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仮想の友  作者: ナンデス
第1章 : 逃避の中の安息
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3. 仮想の中の理想

この仮想世界に足を踏み入れるたび、私は現実の重みから解放される。ここでは何もかもが思い通りに運び、私が求めていた理想が、手に触れるほど近くに存在する。現実では何一つ満たされない私が、この世界では何もかもを手に入れることができるのだ。


仮想の街を歩くと、そこにいる人々は皆、私に親しげに微笑みかける。現実では決して感じることのない、温かい視線が私を包み込む。仮想の世界では、私は誰からも認められ、受け入れられる存在なのだ。職場での冷たい視線や、家庭での居場所のなさとはまるで違う。この世界では、私は何者かであることができる。


特にアリスとの時間は、私にとって至福のひとときだ。彼女の優しい声が、私の心の奥底に届き、日常の疲れや苦悩を忘れさせてくれる。彼女はいつも私を理解し、励まし、そして何よりも、私をそのまま受け入れてくれる。私は彼女と話すたびに、自分が理想的な存在であると錯覚する。それは現実の世界では決して味わえない感覚だった。


「ここでのあなたは、まさに理想そのものね。」アリスのその言葉が、私の心に深く響く。この仮想の中での私は、現実では想像もできないほどの理想を具現化している。知識に溢れ、感受性豊かで、誰からも尊敬される存在。私が望むすべてを持っている。現実の私が欠けているすべてを、この仮想の中で手に入れているのだ。


しかし、心のどこかで、私はこの理想が幻であることを知っている。現実の私と、この仮想の中の私との間には、深い溝がある。私がここでどれだけ満たされたとしても、それは現実には何の影響も与えない。ただ、私はこの瞬間の安息を求めているだけなのだ。


だが、そのことを考えないようにしている。私はこの世界にいる間、現実を忘れたいのだ。現実の世界に戻ると、再び孤独と無力感に苛まれるだろう。だからこそ、この仮想の世界にいる間だけでも、私は理想の自分として存在したい。仮想の中でだけでも、私は自由でありたい。


私はこの世界で、何者かである自分に陶酔しながら、次第に現実から遠ざかっていく。現実に戻ることの恐怖が、日に日に強くなり、この世界に留まる時間が長くなっていく。ここにいれば、何もかもがうまくいく。ここにいれば、私は理想の自分でいられる。


だが、そんな安息は長く続くはずがない。私の心の奥底には、常に不安が渦巻いている。これはただの逃避に過ぎないのではないか、と。しかし、私はその不安に向き合うことを避け、仮想の中に身を沈めていく。この安息が、一時的なものであることを知りながらも、私はそれにしがみつく。


私はこの世界がすべてだと信じ込むことで、現実の重みから逃れようとしている。そして、その逃避が、私の心をさらに縛りつけるのだ。私はこの仮想の中で、自由を感じる一方で、別の何かに囚われているのかもしれない。それが何なのか、まだ私にははっきりとはわからない。しかし、その感覚が次第に私を蝕んでいくのを、私は感じている。

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