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淡々晋書  作者: ンバ
第三十四、羊祜伝
199/313

十五・十六、羊公の令望不朽なり

15.

祜女夫嘗勸祜「有所營置,令有歸戴者,可不美乎?」祜默然不應,退告諸子曰:「此可謂知其一不知其二。人臣樹私則背公,是大惑也。汝宜識吾此意。」嘗與從弟琇書曰:「既定邊事,當角巾東路,歸故里,為容棺之墟。以白士而居重位,何能不以盛滿受責乎!疏廣是吾師也。」


(訳)

羊祜の娘婿がかつて羊祜にこう勧めた。


「企図する所があれば

推戴した者に帰属させる事こそ

美事と申せるのではないでしょうか?」


羊祜は黙然として応じず、

(娘婿が?)退出した後諸子に告げて述べた。


「彼の言葉は、その一を知ってその二を知らない

と謂うべきであろうな。


人臣が私を樹てれば公に背く、

これは大いなる惑乱というものだ。


汝らはこうした我が意を理解せよ」


また、かつて従弟の羊琇ようしゅう

書状を与えてこのように述べた。


「辺境の事業を定めた後は

角巾を被って東へ向かい、郷里に帰って

棺を容れる墟としよう。

(呉を倒したら故郷でひっそり余生を過ごすよ)


白土を以て重き地位に居れば

満ち足りる事で驕慢し

責譲を受ける事をどうして避けられよう。


※疏広こそが我が師である」


(※前漢の宣帝の時代の人。

名声を得ながら官を去って帰郷した)


(註釈)

統一が目前に迫ってきたら

功臣は今度は

身の振り方を考えなきゃならない。


韓信かんしんという走狗は煮られた。

王翦おうせんはその身を全うしたけど

司馬遷には批判された。

羊祜が目指すのは

権力を手放した張良ちょうりょう鄧禹とううか。

いや、疏広そこうだったーっ!


羊祜は政界のパワーゲームに

ほとほとウンザリしてるんだなぁ。


こういう環境でなかったら

推挙したの秘密にしたり

しないと思います。


16.

祜樂山水,每風景,必造峴山,置酒言詠,終日不倦。嘗慨然歎息,顧謂從事中郎鄒湛等曰:「自有宇宙,便有此山。由來賢達勝士,登此遠望,如我與卿者多矣!皆湮滅無聞,使人悲傷。如百歲後有知,魂魄猶應登此也。」湛曰:「公德冠四海,道嗣前哲,令聞令望,必與此山俱傳。至若湛輩,乃當如公言耳。」


(訳)

羊祜は山水が好きで、

風景を楽しみたい時には必ず峴山けんざんへ行き、

酒宴を開いて詩歌を詠み

終日倦む事がなかった。


かつて、慨然と歎息して

従事中郎の鄒湛すうたんらを顧み、

こう言ったことがあった。


「宇宙が興った時から

この山は存在していた。


やって来た賢者や勇士は

我ときみたち大勢のように

この山に登って遠くを眺めていたのだろうなぁ。


皆、湮滅して聞こえることなく

人々を悲傷させた。


もし百年後も知覚があれば、

私の魂魄はなお応じて、

この山に登るであろうよ」


鄒湛は言った。


「公の徳は四海に冠たるもので

道義は前代の聖哲を嗣がれ

令望は聞こえ渡っておりますから

必ずや、この山とともに伝わります。


湛の若き輩が、まさに

公のお言葉の如くに至るでしょう

(羊祜さんは聖人だから名前が残るが、

私みたいな有象無象は名前も残らず死んでいく)」


(註釈)

孫堅そんけんも最期の瞬間に

たぶん峴山の景色眺めてたよね……。


悠久の時の流れの中で

生まれ落ち、人は何を成して

そして潰えていくのであろう。


ちなみに100年後は

氐族の苻堅が大暴れしています。


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