十、名誉回復
10.
楚王瑋之伏誅也,瓘女與國臣書曰:「先公名諡未顯,無異凡人,每怪一國蔑然無言。春秋之失,其咎安在?悲憤感慨,故以示意。」於是繇等執黃幡,撾登聞鼓,上言曰:「初,矯詔者至,公承詔當免,即便奉送章綬,雖有兵仗,不施一刃,重敕出第,單車從命。如矯詔之文唯免公官,右軍以下即承詐偽,違其本文,輒戮宰輔,不復表上,橫收公子孫輒皆行刑,賊害大臣父子九人。伏見詔書『為楚王所誑誤,非本同謀者皆弛遣』。如書之旨,謂裏舍人被驅逼齎白杖者耳。律,受教殺人,不得免死。況乎手害功臣,賊殺忠良,雖云非謀,理所不赦。今元惡雖誅,殺賊猶存。臣懼有司未詳事實,或有縱漏,不加精盡,使公父子仇賊不滅,冤魂永恨,訴於穹蒼,酷痛之臣,悲於明世。臣等身被創痍,殯斂始訖。謹條瓘前在司空時,帳下給使榮晦無情被黜,知瓘家人數、小孫名字。晦後轉給右軍,其夜晦在門外揚聲大呼,宣詔免公還第。及門開,晦前到中門,復讀所齎偽詔,手取公章綬貂蟬,催公出第。晦按次錄瓘家口及其子孫,皆兵仗將送,著東亭道北圍守,一時之間,便皆斬斫。害公子孫,實由於晦。及將人劫盜府庫,皆晦所為。考晦一人,眾奸皆出。乞驗盡情偽,加以族誅。」詔從之。
(訳)
楚王の司馬瑋が誅滅されると
衛瓘の娘は国臣に書状を与えて述べた。
「先公(父、衛瓘)の諡がまだ
あきらかとなっておらず
凡人との相異がございませぬ。
つねに一国が黙然と
言葉を発さぬ(看過している)事を
怪訝に感じております。
春秋の(述べる)過失からいって
その咎が(父の)どこにあるのですか。
悲憤、慷慨している故に
その意を示しました」
こうして、劉繇らは黄幡を執り
※登聞鼓を鳴らして上言した。
(※天子を諌める際に慣らす太鼓)
「当初、詔を矯った者が至った際
公(衛瓘)は詔を承けて免官に当たり
即座に章綬を奉送いたしました。
兵仗(武器)を有していたと雖も
一本の刃すら振るう事なく
重ねての詔勅でご邸宅へ出向され
単車にて命に従いました。
もし偽造の詔書の文言が
ただ公の官位を剥奪するだけの
ものであったなら、
右軍以下は即ち詐偽を承けながら
その本文に違反し、
たちまちに宰輔を誅戮しておきながら
また上表する事もなく、
ほしいままに公のご子孫をとらえて
全員に刑罰を執行し、
大臣父子九名が賊に殺害される
事態となってしまったのです。
伏して尚書を拝見しますに、
『楚王の為に誑かされ、錯誤した者、
本来共謀しておらぬ者は
みな(罪状を)緩和する』
とございます。
ここに書かれている旨の
如くとするならば、
裏舍の者は逼迫されて
白杖を持っていたという
ことにすぎません。
律令では、教唆を受けて
人を殺した場合、死を免れ得ません。
況してや、手ずから功臣を害し
忠良を賊殺したのですから尚更です。
共謀していないと述べたとしても
道理から赦されぬ所です。
いま、元締めの悪は誅殺されたと雖も
手を下した賊がなお存命であります。
臣は、有司が事実を詳らかにできず、
或いは取りこぼしがあって
入念な捜査が加えられずに
公父子の仇敵を滅ぼせしめぬのでは
ないかと懼れております。
冤罪を受けた魂魄が
永遠に恨みをのこし
蒼穹に訴えておりますが
酷痛の臣が
泰明の世に於いて
悲しむべきことです。
臣共は身に創痍を被りながら
殯や収歛を終えたところです。
謹んで(賊の行動や罪状を)列記いたします、
