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Aランク同士の戦い

ギルドの模擬戦闘フィールドに俺たちは集まり、ついにAランク魔法士同士の決勝戦が始まる。


 グランディスとセリーナはお互いに軽く会釈すると、戦闘態勢に入った。開始の合図を待つ間、空気が張り詰めていくのがわかる。


「準備はいいですね? では……始め!」


ギルドスタッフの掛け声と共に、二人の激突が始まった。


疾風刃ウィンドスライサー


 グランディスが詠唱を終えると、空気を切り裂く音と共に鋭い風の刃がセリーナに向かって放たれる。その速度は目で追うのがやっとだ。


「早い……!」


 俺が驚きの声を上げる間もなく、セリーナは冷静に足を一歩引き、風刃の軌道を見切る。


「無駄な力ね」

セリーナがそう呟いた瞬間、周囲の地面が淡い赤い光を帯びた。何か仕掛けている――そう気づいた時にはもう遅い。


炎粉爆散フレイムスパーク


 セリーナが発動したのは、小さな炎の魔法。だが、その威力は侮れない。グランディスの風魔法が巻き起こした土埃に火が付き、突然、爆音と共に火柱が立ち上がった。


「な、なんだと!?」


 グランディスが一瞬怯んだ隙に、セリーナは次の魔法の準備を進めていた。


「これで終わりではない!」


 グランディスが一呼吸で態勢を立て直すと、再び風を操り、自らの体を風で包み込む。速度を劇的に上げ、セリーナへと突進していく。


風翔術ゲイルステップ


 まるで風神が駆けるように高速で移動するグランディスに、俺もリディアも息を飲む。


「こ、これがAランク魔法士の戦い……!」


 だが、セリーナは動じない。冷静に彼の動きを見極めながら、地面に土属性の魔法を仕掛けた。


「粉塵爆発だけじゃないのよ」


 小声で呟くと、地面が波打つように動き出し、グランディスの足元が突然崩れた。


「くっ! 地形操作か!」


 グランディスがバランスを崩したその一瞬を逃さず、セリーナは炎と水の魔法を同時に発動する。蒸気が立ち上り、視界が遮られる中、セリーナは後方に飛び退いて距離を取る。


△▼


「何だこれ……」


俺は目を見開いたまま呟く。隣でリディアも同じようにポカーンと口を開けている。


「悠斗……これ、私たちついていけるのかな?」


リディアよ、愚問だぞ。出来るわけないじゃないか。俺たちはゴブリンしか倒してないんだ。


△▼


 視界を奪われてもなお、グランディスは諦めない。


「大気の加護よ、我が手に力を!」


 彼の声と共に、周囲の空気が渦を巻き始める。蒸気を吹き飛ばしながら、強大な竜巻が発生する。


暴風竜巻ストームテンペスト


 ギルドの観戦席からも悲鳴が上がるほどの威力だ。竜巻はセリーナを飲み込もうと迫りくる。


だが、セリーナは一歩も動かない。


「無駄よ」


 彼女の手から放たれたのは、小さな土の魔法。それが竜巻の中心部に飛び込むと、砂塵が巻き上がり、竜巻の形が崩れていく。


「な、なんだ!?」


「強大な力は、時に自身を崩すきっかけになるのよ。あなたの竜巻は確かに強力。でも、制御が甘い」


セリーナの言葉に、グランディスは悔しそうに歯を噛む。


△▼


「私どうしよう…? 面接とかで偉そうなこと言って…」


 リディアが隣で青ざめながら聞いてくる。俺も同じ気持ちだ。どっちが勝ってもやばい実力者だ。


俺は思わず思った。

「勝った方にリーダーになってもらうか…」


リディアは目を丸くして俺を見つめた後、小さく微笑んだ。

「は? 何言ってるの? リーダーの座は譲らないわよ」


えっ! 俺たちのパーティーのリーダーはリディアだったのか? 初めて知ったぞそれ。


△▼


 グランディスは肩で息をしながら、額の汗を拭った。セリーナの冷静な戦術に翻弄され、彼の体力は着実に削られている。


「なるほど、さすがだなセリーナ。冷静で的確、まさに隙がない。でも……俺はこのまま終わるわけにはいかない」


 グランディスは背中に背負っていた武器――エメラルド色に輝く刀身を持つ剣をゆっくりと抜き放った。その刃先が光を反射し、周囲に淡い緑の輝きを放つ。


「その剣……!」

セリーナがわずかに表情を動かす。


「この風の刃は『シルフ』。風神の力を封じ込めたものだ。俺にとっては奥の手……今こそその力を解放する時だ」


 グランディスの声が響く中、エメラルドの刀身に風が纏い始めた。風が渦を巻き、彼の周囲に見えない翼を生み出すように広がる。そして、グランディスの身体がふわりと浮き上がった。


