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第24話 そして次の物語が始まる話

書き溜めはすぐにできたのですが、この後の展開を二種類思いついてしまっていたので

どっちの案に沿った内容にするのかが決まらず、二本分の書き溜めを執筆してたというお話。

 かくして森の異変は解決された。


 天虹(てんこう)騎士団の公式記録によれば、森に瘴気を散布して魔物を狂暴化させ、上位種の発生要因となっていた魔族シャックスは天虹騎士団長姫騎士アルーシャ、そして協力者であった一人の冒険者によって討伐されたと記録されている。

 アルーシャに協力した冒険者の名は虹等級冒険者ロイス・レーベン。


 後世に様々な考察が行われることになる人物の名が初めて歴史に記された事件である。


 だが、この事件の記録には矛盾が多い。

 一部記録によると、この戦いで天虹騎士団は全滅したとされる記録が存在する。

 一方での記録では、騎士たちは誰一人欠けることなく王都へ帰還とも言われている。


 後者の記録において、ロイス・レーベンが魔法を使ったと記録されているが、そのような魔法は現実には存在しないため、記録ではなく創作とする向きが強いが、しかし天虹騎士団がその後も存在したことは事実であった。




***




「ワシはエルミリオ王国が国王エドリック・アルデント・エルミリオンである。ロイス・レーベン、(おもて)を上げい」


「は、はい………っ」



 エルミリオ王国王都アルデン。その中心にそびえる白亜の城。

 大陸でもっとも美しいと言われる国王の居城だ。


 この城で恐らくもっとも広いであろう玉座の間。

 国王が来客と謁見を行うこの広間で、今俺は王の前で跪いていた。



「こほん……まずは貴様の功績、褒めて遣わす。真竜討伐、そして魔族討伐……事実であれば偉業という他ないな」


「は、はひ…………」



 何故だろうか。王様の圧力が強い気がする。

 これが王の威厳というものだろうか。こちらを射抜くような視線はまるで殺気すら感じるようだ。



「しかしだなあ……あまりにも功績が大きすぎてどうにも真実味が……」


「王よ。その辺りの検分は既に完了しており、どれだけ荒唐無稽でも事実であると証明されたはずですが?」


「いや、しかし、そうは言うがなランドルフ将軍……?」


「なんと!王は国家の危機を二度も救った功労者に報いぬと申しますか?」



 何故か知らないが王様と護衛らしき騎士……どうやら将軍のようだ……が口論を始めた。

 俺としては王様の前にただ平伏して冷や汗を流すしかない。

 仕方ないだろう。俺は田舎の農家出身だぞ。

 大げさな物言いで王を言いくるめてる将軍さん凄いな。



「むう……まあ、その。なんだ。貴様の功績は認めなくもない」


「あ、ありがとうございます……?」


「よって貴様には報奨を取らすものである。さて、貴様は王たるワシに何を望む?」


「え、いやあ……僕としては頼まれて手伝っただけなので……」


「なんだ貴様、ワシの報酬がいらんというのか。処すぞ」


「えぇぇぇぇ……」



 この人、なんか知らないけど俺に対する当たりがキツイ気がするんだけど?



