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淡々晋書  作者: ンバ
第三十四、羊祜伝
203/313

二十一、我が霊魂は晋臣にあらず

21.

祜立身清儉,被服率素,祿俸所資,皆以贍給九族,賞賜軍士,家無餘財。遺令不得以南城侯印入柩。從弟琇等述祜素志,求葬于先人墓次。帝不許,賜去城十里外近陵葬地一頃,諡曰成。祜喪既引,帝于大司馬門南臨送。祜甥齊王攸表祜妻不以侯斂之意,帝乃詔曰:「祜固讓歷年,志不可奪。身沒讓存,遺操益厲,此夷叔所以稱賢,季子所以全節也。今聽復本封,以彰高美。」


(訳)

羊祜は身を立てても清廉でつましく、

被服は全て質素で、

蓄えた俸禄はすべて

九族に贍給せんきゅう(恵んで)し、

軍士に賞与として賜っていたため、

家には余財が残っていなかった。


(死の直前に)

南城なんじょう侯の印綬を柩に入れるな」

という命を遺していた。


従弟の羊琇ようしゅうらは羊祜の素志を述べて

先人(先祖と同じ)墓に

葬る事を求めたが、帝は許さず、

城から十里ほど離れた

陵の付近の葬地を一頃ぶん賜った。


諡して「せい(侯?)」といった。


羊祜の遺体が引かれてゆくと

(葬地まで柩が運ばれてゆくと)

帝は大司馬門の南から葬送に臨んだ。


羊祜の甥で斉王せいおうの※司馬攸しばゆう

羊祜の妻の、侯を以て

柩をおさめないで欲しいという

意向を上表した。


(※もともとは司馬昭しばしょうの子であったが、

男子のない兄・司馬師しばしのもとに

猶子として出され、羊祜の姉の

羊徽瑜ようきゆに母として事えていた。

実際に羊氏との血の繋がりはない)


帝はそこで詔勅を下して言った。


「羊祜は固く謙る事で年を重ねた、

志を奪うべきではない。


身は没したといえど

謙譲の姿勢は存立しており、

遺された節操はますます厲しい。


これは伯夷はくい叔斉しゅくせい

賢者と称えられる所であり、

季子きし(呉の季子札?)が

節義を全うした所でもあるのだ。


今、本来の封爵に復帰させる事を聴き入れ

高らかな美徳を顕彰いたそう」


(註釈)

「可」が出てくると

べし、なのか、できる、なのか

判断に困るなぁ。


羊祜の奥さん

「どうか、侯の礼に則ってください」


司馬炎

「羊祜の謙譲を全うさせてやりたい(義務の可)。

わかった、聞き入れよう」-A


司馬炎

「羊祜の謙譲は動かせなかった(可能の可)。

わかった、聞き入れよう」ーB


Aは、葬式の礼式が侯より下のモノで

奥さんが「本来の形式でお願い」と懇願し、

司馬炎が

「それは羊祜の意に反するけど

俺もそうしようと思ってた」という形。


Bは、葬式が1ランク上の公クラスで、

夫の遺志を全うさせるために

奥さんが「本来の侯としてお願い」と

懇願して、司馬炎は

「うーん、俺にも羊祜の志を

変えられなかったからなぁ」

と、苦笑気味に許す感じ。


「諡曰成」としか書かれてないから

最終的な爵位が、

成侯なのか、成公なのかがわからない。


そういうことではなくて、単純に

「夫を先祖と同じ墓に入らせてあげて」

と言いたかっただけかもしれません。


そして、

「棺の中に印綬を入れないで」という

遺言には、羊祜のどういった気持ちが

あらわれてるんだろう。


人は死の直前にウソはつかない。

司馬懿が曹丕と一緒の墓に

入りたいと言ってたのも本音だと思う。


これまでに見てきた羊祜なら

「こんな高位は畏れ多い」という

意思表示なのかもしれないけど、

これは、「晋の臣下」という鎖に

死後もがんじがらめにされるのが

イヤだったんじゃなかろうか。


徹底的な謙譲と質素倹約を

貫く事で守り抜いた生命、

気がつけば自分自身というものが見当たらない。


死後はせめて、

晋の名臣イヌという肩書きを脱ぎ捨てて

羊叔子という一個の人間でありたかったのだ。


だから、奥さんは晋の陵墓に

夫を葬りたくなかった。


本当は、荊州で釣りや狩りをしながら

とても楽しそうにしていた姿こそが

羊祜の本当の顔で、

山川の景観を眺めながら詩吟に興じ

気の合う仲間たちと酒を飲み交わして

人の世の儚さについて講じるような、

そんな気ままな暮らしをしたかったのかも。


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