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突然の訪問者

 深恋の儀式を見てしまった俺はとにかく謝り倒して許してもらった。扉を開けるときは大きくノックをする、このことを教訓として胸に刻み込んだ。


 放課後、深恋が友達と話しているのを横目に見て、俺は先に教室を出た。俺と深恋は店の最寄り駅で待ち合わせることになっている。変に注目を集めないためには、学校を出る時間もずらした方がいいだろう。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 そんな声が廊下に響く。なんかトラブルでもあったのか。

「ちょっと! あんたよ、あんた!」

 そう言って小柄な女子が目の前に割り込んできた。


「何か?」

「なんであんたが深恋の趣味なんて知ってるのよ! 私だって聞いたことなかったのに!」

 敵意むき出しで俺を睨みつける目。深恋といつも一緒にいる、確か理穂の方だ。


「渚は納得してたけど、私は全然納得してないんだから! どうせあんたが深恋にしつこく言い寄って、無理やり仲間にしてもらったんでしょ!」

 ひどい言われ方だな……


「趣味一つくらいで調子に乗らないでよね! 私の方がずっと深恋と仲良しなんだから。誕生日も、使ってるコスメも、スリーサイズだってもちろん知っているし。ああそうだ、深恋が中2までサンタを信じてたってこと、あんたは知らないでしょ?」

 そう言って俺を嘲笑う。それは俺に言ったらダメなのでは……?


「とにかく、あんまり調子に乗らないでよね。それじゃあ」

 理穂はふんっと背を向けて歩いて行った。




 待ち合わせの駅に着くと、ほどなく深恋がやってきた。見ないうちに髪を下ろしている。


 店に向かいながら、俺は口を開いた。

「いつも一緒にいる2人とは長い付き合いなのか?」

「渚と理穂のことですか? 高校一年生の時にクラスが一緒になってそれからの付き合いですね。渚はいつも元気いっぱいだし、理穂は頼れるしっかり者で、2人といるとすっごく楽しいんですよ」


 そう言って深恋は楽しそうに笑った。さっきの変な女がしっかり者……? 深恋の前では本性を隠しているらしい。


「そうか。特に理穂の方にはあんまり俺と一緒にいるところを見せないほうがいいと思うよ」

 今日の放課後まで一緒にいたなんて知られたら刺されそうだし。

「そうですか? 分かりました」

 深恋は不思議そうな顔をしていたが頷いてくれた。




 店に入ると、汐姉はパソコンで何やら作業をしていた。俺達に気づいて顔を上げる。

「お、来たな!」

「きょ、きょんにちは、店長さん……!」

 深恋は人見知りを発動しているらしい。まあ、そうなると思って俺もついてきたんだけど。


 深恋の隣に座って、2人がバイト関係の話をしているところに時々助け船を出しつつ様子を見守っていた。20分ほど経って、深恋は汐姉に慣れてきたみたいだ。


「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。学校に戻って次のスカウトを考えないと」

 俺に残された時間は少ない。あと5人、どうにかしてスカウトを成功させないと自由な暮らしが終わってしまう。

 俺は席を立った。

「もう行くのか? せっかくこれから深恋にメイド服を着てもらおうと思っていたのに」


 汐姉の言葉に動きが止まる。


「深恋、どんなメイドがいいか希望はあるか? 膝上丈のメイド服ももちろんいいけど、クラシカルなロング丈のもいいよな。それにパステルカラーのメイド服とか、ネオンカラーを取り入れたサイバーパンクなのも似合うと思うし」


 深恋の、メイド服……思わずごくりと息を飲んだ。


 メイド服なんて俺にとってはアニメやラノベの世界のもので、現実で縁があるなんて少しも考えたことはなかった。でもそれを今から目の前の美少女が着る、だと……?


 その時、ガチャッと入り口の扉が開いた。

 顔を向けるとそこには一人の美少女が立っていた。


「初めまして。亮太の紹介で来ました」


 制服のスカートから伸びるスラッとした足。腰まである艶やかな黒髪。そして左目の下のホクロ。


「キラ!?」


 赤字回避まであと4万円。

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