「すまないなロイス殿。許してやってくれはしないでいいぞ。王は極度の親馬鹿を拗らせているので娘に近づく男には大体こうなるのだ」


「うわあ、ありがとう将軍様。僕はどうしたら?」


「はっはっは、大丈夫。そろそろ救いの女神が来てくれる頃さ」



 兜で顔の輪郭はよくわからないが、見えている顔の表面だけ見てもかなりの美男子であることがわかる。

 騎士団長の上司に当たる王国騎士の最上位。いわば最高の王国騎士たるランドルフ将軍。

 どんな人かと思ったがかなり気さくな人のようだ。


 そして、将軍の宣告どおり玉座の間の扉が乱暴に開かれた。



「父上ッ!? なぜ私がロイスの謁見に立ち合いを許されぬのですか!?」


「アルーシャっ!? お前は自室で待機していろと……」



 現れたのは、いつもの騎士服ではなく王女らしい豪奢なドレスに身を包んだアルーシャだ。

 いつもの彼女は騎士服の印象もあって美人でも特に凛々しさが強いが、今の彼女は王女らしい可憐さを身にまとっている。

 アイーダもいつものように後ろに控えている。



「また父上が私に近づく男を排除しようとしているのはわかっています!」


「そんなことはあるが!」



 そんなことはあるのか……

 なるほど。王から感じた殺気のような威圧感は娘に近づく男への殺気だったか。


 ……それは、仕方ない気がしてきた。



「仕方なくないぞロイス殿。今回は功績を労う場なのだから親馬鹿に付き合う必要はない」


「それもそうだ」



 娘を大事に思う親の気持ちはわかるが、それを今ぶつけられても困る。



「大体、父上がそんなだから私はこの年で婚約者すらいないのですよ!?王家がそれでいいのですか!?」


「良くはないが!?」


「だったら……!」


「それはそれとして愛娘が馬の骨にもらわれていくのは嫌なのだ!」


「この親馬鹿国王!」


「褒め言葉だなっ!」


「そこに直れ愚王!ここで介錯してくれるっ!」



 もはや国王と姫でもなんでもなく、ただの親娘喧嘩となってしまった。

 というかアルーシャ剣抜いてるけどいいのだろうか。



「そこまでになさってください姫。王もいい加減にしないとそろそろ娘に本気で嫌われますよ」


「それは嫌だ。娘は嫁にやりたくないが嫌われたくもない」


「この愚父(ダメちち)…………」



 いつの間にか現れた従者のアイーダが一喝して親娘喧嘩を一瞬で黙らせてしまった。

 さすが万能メイド。王も一発で黙らせるとは。



「そうは言っても姫も年頃。いい加減に婚約者を宛がうのも必要ではありましょう」


「それはそうだが、ワシが認めた男じゃないとダメだ」


「いい加減にしてください父上。というか今は私の婚約話ではないでしょう」



 そう言えばそうだ。

 なぜこの場でアルーシャの婚約話になってしまったのか。



「うむ、そうだな……だが、関わった事件に前例がなさ過ぎてな……」


「いや、本当にそこまで悩んでまで無理に褒賞出さなくてもいいですから…………」


「そういうなロイス殿。それはそれで王家のメンツに関わることだ。功には賞を持って報いるのも王の仕事さ」



 それはわかるのだけど、それで何を与えるか困らせるのも居心地が悪い。


 王様がようやく真面目な顔になって考えだした。

 しかし、中々ちょうど良い案が出ずに困っているようだ。

 

 そんな中、アイーダがポロっと漏らした発言が爆弾そのものだった。



「もういっそ姫を与えてはいかがでしょう?救国の英雄とあらば資格は十分では?」



 まさに爆弾。あまりの衝撃に言葉の意味が頭に入ってくるまで時間がかかる。

 アルーシャを、俺の、報酬、に?



「あ、ああああああアイーダっ!? いったいなにをっ?」


「ハァーーーーっ!? 娘はやらんと言ったはずだがあっ!?」



 ほら。やっぱり王様キレてるよ。

 そりゃそうだ。さっきまでそれでキレちらかしてたのに。

 また元に戻っちゃったよ。

 アルーシャも動転してるよ。



「いいえ。王は馬の骨に与えるのは嫌といいました。ならば二度も国を救った英雄ならば……」


「ぐっ……だが、アルーシャの夫は王位継承権を持つことになる……領地経営の経験もない者には……」


「おお、それなら良い案がありますぞ王よ」



 アイーダにやり込められる王にランドルフ将軍が助け船を出した。

 本当にそれが助け船なのかは楽しそうな表情からはうかがい知れないものだが。



「実は国境近くの辺境に新たに開拓中の土地がありまして。まだそこに赴任する予定の領主が未定なのですよ」


「ふむ……なるほど。つまりその男にそこの領主として実績を積め、と」


「ええ。この領地と領主の地位をロイス殿への報酬とすればよろしいかと」


「なるほど…………辺境に飛ばせばアルーシャから引き離せるな……よし、いいだ……」


「無論ロイス殿は領地経営など未経験ですからな。ここでアルーシャ様を補佐としてお付けすることで将来の話に繋がります」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええっ!?」


