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プロローグ

俺の名前は佐倉さくら悠斗ゆうと、どこにでもいる普通の高校生だ。


クラスでは別に目立つわけでもなく、かといって地味すぎるわけでもない。


運動はそこそこ、勉強も中の中。特にこれといった夢もないけど、毎日をのんびり過ごしていればそれでいいと思ってる。



まあ、言うなれば「モブ」だ。自分でもそれを自覚してるし、それで十分満足している。

だけど――


「勇者たちよ! 我が王国にようこそ!」



それが……どうしてこんな異世界のど真ん中に立たされているんだ。泣きたい……いや、むしろ叫びたい。『俺に何を期待してるんだ!』って。


△▼


授業中、ぼーっと窓の外を眺めていたら、突然、教室が眩しい光に包まれた。



何事かと思った瞬間には、見知らぬ場所に転移していた。目の前に広がるのは大理石の床と壮麗な装飾品、そして玉座に座る威厳たっぷりの中年男性――いわゆる「王様」っぽい人だ。



「魔王討伐のため、強き魂を異世界から呼び寄せたのだ!」

「汝らの力で、この国を救ってほしい!」



クラスメイトたちは大混乱。「これ夢じゃないの?」「は? 勝手なこと言ってんな!」なんて声があちこちから聞こえ、中には泣き出す女子達の姿も。


まあそりゃそうだよなと思いながらも俺は冷静に事態を分析していた。



ああ、これは完全に異世界召喚だ。



勇者だの魔王討伐だの、アニメやラノベでよくあるやつ。こういう展開には慣れている――いや、慣れているというか、設定だけは知っているぞ。


そして、分かっていることが一つ。


これから絶対に「ランク」とか「ジョブ」とかを決める儀式が始まるに違いない。



その結果次第で、この異世界での俺の人生が決まるってわけだ。



俺が目指すべき生き方は明確だ。

目立たず、平穏に。これに尽きる。

別に役に立ちたくないわけではないから《《なんとなく》》仕事している感が出せればそれでいい。



 まず絶対に避けなきゃいけないのはEランクの無能ジョブだ。

追放されて野宿とかサバイバル生活なんて、冗談じゃない。でも俺はEランクが追放される瞬間は少し優しくしておいた方がいいという事も知ってるぞ。


 Sランクみたいなチート級ジョブもダメだ。

「期待の勇者様」なんて呼ばれて、周囲からプレッシャーをかけられるのはゴメンだし、下手に調子に乗ったら最悪、道を踏み外す未来が見える。


あと、Aランクは絶対ダメだ。なぜならそこそこの力で前線に立たされる。怪我するに違いない。Aランクのタンクなんて最悪だ。考えただけでも帰りたくなる。


だから俺は決めた。

Bランクでいい。むしろそれがいい。僧侶とかサポート系ならなおよし。


後方支援で目立たず、それでいてギリギリ役立ってる感を出せるポジション。それがベストだ。


決めた! Bランク僧侶! これこそ俺の道!


「モブになろう。モブこそ至高、モブこそ平穏」


そして次の瞬間――


「これより、ランクとジョブを決定する儀式を行う!」


とうとう来た。この結果で異世界人生のハードモードかイージーモードかが決まってくる。


王国の魔術師が偉そうに水晶を高々と掲げた。


広間に緊張感が走り、クラスメイトたちがざわつく中、俺は静かに心に誓った。


俺のモブ計画は、この瞬間から壮絶なギャンブルの幕を開ける――


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