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ほしのしずく

作者: 須山孝一

1オープニング 誰かが呼ぶ声がする。暗闇から響く彼女の微笑む声。おいでとつられてさそわれる。

 それは姿のない形をした怪奇だった。

美しくも背筋が凍りつくようなさざ波の声に撫でられ男はふらりと誘導灯に誘われる蛾のようにその目を見ていた。

きりきりと痛む頭があれにふれてはならないと警告を出し、意識は溶けていく。

体だけあやつりにんぎょうになったみたい。こっちへおいでと手を招く。

男は今、奇妙な夜の幕を開ける。

十年後―――

2藤堂都

まっすぐな意思を結んだ目線。こしまで伸びた黒い髪。歩けばそこが世界の中心になるようなきびきびとした動きそれが我ら団長藤堂都だ。

 [類は類を呼ぶ。ダニエル。不可視のファンタジーがほしかったら私がなりたいファンタジーになるのが一番だ。というわけで私は漫画の主役さながらの道場破りを決行する。私が部員に挑戦状をたたきつけている間にあなたは部活申請の決まりを調べておいて。」

声高らかに宣言して走り去る姿はさなが風神がごとく、俺ののど元を握りしめ走り去った。ってまて、俺のは何も同意したわけじゃないぞ。

 そのあとみやこは各種部活動を道場破るがごとく走り回り例外なく、ひとつ残らず看板を持ち去っていった。

 あっけにとられていたおれの顔を見るなりブイサインを送る。

「こんなところね。夜も近いし部室に行きましょう。」

「ってまて。今の勝負は必要か。体育系の部活に全勝してすべてのインターハイに全国優勝でもするつもりか。」

「あたしが興味あるのはあたしの城のちめいどよ。」

「おい、お前が何をする気か知らないか入っておく。おれはおまえのなんだかよくなかみがみえないクラブ活動をするつもりはないぞ。」

「なさけない。それくらいよいしょとせおいなさいよ。男のこでしょ。」

やさしくなでて、さきをなだめる。おんなのこだえっへん。短い髪が夕日で赤毛に染められる。

「いい。まず、部活ができれば次の行動は必ず見えてくる。四の五の言わず動きなさい。」

空を見上げて図書室に立ち寄ったことを自分の行動を呪う。

きっと明日には藤堂都の本部がアルだろう。

楓通称「ダニエル」


リボンで結んだツインテールがかぜにゆれる。みやこが太陽ならこっちは太陽に照らされて輝く月。都に照らされて輝く彼女がかえでだ。ときには激しく時には優しく都に少なからずの後片付けを完ぺきにこなす。まあ、はたから見ればふ理回されているさながら「やあね、もう、面倒見てやんないんだから」とか言いつつもちゃっかり付き合っている。


