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混ぜるなキケン

 汐姉に「1人スカウト出来た」とチャットすると、「店で待ってる」と秒で返信が来た。ご丁寧に地図まで添えられている。今から会わせろという事らしい。


「急で悪いんだけど、これから店長に会ってくれないか?」

 一ノ瀬は嫌な顔ひとつせずに引き受けてくれた。



 学校の最寄り駅から4駅。周りに大きな駅があるせいか、ここを使う学生は少ない。地図を見ると駅から歩いて10分ほどのところに店があるらしい。

 駅前通りを歩いていると、隣の一ノ瀬が俺の方を向いた。


「私、店長さんと上手くやっていけるでしょうか……? あ、別に会うのが嫌とかじゃなくてですね。その、私が初対面の人と話すのが不得意なので、上手く出来るかちょっと心配で……」

「まあ、大丈夫じゃないか? 向こうも随分自由な人だから、一ノ瀬も気を使う必要はないよ」

「そうですか……なら、お話しするのを楽しみにしてます」

 そう言ってフンっと両手を握った。




 汐姉から送られてきた住所からたどり着いたその建物は、赤レンガの外壁にこげ茶色の重厚な扉。メイドカフェと言うよりも、純喫茶の方がしっくりくる。


「ここがメイドカフェですか?」

 一ノ瀬は不思議そうに首をかしげた。


 その時、目の前のドアが勢い良く開いた。

「よく来たなぁ!」

 

 伸ばしたままの長い髪。すっぴんなのに化粧をしていると見間違えられるはっきりとした顔立ち。服装はいつもと同じ黒のタートルネックにジーンズ姿。黙っていれば、美人の部類に入るんだろう。

 汐姉は俺に目もくれず、一ノ瀬にロックオンしている。


「立ち話も悪いし、まずは中へ入ろう。さあ」

 さっそく一ノ瀬の手を取り、反対の手を腰に回している。さすが、手が早い。

「え、あ……」

 一ノ瀬はなされるがまま、汐姉にエスコートされて建物へ引き込まれた。




 店内もまた純喫茶のような落ち着いた雰囲気で、木製のテーブルセットが並んでいる。内装も出来ていないというのはこういうことらしい。


 汐姉は一ノ瀬を手近な椅子に座らせた。そして自分も目の前の席に座り、うっとりとした顔で頬杖をつく。側に立っている俺のことはガン無視だ。


「初めましてお嬢さん。お名前は?」

「あっ……え、あの、ぴぴのせぴぺんでぴゅ……!」

 一ノ瀬が真っ赤な顔で言う。これは噛んでるとかそういう次元じゃなくないか……?

「そうか、ぴぴのせぴぺんというんだね。素敵な名前じゃないか」

「そろそろ俺、つっこんでもいいか?」


 俺の言葉に二人はこっちを向いた。汐姉は眉間に皺を寄せる。


「何だよ、亮太。私達の大切な出会いに水を差すな」

「その出会いが円滑に進むように助け舟を出そうとしてるんじゃないか」

 一ノ瀬をスカウトしたからには、最初くらい間に入ってやるべきだ。


 俺は汐姉に顔を向ける。

「汐姉、彼女は一ノ瀬深恋。今は緊張してるみたいだけど、仕事へのやる気もあるし、カフェの戦力になってくれると思うよ」

「はぴ! ふちゅちゅかものでしゅが、せいいっぱい頑張りましゅ!」

「一ノ瀬、この人は黒木汐。美少女好きのちょっとヤバい人ではあるけど、料理の腕は一流だし、一応大人だから困ったことがあれば力になってくれると思うよ」

「深恋は視界に存在してくれているだけで、私の力になっているよ」


 ごめん、やっぱ無理かも。

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