衛瓘さまが以前に司空であられた際に
帳下(督)、給使の栄晦は
無情にも降黜を被る事となり
衛瓘さまの家族の人数、
小孫の名や字まで知っておりました。
栄晦はその後給右軍に転任しましたが、
その夜、栄晦は門外にあって
声をあげて大いに呼ばわり
詔を下されて免官となった公が
ご邸宅に戻られる、と宣べたのです。
門が開かれるに及んで
栄晦は前進して中門まで至ると
今度は齎された偽詔を読み上げて
手ずから公の章綬、貂蝉を取り上げ
公にお屋敷への出向を催促したのです。
栄晦は順次衛瓘さまの家口及び
その子孫を記録すると、武器を携え
全員を護送しようとしましたが
東停道の北に押し込めて
包囲し、見張りをつけると
一時の間にたちまち
全員を斬り殺してしまいました。
公の子孫が害されたのは
実際の所栄晦に由るものです。
人々を率いて府庫から強奪した事も
すべて栄晦の所為です。
栄晦一人を考査すれば
諸々の奸計はすべて出てくるでしょう。
どうか真偽を入念にお調べになり
族滅を加えてくださいませ」
詔はこれに従っ(て栄晦を誅殺し)た。
11.
朝廷以瓘舉門無辜受禍,乃追瓘伐蜀勳,封蘭陵郡公、增邑三千戶,諡曰成,贈假黃鉞。
(訳)
朝廷は衛瓘の一門が挙って
罪もないのに禍を受けた事から、
かくて衛瓘が蜀を討伐した
際の勲功を追慕して
蘭陵郡公に封じ、
食邑三千戸を加増した。
成と諡し、仮黄鉞を追贈した。
(註釈)
娘や劉繇の訴えで下手人に罰が下り
衛瓘の名誉は回復された。
□衛瓘評
戦闘 ★★★★★ 5
戦闘は指揮力や武力ではなく
機転と智略で勝ってるイメージ。
戦略 ★★★★★★★ 7
魏末期における処世は
権臣に付かず離れずが正解である事を
羊祜と衛瓘が示してくれた。
あの鄧艾と鍾会を出し抜き同時に始末、
反乱分子の姜維も一緒に片付けて
拓跋力微を絶命させしめた機知がある。
終盤は60後半から70代のおじいちゃん、
往時の判断力は少し錆び付いたかも。
内政 ★★★★★★★★ 8
法務に明るく、
清らかでわかりやすい政治をおこない
朝野の評判は高かった。
捻じ曲げられた九品官人法を撤廃した上での
郷挙里選の復活、土断の施行を提唱した。
結局改正はされなかったものの
土断が東晋や南朝で採用されてるのを見ると
着眼点すごく良かったと思う。
人格 ★★★★★ 5
性格は方正で、衛瓘がいると
賈南風はスケベや残虐な行為に
走れないと思っていた、らしい。
治政に対しての称賛は多かったが
人柄に対しての称賛は少なかった。
どうも最後に
クビにした官吏が復讐しに来た話とか
杜預のセリフを鵜呑みにしてしまいそうだけど
鄧艾や鍾会のような自業自得感はない。
司馬衷の立太子に関しても
もっと頑健な態度で
反対を主張すべきだったかなぁ。
そこかしこに保身の感情が
見え隠れする感は否めない、
原点から動かず、かなぁ。
ドロドロ貴族社会で身を守るには
司馬懿や羊祜のように
韜晦には徹底的でないといけない
という事かしら。
コーエー風に査定すると
統率 64〜80
武力 36〜50
知力 70〜85
政治 75〜92
魅力 44〜62
くらいかな。
それ以前に、三國志14に
衛瓘出てきてるみたいなので
確認してみると
統率 69
武力 45
知力 79
政治 86
魅力 32
でした。
だいたい当たってるけど
魅力ひっく!!