「おっす都。いつも素敵なファンタジー探しか。精が出るな。 探したってないものはないのだ。そんなご足労な散策やめて漫画かしてやっからよ。ジョジョ立ちおぼえたんだ。

ジョジョって呼べよ。」

「おまえしゅしゅだろ。略したらしゅしゅ。ジョジョとは違うな。」

「いいじゃんか。おれのアイが伝わらんか。」

「お前が荒木飛呂彦をあいしているのはわかる。」

「だろ、ならお前もジョジョ読めよ。」

「だが断る。」

「この都の愛は自分の人生が最高に楽しいように作り上げる。そう、さながら私が映画の主役のように。蝶よ。バラよ。と愛でられて私は世界一奇妙な人生を送るのよ。」

「ほう。ならお前はジョジョというわけだ。都、実は俺よりジョジョに近いな。」

「そのうちジョジョのほうが私に近いといわれるようになって見せるわ。お前、頼んでいたことはやっているな。」

「虫一つ殺さない村で冒険の話って言ったらお前んちの土地神くらいだよ。おうちに聞いてみな」

「あると思って動くからあるのよ。それでも部員その1なの?お前のスタンドは私を面白がらせること一つできないのか?」

「なにをー。私のジョジョ愛を馬鹿にするのか―とはならない。ないものはない。」

「ふんだ。みてなさいよ。わたしはまってるだけじゃない面白いものは作り上げていくのよ。」

「ジョジョ読めよ。貸してやるから。おまえんちに読まないままたまっているんだろ。」

「私のほうが面白いって認めさせてやる。」

「誰にだよ。」

「ほかの誰でもない。私によ。」




「さあ、ぼーっとしている暇はないのよ。散策に行きましょう。」

「一体何を探すっていうんだ。」

「この街に不穏する輩がいないか見に行くのよ。」

辺鄙な田舎町という表現がしっくりくるこの街にそんな不思議なんてあるわけないだろう。いるのはコメを食い荒らすばったさ。」

「いい。さがすといったらさがす。上を見ろといったら上を見る。空を飛べといったらとんでみる。やってみる精神が足りない。」

「んなもん、見つかりもしないとわかっているものを探すんだ。気持ちなんて上がりはしないわよ。」

「ひとのせいにするのはあなたのくせよ。いい。よーいどんでかけだすんだ。」

「わーったよ。やればいんだろ。」

「そこ。気持ちを持ち上げる。」

なにがなんだか、おれはこれからかなたと数時間。村内を歩き回った後。

「見つかったのは、過ぎていく何もしない時間は長いです。たいちょー」

「うむ。よろしい」

いいのかよ。と心の声で突っ込みつつ都にそっと聞いてみる。

「怪しいといえば自分ちはどうなんだ。うっかり地下から宝が出たりしないのかよ。案外可能性あるかもしれねえぜー。」


有無。


4都の家 ご神体の模擬刀

「おい、都起きろよ。」

「ふわああー。まだ夜中じゃないか。いったいどこへ連れ出そうっていうのかい。」

「例のあれ、言い出したのはお前じゃないか。」

「たしかにあれはわたしがいいだした。だが、時期じゃない。眠いねる。」

「言い出したら即行動がおまえだろ。おきろよ。」

「残りの二人はどうした。」

「安心しろ外にいるさ。」

「全く私よりやる気満々じゃない。」

「たわけ。おまえが古い文化を変えてあらたなほしみざきをつくるっていいだしたのおまえじゃないか。」

「もう、わかった、ちょっと待ってろ。着替えるからな。」

「外に出ておく。にどねするんじゃねいぞ。」


「聞け―。皆共、われわれは今日歴史を変える使者となる。ふるきをよきとしてきたろうじんとちがいわれわれは、しょうじきこのまちに飽きている。きっさてんにはとなりまちまで行き、コンビニは隣町まで行き、漫画一つないというのがこの町だ。その元凶となる

この刀。寓話に過ぎない人魚伝説が宗教となっている大本これをわれらの手で処分するのだー。」

「おおー。みやこみーやこみーやこ」

「これはわれわれの進撃だ。きょうこのときをまちのぞんんでいた私の手で新たな時代を切り開くのだ。」

「しつもん。」

「なんだ。言ってみろ。」

「漫画はがくえんにきますか。」

「その通りだ。我々は人魚伝説を受け継がせようと空想の話を一切遠ざけられてきた。人魚伝説なるものが消滅すれば好きなだけ家に転がり続けられるのだ。」

「恐縮であります。」

こうして若者のノリと娯楽に触れたい一心で、この村の歴史のシンボルは海に沈んだ。

星見崎には連続失踪者が相次いでいた。なんでも土地神様のたたりとかはやり文句まで出てくる始末。ただ、横で欠伸をする人が一人。ここは危険とは遠い場所。

「覚えててくれたかな。巷の行方不明者ね。あたしが犯人なんだ。」

「はあ。お前が退屈を嫌っているのはわかるが、お前が常識人でもある問うことも俺はわかっている。お前には殺人なんて無理だよ。せいぜい遠くからかつらを泥棒するくらいのかわいいやつだよお前は」