「そんな不満そうなお声を出しますな王よ。その間にロイス殿に資格なしと見れば遠慮なく引導を与えなさいませ」


「な、なるほど!……………おい、ワシなんか遣り込められてないか?」


「はっはっは」





 どういうこと?


 ここまでの話を衝撃ですっかり魂のとんだ頭で理解しようと試みる。

 が、無理!

 話の展開が早すぎてどうにもならない。



「つまりですね」



 いつの間にか俺の横に立っていたアイーダが説明を始めた。

 つまり俺はアルーシャの婚約者候補となり開拓中の領地を与えられるようだ。

 その運営結果によってアルーシャの正式な婚約者となるらしい。



「なるほど。それが俺への報酬ってむりむりむりむりっ!?それは無理だろっ!?」


「大丈夫でしょう。姫が補佐につきますので。無論、私もお手伝いしますとも」


「いや、そうじゃなくて婚約とかアルーシャの意思はっ…………」



 そこまで言って森の一幕を思い出す。

 あの時、俺とアルーシャはお互いの想いを伝えあった。

 レナの横槍で有耶無耶にはなったが、俺たちはお互いを想い合う存在だとわかったはずだ。



「ロイス。どうしますか?」



 王と将軍の言い合いを遠巻きに眺めながらアルーシャも俺の横に立つ。

 その表情はとても真剣だ。



「私はこの国の姫として、相応しい者と結ばれる義務がある……しかし、可能であるならその相手は自分で選びたい」



 王はあんなだが、いずれは彼女は相応しい相手と結ばれるのだろう。

 もし、そこに立つのが俺以外の男だと想像すると……とても嫌な気分になるのも事実だ。



「貴方はどうですかロイス?貴方は……私を選んでくれますか?」


「…………俺にできるかわからないけど。精一杯やってみるよ」


「それは、つまり?」


「領主と、君の婚約者……俺なんかで良ければ」


「ロイスっっっ♪」


「おっとぉ」



 アルーシャが俺に抱き着いた。

 鎧を脱いでドレスを着た彼女はとても軽い。だが、この抱擁の重みが理解できないわけじゃない。

 これはきっと俺の運命。彼女を支えるために勇者じゃない俺はこの力を使おう。

 そう覚悟を決めるに足る重さを抱きとめた。



 冒険者を目指し、田舎を出た俺は、元勇者という前世とチートスキルに目覚めた。

 今の俺は勇者ではない。だが世界には既に魔族が発生し、魔王誕生の予兆は起きている。

 だから、この世界で出会った人々を守る為に。勇者ではない俺は勇者の力を振るう。


 最初に目指した夢の一人前の冒険者という夢とは形こそ違うが。

 やっと俺はやりたいことを見つけた気がする。



 これはかつて二千回転生して何度も勇者となり世界を救った男の。

 二千一回目の転生物語。


 その、ほんの始まりの冒険譚。


 そして次の冒険は辺境の開拓地へ移っていく。


 愛する者と共に。




「好きだよ。アルーシャ」


「私もです。ロイス」




これにて第一章完。

第二章は領地経営ともう一つの目標に沿って話を展開する予定です。

ヒントはロイスは元勇者なので……

舞台は辺境へと移動しますが一章で名前の出たキャラクターは大体移住してくる予定なので安心。

第二章もお楽しみにしてくださいますと幸い。


感想・いいね・評価もお待ちしてます!よろしくお願いします!



どうでもいいことですが王様は娘さえ関わらなければ賢王と呼ばれるくらいには優秀な王です。

ほんとに。

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