「俺に力を貸せ、風神!」


 その瞬間、セリーナを中心に強烈な竜巻が発生。砂塵と風が吹き荒れ、視界は完全に遮られる。竜巻の中でグランディスの姿はかき消えた。


「これは……!」

セリーナは微かに眉を寄せながら、周囲の風を観察する。


だが次の瞬間、竜巻の中からグランディスが飛び出した。


疾風斬テンペストブレード!」


 その斬撃は音を置き去りにする速度でセリーナを襲う。彼女は咄嗟に盾となる土の魔法を展開するが、グランディスの一撃がそれを切り裂く。鋭い風の刃が彼女の肩をかすめ、血が散った。


「くっ……速い……」


 再びグランディスの姿は竜巻の中に消える。そして別の角度から現れ、斬りかかる。彼の動きは読みにくく、セリーナの防御をかいくぐる。


 竜巻の中から現れる度に、彼女に斬撃を浴びせ、再び消える。その攻撃の連続に、さすがのセリーナも徐々に防ぎきれなくなり、小さな斬り傷が増えていった。


△▼


「グランディスすごいな! セリーナが追い詰められてる」

俺は拳を握りしめながらその光景を見守る。


隣のリディアは唇を噛みしめていた。そういえばこいつセリーナ推しだったな。


「大丈夫! セリーナなら何か手を打つはずよ」


勝利を信じて疑わない、完全にファン目線じゃん。


△▼


 だが、セリーナの瞳には一切の動揺は見られない。冷静に風の動きを読みながら、小さな魔法をいくつも展開していた。


「……なるほど。この剣、風神の力を封じた武器ね。確かに力強いけれど、強力な力には必ず隙が生まれるもの」


 彼女は手の中に小さな光の球を作り出し、それを竜巻の中心に投げ込んだ。


「……確かに、グランディス。あなたの力は圧倒的。でも……その力を使うたびに、あなたは少しずつ動きのパターンを晒しているわ」


セリーナの瞳が冷静に輝く。その視線にはわずかな焦りすら感じられない。


「これで終わりだ、セリーナ!」

グランディスが最後の一撃を放とうと竜巻の中から飛び出す瞬間、セリーナは静かに手を掲げた。


「……読めたわ」


 その言葉とともに、セリーナの周囲に小さな光の球体が無数に展開される。それは彼女が先ほどから準備していた魔法だ。


陽光爆裂ルミナス・デトネーション!」


 光の球体が次々と爆発し、グランディスの周囲を覆う。眩い閃光が広がり、竜巻が崩壊していく。


「ぐっ……なに!?」

光の爆発に包まれたグランディスは空中で体勢を崩し、竜巻の動きを完全に封じられてしまった。


セリーナはその隙を逃さず、地面を叩いて新たな魔法陣を展開する。


土牢檻獄アース・エンブレイス!」


 足元から巨大な土の腕が生え、グランディスの体をがっちりと掴む。その力に抗おうとするが、エメラルド色の剣に纏った風もその動きを止めることはできなかった。


「これ以上動かないで。あなたを傷つけるつもりはないわ」

セリーナの声には冷静さが漂うが、その目は勝利を確信した輝きに満ちていた。


 グランディスは地面に降ろされ、剣を握る手を緩める。そして、苦笑を浮かべながら言った。


「参った……セリーナ、完全にお前の読み勝ちだよ。俺の竜巻と風神の力をここまで封じ込めるとはな……」


セリーナは軽く息をつき、微笑む。

「あなたの力は本当に強いわ。でも、力任せではなく戦況を見極める冷静さが必要なの。これであなたもわかったでしょう?」


グランディスはうなずきながら立ち上がり、セリーナに手を差し出す。

「素直に認めるよ。勝者はお前だ。いい戦いだった」

セリーナはその手を取ると、軽く握り返した。


模擬戦を見届けた後、しばらく俺たちは口を開けたまま、その場で動く事が出来なかった。


「ちょっと悠斗、私たちがしっかりしないと!」


「あ、あ、ああ…そうだったな」


気を取り直して俺たちは会場に降りていく。


リーダーのリディアが二人に語りかける。


「セリーナ、そしてグランディス。本当に素晴らしい戦いだった。二人とも私たちの仲間にしたいぐらいだけど……今回の模擬戦、勝者はセリーナよ。私はリディア、そしてそっちが悠斗よ。訳あってリディーとユッティーと名乗ってるの」


セリーナは静かに一礼しながら言う。

「リディア、そして悠斗よろしく頼む。私があなた達の足りない部分を補う。だが、あなた達にも成長してもらう。今のままでは全く話にならないからな」


えっ…キャラ変?? セリーナさんなんか怖いんですけど。俺、現状維持でいいです。とは言えない雰囲気だぞ…。


「よ、よろしくお願いします。師匠!」


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