「興味を持て。中には腹の中に顔がうずめられていたなんてものもあるんだから。」

「あっそう、仮にそうだとしてなんでそんなことをしたんだ。お前は異常な性癖な持ち主ということか。」

「まさか。私には悪を担い星見崎を盛り立てる義務がある。あくをうみだし星見崎をぜんとなりあがる。というわけ。」

不思議な話ならすでにある。藤堂都のお家だ。

「犠牲者は9人にも上るということだが、被害者からすればお前は叫弾される対象でしかない。」

「9人とも作り話だもの。架空の人物を用意したんだよ。」

「つまりお前は町の人がお祭りを出す感覚で誘拐犯もどきなんてものをやろうっていうのか、善で生み尽くせばはみ出た善が切り捨てられる。せいぜいそれを防ぐんだな。」

異常が事の顛末。

そして

「誰を行方不明にしましょうか。」

なんて危ない実行犯が隣につぶやいていた。

「みやこどうしてお前はたたりなんてやっているんだ。」

「もちろん面白いからに決まっているじゃない」

「あの奥のふすまの部屋に飾ってあるのはなに。」

「星岬の人魚伝説か。たしか人魚の教えなんてのが昔話に登場するんだよな。そんでその教えに背いたらたたられるみたいなトンデモ話だ。

あんたはいると思う。尋ねてみた。

「いやいや、いるもいないもおかるとだ。子供の脅かすためだけのものだろう。」

「じゃじゃーん。刀があるぞ。これなんだ。」

勝手にしろよ。もう。


 俺は美鈴。探偵さ。みずから探偵と名乗る輩がいるとはおもえないが私だけだろう。

 「とある町に移り住みたい。家賃も水道も電気も生活費は持ってくれるという。胡散臭いではないか町を調べてくれ」なんてことで僻地な田舎町に来ている。正直見渡す限り田畑ばかりで時代錯誤もいいところだ。ここだけ時間が昭和のまま残されているといったところ。人がいないわけではないが人を見かけていない。

「過疎地だな。こんびにがバス停の向かいにあったのを見たっきりだ。ここに住もうっていうのか」聞いた限りではかなりのお金持ちらしい。行けども行けども山道ばかり。

「どうしよう。依頼人には山ばかりなので都会が便利ですよといった方がいいか迷うな。それがいいか。今日は柄にもなく良く遠出した。私は毎日ベッドで寝て暮らしている方があっているのだ。」

 そうさ。俺は働き者なんて絶対言われない人だ。ところがそうはいかなかった。

「殺人事件?」

「違うわ。失踪事件よ。祟り神の逆鱗に触れた輩がいて、村のものが消えていくってね。」

村の人間に聞き込みを入れたところよからぬ情報が入ってきた。

オカルトには挑むのが私の職業病だ。

「その話詳しく聞かせて」



翌日、笑えない事件が起こった。

バスの事故で行方不明の人が出たのだ。

後ろにはハイになった都の姿。

「わあ、神様っているのかな。」

「どうせ、お前の作り話だろ。」

「いいや、これは本物の失踪事件。私も知らないわ。」

「お前な、人の不幸を喜ぶと俺が罰を当てるぞ。」

「いいじゃない。ちょっとくらい自分のことで喜んだところで罰は当たらないわ。」

「はあ?お前は関係ないんだろ。なんでおまえのことなんだよ」

「私に解決しなさいと言っているようなもんよ。」

「言っとくが、俺はかかわらないからな」

「いいわよ。私一人だってやるんだからおーい、かえでちゃーん。」

「まて、おれもいく。」

「ん?なんでべつにいいわよ。あんたやりくないんでしょ」

「本物事件となれば警察の仕事だ。お前は飽きるまで遊びのように周りを巻き込むが大変な目にあっているのはわかっているか。今回はたのしかったよ。おしまいで終わらさないって約束するなら巻き込まれる役を俺一人にしろ。」

「あはっ。しゅしゅったらかっこいいんだ。うん。いいわ。ついてきなさい。」


報告書

この街の住人の生活には祟りという対価を払うことを前提としている。

この街には人魚という祟り神が祭られている。人々はそれを流布し崇めることで団結を保っている。とりわけ目立つは失踪事件だ。だがそれは祟りを運営する側が作った一種のお祭りだと思えばいい。架空の人物を作り出し攫い、罰することで祟りがあたかも存在するかのように図っている。その対象はよそから来た人だったり、子供であったりする。おかげでこの町の将来は閉塞した状態で人口が減っていく一方だ。村としては祟りを祭る一方人口減対策として生活費のほう助などで人を誘致している。

 ただの村での作り話だった人魚伝説だが、今年は勝手が違った。本当に被害が出てしまった。村の経営を担っている御三家からしたら予想外の出来事だ。なにしろ、自分たちの祟りを行おうとする人間が現れるなんて思わなんだろう。そして、それはおまつりではなくて村人がいなくなるのだ。ただのホラがほんとうになるなんて。といったところ。村は祟りを任せるか村人の命とをはかりにかけて迷走している模様。 美鈴」



