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淡々晋書  作者: ンバ
第百四、石勒載記上
98/313

二、石勒、奴隷になる

2.

太安中,幷州饑亂,勒與諸小胡亡散,乃自雁門還依甯驅。北澤都尉劉監欲縛賣之,驅匿之,獲免。勒於是潛詣納降都尉李川,路逢郭敬,泣拜言飢寒。敬對之流涕,以帶貨鬻食之,幷給以衣服。勒謂敬曰:「今者大餓,不可守窮。諸胡飢甚,宜誘將冀州就穀,因執賣之,可以兩濟。」敬深然之。會建威將軍閻粹說幷州刺史、東嬴公騰執諸胡於山東賣充軍實,騰使將軍郭陽、張隆虜羣胡將詣冀州,兩胡一枷。勒時年二十餘,亦在其中,數為隆所驅辱。敬先以勒屬郭陽及兄子時,陽,敬族兄也,是以陽、時每為解請,道路飢病,賴陽、時而濟。旣而賣與茌平人師懽為奴。有一老父謂勒曰:「君魚龍髮際上四道已成,當貴為人主。甲戌之歲,王彭祖可圖。」勒曰:「若如公言,弗敢忘德。」忽然不見。每耕作於野,常聞鼓角之聲。勒以告諸奴,諸奴亦聞之,因曰:「吾幼來在家恆聞如是。」諸奴歸以告懽,懽亦奇其狀貌而免之。


(訳)

太安年間中(302〜303)に

并州へいしゅうは飢饉で乱れ、

石勒は諸諸の小胡とともに逃亡して

そうして雁門がんもん甯驅ねいくを頼って落ち延びた。


北澤ほくたく都尉とい劉監りゅうかんは、

石勒らを捕縛して売り飛ばそうとしたが

甯驅ねいくは彼らを匿ってやり、

獲えられるのを免れた。


こうして石勒は、密かに

都尉の李川りせんを詣でて投降しようとし、

その途上で郭敬かくけいと逢い

泣きながら飢寒きかんを訴えた。


郭敬は石勒に相対して涙を流し、

携帯していた財貨や食料を彼らに与え、

併せて衣服も支給した。


石勒は郭敬に対して述べた。


「今、大飢饉が起きており、

窮状を押し留めることは出来ません。


諸胡の飢えは甚だしく、

冀州きしゅうに来れば食べ物に有り付ける』

として誘致し、彼らを捕えて

売ってしまうべきです。


(さすれば)両者ともに

難を逃れられるでしょう」


郭敬はこの提案に深く頷いた。


ちょうど、建威将軍の閻粹えんすい

并州刺史・東嬴公とうえいこう司馬騰しばとう

諸々の胡族を捕えて山東に売り

(そうして得た資金を)

軍費に充てるように説いていた。


司馬騰は将軍の郭陽かくよう張隆ちょうりゅう

胡族らを捕えさせて冀州へと向かわせ、

胡人二人に一つのかせを嵌めた。

(二人一組にまとめた)


石勒は当時二十歳余りで

彼もまた捕えられた胡族の中におり、

幾度か張隆から辱めを受けていた。


郭敬は先んじて

郭陽及び、兄の子の郭時かくじ

石勒に附属させていた。

郭陽は、郭敬の族兄である。


こうして、郭陽と郭時は

いつも(張隆に石勒への暴行を)

やめるように請い、石勒は

道すがら飢えと病いに苦しんだが

郭陽と郭時を頼って、生き延びた。


石勒は、茌平しへいの人の

師懽しかんに売り飛ばされて、奴隷となった。


一人の老父がおり、

石勒に対してこう述べた。


「君は、魚龍が髪の生え際にある上に

四道が既に成っておる。

まさに、人主となるべき貴い相であろう。


甲戌の年に、

王彭祖おうほうそ王浚おうしゅん)を図るといい」


石勒は言った。


「もし公の言う通りであれば、

その徳を忘れる事はあるまい」


だが、忽然と老人は消えてしまった。


野に於いて耕作するたびに

いつも鼓角こかく(太鼓と角笛)の音が聞こえ、

石勒がその事を奴隷たちに告げると

彼らもまたその音を聞いており、

それに因り(石勒は)言った。


「吾が幼く、家にいた頃から

いつもこんな音が聞こえていたのだ」


奴隷たちが帰って

このことを師懽に報告すると、

師懽もまた石勒の容貌を

奇異なものとして、

彼を奴隷から解放した。


(註釈)

20歳余りとありますが、

計算してみると、太安年間は

石勒が29〜30歳頃のことです。


劉淵と石勒の年齢は恐らく

曹操と孫権くらい離れてるはず。


本籍地で大飢饉が起きてしまい、

石勒は仲間たちを連れ

食料を求めて難民となります。


劉淵伝でも、離石で飢饉が起こったと

書いてあった記憶が。



官軍は異民族を奴隷として売り

そうして得た資金で

軍費を賄おうと考えて

逃げた胡族らを追ってきます。


捕まりそうになった石勒は、

自分を高く評価してくれた

甯驅ねいく郭敬かくけいを頼ります。



「泣拜言飢寒」と書かれており、


泣きながら飢えと寒さを訴えた。

援助を乞うために拝み倒した。


って感じになるんでしょうか、

石勒を語る上で

この泥臭さが外せません。


まさかこの男が後々皇帝となり

中原を支配する事になるとは、

この時点では想像もつかないです。


泣きながら懇願する石勒に

郭敬はもらい泣き。

持ってたお金とご飯くれるわ、

衣服も融通してくれるわで、

めっちゃくちゃいい人です。


石勒は

「今、胡族が奴隷として売られてるから

同様に俺たちを売り飛ばせば

あんたにまとまった金が入るだろう。

俺たちも奴隷になるとはいえ、

最低限の食い物は貰えるだろうし

死ぬよりかはマシだよ。

WIN-WINだろ」と提案します。


郭敬はこの案に従い、

身内の人間を石勒の護衛につけて

いったん二人は別れるのでした。


かくして官軍の張隆ちょうりゅう

捕まることになった石勒は

暴力を振るわれたり、

病気になったり餓死しかけたり

散々な目に遭いますが、

郭敬の身内の献身のおかげで

どうにか生き延びることが出来ました。


(この郭敬、27話で再登場します)



石勒は茌平しへい師懽しかん

奴隷として売り飛ばされ、

暫く彼の下で厄介になります。


農作業中にも、例の太鼓や角笛の音は

依然として聞こえたままであり、

周りの人間にも

シンクロするようになっていました。


これを聞いた師懽しかん

改めて石勒の容貌を観察し、

「こいつは只者じゃない」と判断して

奴隷から解放するのです。



次回、石勒十八騎が登場。

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