七、いざ雄飛のとき
暗愚な皇帝、色ボケ皇后、
邪な臣下、欲深い諸王、
記録するのも億劫なほど
相次ぐ潰し合い、殺し合い。
乱れに乱れた晋王朝。
劉淵よ、雌伏の時は過ぎた。
立ち上がる時は今だ。
7.
惠帝失馭,寇盜蜂起,元海從祖故北部都尉、左賢王劉宣等竊議曰:「昔我先人與漢約為兄弟,憂泰同之。自漢亡以來,魏晉代興,我單于雖有虛號,無復尺土之業,自諸王侯,降同編戶。今司馬氏骨肉相殘,四海鼎沸,興邦復業,此其時矣。左賢王元海姿器絕人,幹宇超世。天若不恢崇單于,終不虛生此人也。」於是密共推元海為大單于。乃使其党呼延攸詣鄴,以謀告之。元海請歸會葬,穎弗許。乃令攸先歸,告宣等招集五部,引會宜陽諸胡,聲言應穎,實背之也。
(訳)
恵帝が失政して盗賊が蜂起し、
元海の従祖父でもとの北部都尉だった
左賢王の劉宣らが、密かに議して言った。
「昔、我々の先人(冒頓)は
漢王朝と兄弟の盟約を結び、
憂愁と安泰とをともにした。
漢が滅亡して以来
魏と晋が代わって興り、
我は単于(匈奴の王様)という
虚号を有していると雖も、
わずかな領土すらなく
自ずと、諸王侯から降格して
編戸(平民)と同様になった。
今、司馬氏は骨肉同士で争い
四海は鼎沸しておる。
国を興し復業するのは
まさにこの時である。
左賢王の元海の
容姿・器量は人を絶しており
その才幹は時代を超越している。
天がもし単于を見捨てていれば、
このような(素晴らしい)男を
生み落すことはなかった筈だ」
こうして密かに
元海を大単于に推戴した。
そこで、その支党の呼延攸に
鄴を詣でさせて
謀計を元海に告げさせた。
元海は、身内の葬儀に参列するために
帰還することを願い出て、
司馬潁はただちにこれを許可した。
そうして元海は呼延攸を先に帰らせて
劉宣らに五部を招集するよう告げた。
宜陽に諸々の胡族(異民族)が会同し
司馬潁に応じたものだと表明していたが
実際には彼に背くつもりであった。
(註釈)
従祖父、劉宣登場。
劉淵の祖父、於夫羅の弟です。
(後漢書等では於《《扶》》羅
彼もなかなかの傑物ですが、
劉淵が50くらいだから、従祖父って
かなり年いってるんじゃないのかな。
少なくとも85歳は過ぎてそう。
「天が我々を見放していれば
元海が生まれてくることは無かったのだ!」
とか、かっこいい!!!!!!
劉淵がいかに匈奴の中で
絶大な信頼を得ていたかがわかります。
黄巾の乱から100年かけて
ようやく鎮まった天下の大乱ですが、
晋の天下統一はインターバルに過ぎず
新たなる戦乱の幕が
こうして開いていきます。
もう隋が統一する
589年まで止まりません。