「この村にろうじんがいないのはなぜだ、」

「この村では年を取るとたたりの使いになるといわれているが実際には寺院に入る。そこでしぬまでこの村の運営を任せ手られている。」

「人魚をはやらさせたのもその一つか。」

「そーよ。そのわけは本人たちにききなさい。」

蝶番の重い扉をくぐる。多分一生来ることのない場所についた。

「ようこそお越しくださいました。わたし、この寺院の代表であります。このたたりの主催者であります。」

「堂々と告白するとは、いい度胸じゃないの。」

「あなたには私の協力者になってもらいます。」

「世迷いごとをおれにひとさらいになれと?」

「まず、お会いしてもらう方がおりますのでおまちください」

「お前は?」

「久しぶり姉さん。」

弟はまるで年老いた老人のように語り始めた。

「人魚はほんとうにいた」

「村は人魚に生贄をささげることで成り立ってきた。人魚は若い血肉を好んだ。それをささげると引き換えに村は作物や漁業の繁栄、産業の発展といったむらおこしを担った。」

「人魚にはエサが必要でな。それをどこかの侵入者が壊してしまった。 餌には子供を一人やらねばならぬ 人魚がいなくなればこの町は干上がる。」

「この村に人魚をとどめておくためのものそれが生贄と剣だ。それをどこかの誰かが捨ててしまって村の存続は無づかしくなってしまった。そこ今回は本物の祟りを行わなければいけないとなった。実際に人をさらい。人魚のご機嫌取りってわけさ、」

「犠牲になった若い者には申し訳ないと思っている。ただの僻地である我々には人魚が必要なんだ。お前たちが捨てたのは契約の剣と言ってな。村と人魚との契約書のようなものなんだ。」

「一人や二人をささげて村に繁栄が続くのか。」

「わからん。正直ごぶごぶじゃ。そこでおまえらに仕事だ。」

「人魚を収めるには剣と玉が必要でな。玉のを人間が使うと時を巻き戻せるという。」

「これで俺たちの刀を捨てた自分たちを止めて来いというのか。」

「いや、事の大本都のおじいちゃんにあえ。事の大本はお前のおじいちゃんがにんぎょをみそめたことからはじまる。縁結びさえすれば。そう。人魚をめとれば生贄も不要だろうよ。」

「これよりお前たちはこの世界の修正に移る。無事を祈っている」

「俺はおまえたちの傘下に下るわけないじゃない。」

「やらねばこの村が滅びる。お前たちのしたことの責任は取ってもらう。」

「そんなこといったってそれ私の仕事じゃない。」

「お前がやらないというのならお前の作り出したたたりは本物となりやがて村を飲み込むだろう。」

「そんな安い脅迫には乗らないわよ。第一私この村嫌いだし、いなくなるならそれはそれでせいせいするね。」

「姉さん、あなたは特別な人なんです。あなたにしか頼めないのです。救えるのもあなただけなら全滅させるのもあなただけなんです。すくなくともあなたを慕ってくれている町の人たちに御屋形様と呼ばれる使命だけでも果たすべきだ。」

「ふん・・。おやかたさま。ね」

「無事を祈ってます。あなたが向かうのは過去でも未来でもなく可能性の世界。貴女が剣を抜く前から始まるこの村のもしもの世界だ。」

そこにいはみやこだった。だがしかし少し様子が変だ。

「びっくりした。そう私。久しぶりね。藤野君。最初に見たのは去年の暮だったかしら。」

「なんの冗談だ。人体が欲しくてね。さらっちゃった。」

俺はそれが事実なのだとこの都の形をした別のなにかから伝わった。

「お前は、だれだ。俺の知っている都はうっかり殺人者になることはあっても人を傷つける子ではない。」

「わたし、 私はみやこよ。あなたのよく知っている、ね。」

「みやこはひとをころせない」

「私はね。藤堂の使命をかなえるあの子に埋め込まれた起動式なの 藤堂の祈願。人魚の祟りの現実化は私の先祖。おおじいちゃんの願いをかなえるためよ。」

「それで俺を殺すのか」

「場合によっては(世界は救われた)というけっかにもなりうるわ。」

「なら、見逃してくれよ。俺はただのおまえの藤堂都の友人だ。」

「そんなこと意味ない。だって皆入れ替わるんですもの。この村の人間全部。私の意のままに入れ替わる。たとえば、本当の願いをかなえてあげるといわれた子供が素直に願い事を言ったのにかなえてもらえなかったら、自分だけサンタクロースが来なかったら?

