秘密
窓の外を見下ろすと、薄暗い校庭にキャンプファイヤーの炎が揺れている。その周りには多くの生徒が集まっていて、賑やかな笑い声がかすかに聞こえてくる。そんな様子とは反対に、ただ一人で待っている教室は静かだ。
あの話を聞いた後、強い衝動に突き動かされるようにチャットを送っていた。「キャンプファイヤーの時、話があるから1組の教室に来て欲しい」と。
まさか自分にこんな行動力があるとは思わなかった。誰に似たのかと考えると一人だけ思いつくが、それはそれで不本意だけど。
ガラガラと扉を開ける音がして、心臓がドクンと跳ねる。振り向くと入り口に彼女が立っていた。そして俺の方へ近づいてくると、目の前で足を止めた。
「亮太……話って、なに?」
ドクドクと鼓動が早い。俺は心を落ち着かせるように大きく深呼吸をした。
この気持ちを自覚したのはついさっきだけど、本当はもうずっと前から始まっていたんだ。
メイドカフェで一緒に働いた時間。2人きりで話した夜。そして、秘密を打ち明けてくれたあの時。
誰かの彼女になって2度と言えなくなってしまう前に、どうしても伝えたい。
俺は拳を握りしめた。
「好きです。俺と付き合ってください」
彼女は驚いたように目を丸く見開いた。
「本当に言ってる……?」
「こんなこと冗談で言わないだろ」
「それもそう、だね」
「返事を聞かせてくれないか……姫野」
俺の言葉に、姫野は微笑んだ。
「うん、私も亮太のことが好き……!」
ずっと友達だと思っていた。でも姫野が秘密を話してくれたから、俺達は友達以上の深い絆を結ぶことができた。かっこいいところも、可愛いところも、姫野のいいところ全部を守っていきたい。
「大切にするよ」
「私も大切にする……って、やっぱり照れるね」
「まあ、そうだな……」
胸がむず痒くて、でも嫌じゃない。姫野もきっと同じ気持ちな気がする。
「特別な今この瞬間の気持ちを宝物にしたいよね。だから……」
そう言って、自分の口元に人差し指を当てる。
「この時間は2人だけの秘密だよ?」
これで本編完結です。長い間、お付き合いいただきありがとうございます。
今後はその後の話を1つ更新予定です。




