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ライバル(姫野side)

 放課後、日直の仕事を終えて教室に戻ると、そこには1人だけがまだ残っていた。


「深恋」

 後ろから声をかけると、深恋は振り向いた。

「晶さん」

「今日も学級委員の仕事?」

「はい。もう少しで終わるんですけど……」

「私も手伝うよ」

「ありがとうございます」


 書類の整理をしながら、私は口を開いた。

「前にも同じようなことあったよね」

「そうですね。前も手伝ってもらいました」

「その時話したこと、覚えてる?」

「はい、もちろんです」

「あの後、亮太に本当のこと話したんだ」

「え……」

 深恋は手を止めて私の方に顔を向けた。

「亮太は私のことを否定しなかった。それで約束したの。もう隠し事はしないって。私は深恋達にも隠し事はしたくない。私は……亮太のことが好き」


 好きって気持ちをはっきり自覚したから分かる。誰かを好きって言うのはすごく勇気がいることだって。だから前に深恋が「亮太のことが好き」と言ったあの言葉は、それほど大きな意味のあるものだったんだ。 


 深恋は私の背中を押すためにあの言葉をくれた。だから深恋のおかげで自覚できたこの気持ちはちゃんと伝えたいと思った。


「晶さんの決意、素敵だと思います。最後に選ぶのは亮太君ですから、晶さんは私に遠慮なんてしないでくださいね。私も遠慮しませんから」

 そう言っていたずらっぽく笑う。

「そうだね。私も自分の気持ちに正直でいるつもりだよ」


 亮太のことは大切だけど、それと同じようにいま目の前にいる友達のことも大切に思っている。その気持ちは深恋も同じだと分かった。


「晶さんとはライバルなんですけど、こんなに素敵な晶さんを選ばなかったら亮太君は見る目ないなって思っちゃいます。えへへ、何だかおかしいですかね?」

「いいんじゃない? もし亮太が私達2人のことを選ばなかったら、一緒に綺麗なドレスを着て、選ばなかったことを後悔させてやろうよ」

「いいですね」


 そう言って顔を見合わせて笑う。周りから見たら私たちは歪な関係なのかもしれない。それでも、私たちの大切な人へ向かう心は真っ直ぐで、とてもピュアなんだ。

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