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淡々晋書  作者: ンバ
第三十九、王沈伝
261/313

一・二、文籍先生お手つき二回

曹髦そうぼうを捨てて司馬昭しばしょうにつき

西晋で高官にのぼった王沈おうしん伝です。


息子の王浚おうしゅん目当てで訳しました。

1.

王沈,字處道,太原晉陽人也。祖柔,漢匈奴中郎將。父機,魏東郡太守。沈少孤,養于從叔司空昶,事昶如父。奉繼母寡嫂以孝義稱。好書,善屬文。大將軍曹爽辟為掾,累遷中書門下侍郎。及爽誅,以故吏免。後起為治書侍御史,轉秘書監。正元中,遷散騎常侍、侍中,典著作。與荀顗、阮籍共撰魏書,多為時諱,未若陳壽之實錄也。

(訳)

王沈おうしんは字を処道しょどう太原たいげん晋陽(しんよう)県の人である。


祖父の王柔おうじゅうは漢の匈奴きょうど中郎将ちゅうろうしょう

父の王機おうきは魏の東郡とうぐん太守であった。


王沈は少くして孤児となり、

従叔である司空の王昶おうちょうに養育され

王昶に父の如く事えた。


継母、寡婦となったあによめを奉じて

孝行の義を称賛された。


書を好み、作文が得意であった。


大将軍の曹爽に召辟されて掾となり

累進して中書ちゅうしょ門下侍郎もんかじろうに遷った。


曹爽が誅殺されるに及んで

故吏である事から罷免された。


後に再起して治書ちしょ侍御史じぎょしとなり

秘書監ひしょかんに転じた。


正元せいげん年間(254〜256)に

散騎常侍さんきじょうじ侍中じちゅうに遷り

著作の事をつかさどった。


荀顗じゅんぎ阮籍げんせきと共に魏書を編纂し

多く(の記述)を

時勢に従って忌避しており

陳寿の事実に即した記録には

及ばなかった。



2.

時魏高貴鄉公好學有文才,引沈及裴秀數於東堂講宴屬文,號沈為文籍先生,秀為儒林丈人。及高貴鄉公將攻文帝,召沈及王業告之,沈、業馳白帝,以功封安平侯,邑二千戶。沈既不忠於主,甚為眾論所非。

(訳)

時に魏の高貴こうき郷公(曹髦そうぼう)は学を好んで

文才を有しており、

王沈及び裴秀はいしゅうを幾度か東堂に招引して

議論や宴会をしたり

文章を綴らせる事があり、

王沈は「文籍ぶんせき先生」、

裴秀は「儒林丈人じゅりんじょうじん」と号されていた。


高貴郷公が文帝(司馬昭しばしょう)を

攻めようとするに及んで、

王沈及び王業おうぎょうを召して

この事を告げたが、

王沈と王業は馳せ行きて

文帝にこの事を建白した。

功績によって安平あんぺい侯に封じられ

食邑は二千戸であった。


王沈は主君に不忠であったことから

甚だ衆論に非難される所となった。


(註釈)

王沈は太原王氏出身。

王昶おうちょう王渾おうこん

王柔おうじゅう王機おうきなどを輩出している。

彼らは晋陽県で、王允おういん王淩おうりょうは祁県がホーム。


荀彧じゅんいくの子・荀顗じゅんぎ

竹林の七賢の一人・阮籍げんせきと「魏書」を編纂。

ただ、忖度にまみれている点で

陳寿の「三国志」に及ばないと評されている。


司馬懿に消された

あの曹爽そうそうの故吏だったので

曹爽敗死に合わせて失脚、これが249年。


養父王昶の功績込みなのか

正元年間には既に復職しており、

文才を活かして

4代皇帝・曹髦そうぼうと親しく付き合った。


当時は司馬昭しばしょうの権限が強くて

魏の皇帝はほとんどお飾り状態だった。

曹髦は司馬昭打倒に乗り出し、

王沈に計画を打ち明けたが、

王沈はこれを司馬昭に密告した。

結果、曹髦は賈充かじゅうの手の者に惨殺された。


王沈は侯に封じられたが

当然、不忠であるとの非難を浴びた。


曹髦が計画を打ち明けたのは

王沈・王業おうぎょう王経おうけいの三人だったが

(全員王氏なのはぐうぜん)

この中で王経だけは

司馬昭に密告しなかったので

家族ともども皆殺しにされた。



この王沈と比較するに当たって

格好の対象がいた。羊祜ようこだ。


曹爽に初め仕えようとした時

王沈は羊祜を誘ったが、拒否された。

いわく、

「人に仕えるってのは

そんな簡単なもんじゃない」


曹爽に連座して

王沈はこれでお手付き一回。


羊祜のほうも、身内から

蜀への亡命者が出たので

周りの風当たりが強くなった。


やがて曹髦そうぼうに帝位が移ると、

王沈は付き合ったが

羊祜は付き合わなかった。


不忠との誹りを受けた王沈、

家族もろとも殺された王経、

どっちに転んでもアウトなので

もう、曹髦と接触する事自体が

貧乏クジってことを、羊祜は察していたのだ。


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