私は願いが叶うのを待つだけしかできないのかしら。そんな時どうしたらいい。なんでもいいから状況を動かしてみようと思わない?」

「何を言っているかさっぱりわからん。俺には理解しがたいがお前んちは村で一番の権力者だ。家にたのんでみたらどうだ。」

「あとはボタンを押すだけなの。最後の一人であるあなたを人柱にするかどうかで、迷っている。ううん。できればこのまま帰らしたいけど。」

「どわっと」

「ごめんね。藤堂のおうちの悲願のために良い夢を共に見てくれ。」

世界が反転した。

目の前の景色が変わっていく

なんていった。

「俺を殺す?なぜ?」

そうだ聞かなければならないことがあるとしたらそれは

「お前が達しようとしている藤堂の悲願とやらは何だ。」

「藤堂のおうちは代々受け継がれている役目があるの。人魚の存在を村に流布すること。それは当たり前のようにとなりにいるんだけど。めにはみえないの。私たち藤堂のおうちだけが見える存在。ある方をご奉公するのが藤堂のやくめ。」

「たたりを作り上げたってわけか。それでなぜ俺なんだ。」

「あなたは私たちよりの存在。村のご神体と意識がリンクしているの。

たぶん、ご神体に触れたあの日から。

 あなたがたたりを観測してくれればあのこ、みやこもたたりを信じてくれるはず。そうして完成したたたりが私達の起動式を動かして村全体を実在する現像と私たちの空想へと置き換えることができたの。

でもね。やっぱりいなくなったほうが、あの子にとって大事なものが欠けるショックがおおきいかもね。私は反対したけどさ。藤堂の家柄が第一なの。」

夕暮れ時。不気味な悪寒は体中にムカデが這いずり回るかの触覚だ。俺の足は一つも動いてくれない。

都の形をした別の誰かは俺のめを睨みつけた。

俺はこのまま瞬き一つの間に、眠りに落ちて―――。

6星見崎村の真相

美しい人を見た。人ごみの中彼女を見失い祭りの会場を抜けた先に海が広がっていた。

それは波の音からなる魔物だった。一目で目が離せなくなり、怪しげな魔物は幽霊かのような黒い髪。夜の海に溶けて揺らいでいた。女は確かに俺の頭の中に住み着き、姿を見たものは彼女が欲しいと憑りつかれていた。

 これが始まり。うちの大祖父が願ったこと。

たった一度きりのいわゆるひとめぼれってやつだ。

大祖父は幻想の中の魔物と呼び、一族総出で探しだすように呼び掛けた。

そして見つけ出し彼女に誘いをかけたのだ。

初対面にもかかわらず。赤面しながらも「僕とずっと一緒にいてくれないか」と。

「私の体はあまりにもひよわでとてもついていきません。あなたはまだお若い。どうか御身に見合ったかたをお探しください。」

 「あなた以上などいません。僕の手でできることはなんでもしてあげる。そのか細い絹のような髪にすくうことをどうか許してくださいまし。」

「まあ、わたしのからだはとくべつせいでどこか人とは違う力があるの。率直に申し上げてあなたとは結ばれることはできるただ、あなたは私のもとを再び追いかけることになるでしょう。」

「どんなものであれ承知の上。君がいることが僕の何よりの宝なのだ。」

お二人はあつあつ。とてもよくできた喜劇でした。

「見えているでしょう。返事をして。」

「ああ、それでこの二人の子孫がみやこだというのだろう。」

藤堂は彼女の力をさかのぼって借りているんだ。

ほんとうはこう。

種を明かせばそれはただのラブレターだった。



事の発端/

愛しき彼女よ僕は今も変わらずあなたを思い続けている。

今すぐにでも僕は君を虜にしたい。

君が僕にしたように。

遠い未来でも

遠い過去でも

私はあなたと共にあることを求む。



藤堂 源一


反転 どうやら俺に見せたかったものは見せたらしい。

藤堂は俺に先帰っているからと一言告げ、俺は盲目の子羊がごとく信じられないという虚実の中にいる。

 どうやら、気は済んだらしい。

でもみやこのことだいつ俺をつれて異世界に行くぞなんていいかねない。

 「いつからでも現実はおもしろくできるんだぜ。」


翌日

長かった髪をバッサリ切ってきて都は登校してきた。

「もう、あんたの顔は今日は見たくなかったわ。今日は憲法記念日で休みにしてほしかったね。」

「そうかい」

「あんた。あれ見てどう思ったの。実際あなたが大祖父だったらどっちの現実を選んだのよ。私にも聞かせなさいよ。」

「うんなもん決まってら。」

そう。そんなことはすでにあたりまえで、

「藤堂都がいる世の中さ。」

いつかまた、世界の二択迫られるかもしれない。その時のおれにとっての藤堂都にとっても幸福なのはこの世界だと胸を張って言えることを俺は進んで行おうと思う。


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