。その次も「赤」に賭けて勝利。金貨は順調に増えていった。
ルーレットで60枚になった俺は、次に「コインフリップ」のテーブルへ向かった。
「コインの表か裏を当てるだけの単純2択ゲーム! まさに俺のためのゲーム!」
ディーラーが笑顔で迎えてくれるが、どこかその笑顔が怪しく見える。
「表に20枚賭けます!」
ディーラーが金色のコインを弾き、それが空中でくるくると回る。俺はジッと見つめながらも、自分のスキルを信じた。
結果は――「表」。
「ほら、きた!」
ディーラーは少しだけ驚いた表情を浮かべたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「次も表に20枚!」
再び結果は「表」。金貨は一気に100枚に到達した。
「やっぱり俺のスキルは2択なら絶対勝てるんだ!」
ディーラーの笑顔は完全に引きつっていた。
(なぜだ?! なぜ?! 表になる? コインに細工しているのに!)
俺は何度も勝負を繰り返し、ついに金貨を200枚に増やした。どのゲームでも、2択さえ成立していれば確実に勝利する――その確信を得た。
「これなら1000枚も夢じゃないな!」
カジノ内を見渡しながら、俺は次に挑むべきゲームを探す。
「おい、あの少年……あまりにも勝ちすぎじゃないか?」
俺の勝利を見守っていたディーラーたちが、ざわめき始める。
「確率的にあり得ない勝率だぞ。特別な能力でもあるのか?」
「いや、そんなことは……。けど、なんで細工も効かないんだ?」
どうやら俺のスキルの存在に、ディーラーたちも気づき始めたようだ。
「とにかく、これ以上勝たせるわけにはいかない。ゲームを慎重に進めるぞ!」
俺の前には新たな障害が立ちはだかろうとしていた――。
「これで分かった。俺のスキルは2択なら勝てる! 絶対にだ!」
そう自分に言い聞かせながら、俺は次なるゲームに向かう。残る目標はあと800枚。俺にはスキルという絶対の武器がある。
「さあ、ギャンブラー佐倉悠斗の本領発揮だ!」
そう言って拳を握りしめた俺は、ディーラーたちの思惑も知らずに、新たな勝負の場へ向かった――。
「よし、あと800枚だな……このペースなら楽勝だろ!」
ところが、その時ふと気づく。
「あれ?なんか周りの空気、変じゃないか?」
さっきまで笑顔で対応していたスタッフやディーラーたちが、どこかソワソワして俺を見ているように感じる。
「気のせいか? いや、俺が勝ちすぎてビビってんのか? いや、まさかイカサマを疑われてるのか?」
そう思いつつも、背中に冷や汗が流れるのを感じる俺。だが、次の勝負を探して足を進めることにした。
「次はどんなゲームにするかな……ここからは少し慎重にいこう」
そう思って歩いていると、場内の隅に新しく設置されたテーブルが目に入る。
「なんだこれ……?」
近づいてみると、そこには「デスコイントス」という不吉な名前が掲げられていた。
「デス……コイントス?」
このネーミングセンスマジでなんなん? イカサマしてますって言ってるようなもんじゃん。
スタッフがにこやかに説明してくれる。
「これは当カジノの新しいゲームでして、特別なルールで楽しんでいただけます!」
「……特別なルール?」
スタッフが手にしたのは、普通のコインより少し大きな金色のコイン。
「このコインを使い、裏か表を予想していただきます。ただし、負けた場合は賭け金が倍額没収となります。」
「倍額没収!? そんなのアリかよ!」
スタッフはさらに付け加える。
「ですが、勝てば賭け金の4倍が手に入ります。」
「4倍!? それ、めちゃくちゃおいしいじゃん!」
俺は一瞬だけ浮かれたが、すぐにハッとする。
「待てよ、これって細工されてないだろうな?」
スタッフは満面の笑みを浮かべて言った。
「当カジノでは一切の不正を禁じておりますので、ご安心ください。」
いやーそれなら安心しました! ってなるか! デスコイントスという名前で不正無しだったら逆に怖いわ。それに、その笑顔が逆に怪しいんだよ!
だが、俺には分かっていた。どんなに細工されていようと、このゲームは2択。俺のスキルがあればきっと勝てる。相手が細工していても、勝てるのかどうか試しておいた方が後々の事を考えると良いし。
「よし、やってやろうじゃねぇか! 表に50枚賭ける!」
ディーラーが金色のコインを高々と掲げ、力強く弾いた。コインが宙を舞い、テーブルの上に落ちる――。
「表!」
「やっぱりな!俺のスキルに死角なし!」
金貨が一気に200枚増え、俺の合計は400枚に。周囲のギャンブラーたちがざわめき始める。
「おい、あいつまた勝ったぞ!」
ディーラーも少し焦り始めたようだが、俺は完全に調子に乗っていた。
「次は100枚だ! もちろん表に賭ける!」
俺が次の勝負を始めようとする中、カジノの裏側ではディーラーたちが集まって緊急会議を開いていた。
「どうする!? あいつの勝ち方、普通じゃないぞ!」
「何か特殊な力を持っているとしか思えない。細工も効かないなんて……!」
「今は勝たせておくべきだ。だが、次のゲームでは絶対に勝てない仕掛けを用意する」
「……どうやって?」
「あいつが『必ず勝てる』と思い込む状況を作り、そこから追い詰めるんだ。そしてペインズダイスに引きずり込む」
ディーラーたちは企みを進める一方、俺はそんなことには気づかず勝負に夢中だった。
次のデスコイントスでも勝利を収め、金貨はついに800枚に到達した。
「よっしゃあああ!あとちょっとで目標達成だ!」
だが、この時俺はまだ知らなかった。次の勝負が、カジノ側の本当の罠だということを――。
「やっぱり俺のスキル、最強だな。細工されてても勝てるって、もう無敵じゃん!」
浮かれ気味の俺は、次なる勝負へ向けて意気揚々と歩き出す。だが、そんな俺をディーラーたちの視線が冷たく見守っていた――。
「次のゲームであいつを仕留める」