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淡々晋書  作者: ンバ
第百五、石勒載記下
166/313

百五、洛陽決戦

105.

劉曜敗季龍于高候,遂圍洛陽。勒滎陽太守尹矩、野王太守張進等皆降之,襄國大震。勒將親救洛陽,左右長史、司馬郭敖、程遐等固諫曰:「劉曜乘勝雄盛,難與爭鋒,金墉糧豐,攻之未可卒拔。曜懸軍千里,勢不支久。不可親動,動無萬全,大業去矣。」勒大怒,按劍叱遐等出。於是赦徐光,召而謂之曰:「劉曜乘高候之勢,圍守洛陽,庸人之情皆謂其鋒不可當也。然曜帶甲十萬,攻一城而百日不克,師老卒殆,以我初銳擊之,可一戰而擒。若洛陽不守,曜必送死冀州,自河已北,席捲南向,吾事去矣。程遐等不欲吾親行,卿以為何如?」光對曰:「劉曜乘高候之勢而不能進臨襄國,更守金墉,此其無能為也。懸軍三時,亡攻戰之利,若鸞旗親駕,必望旌奔敗。定天下之計,在今一舉。今此機會,所謂天授,授而弗應,禍之攸集。」勒笑曰:「光之言是也。」佛圖澄亦謂勒曰:「大軍若出,必擒劉曜。」勒尤悅,使內外戒嚴,有諫者斬。命石堪、石聰及豫州刺史桃豹等各統見眾會滎陽,使石季龍進據石門,以左衛石邃都督中軍事,勒統步騎四萬赴金墉,濟自大堨。先是,流澌風猛,軍至,冰泮清和,濟畢,流澌大至,勒以為神靈之助也,命曰靈昌津。勒顧謂徐光曰:「曜盛兵成皋關,上計也;阻洛水,其次也;坐守洛陽者成擒也。」諸軍集于成皋,步卒六萬,騎二萬七千。勒見曜無守軍,大悅,舉手指天,又自指額曰:「天也!」乃卷甲銜枚而詭道兼路,出於鞏、訾之間。知曜陳其軍十餘萬於城西,彌悅,謂左右曰:「可以賀我矣!」勒統步騎四萬人自宣陽門,升故太極前殿。季龍步卒三萬,自城北而西,攻其中軍,石堪、石聰等各以精騎八千,城西而北,擊其前鋒,大戰于西陽門。勒躬貫甲胄,出自閶闔,夾擊之。曜軍大潰,石堪執曜,送之以徇於軍,斬首五萬餘級,枕屍于金穀。勒下令曰:「所欲擒者一人耳,今已獲之,其敕將士抑鋒止銳,縱其歸命之路。」乃旋師。使征東石邃等帥騎衛曜而北。

(訳)

劉曜りゅうようは石虎を高候こうこうで破り

かくて洛陽らくようを包囲した。


石勒側の滎陽けいよう太守の尹矩いんく

野王やおう太守の張進ちょうしんらはみな劉曜に降伏し

襄国は大いに震え上がった。


石勒は自ら洛陽を救援しようとしたが、

左右の長史・司馬である

郭敖かくごう程遐ていからが固く諌めた。


「劉曜は勝ちに乗じて勢いが盛んです、

鉾先を争うのは難しいでしょう。

金墉きんようは食糧が豊富ですので、

これを攻めてもすぐには抜けますまい。


劉曜は千里に※懸軍し

(※敵陣の深くまで遠征する)

勢いを久しく保てません。


おん自ら動かれるべきではありません。

動かれれば万全を得られず

大業は去ってしまいますぞ」


石勒は大いに怒り、剣に手を掛けて

程遐らを呵叱し、退出させた。


こうして(先の件で免官になっていた)

徐光じょこうが赦免される事となり、

石勒は彼を召し出すと、こう言った。


「劉曜が高候を奪った勢いに乗じて

洛陽の守衛を囲んでおり、

傭人(凡人)の情としては、皆が

その鋒に当たる事は出来んと謂っている。


しかし劉曜の帯甲(武装兵)十万は

一つの城を攻めて百日経っても勝てず、

師団は疲弊し、兵卒は危殆であろう。

我が初鋭を以てこれを撃ったなら

一戦で虜にする事が出来よう。


もし洛陽が守りきれねば

劉曜は必ずや冀州きしゅう、自と黄河以北にも

死を賭して向かってくる。

(河北を)席巻して南面されたら

吾の大事は去ってしまうだろう。


程遐らは吾自ら行かせまいとするが

卿はどのように考える?」


徐光は対して言った。


「劉曜は高候を奪った勢いに乗っていますが

進軍して襄国じょうこくに臨めず改めて金墉を守っています。

これは、能無しのする事です。


遠征は三時に及んで

攻戦の利点などなくなってしまい、

もし鸞旗らんき(天子の旗)が

おん自ら光臨いたさば、

必ずや旗を望見して敗走いたしましょう。


天下の大計を定めるは

今、この一挙にかかっていますぞ。


この機会は天からの授かりものと申せましょう。

授かっておきながら応じずにいれば、

禍の到る所となります」


石勒は笑って言った。


徐光おまえの言うことが正しい」


仏図澄ぶっとちょうもまた石勒に言った。


「大軍をもし出撃させたならば

必ずや劉曜にとりこにできましょう」


石勒は非常に悦び、内外を戒厳させ、

諫言する者があれば斬った。


石堪せきかん石聡せきそう、及び豫州刺史の桃豹とうひょうらに命じて

各々の統領する手勢を滎陽に衆会させ、

石虎を進軍させて石門に據らせ、

左衛の石邃を都督中軍事とした。

石勒は歩兵騎兵四万を統率して

金墉へ赴き、大堨から渡河した。


これより以前、(黄河では)

流澌りゅうし(河に氷が流れる)して

風は猛り狂っていたのであるが、

軍が至ると氷は溶けており

風も緩やかになっていた。


渡り終えたところで流氷が大挙して至り、

石勒は神霊の助けであると考えて

霊昌津れいしょうしんと命名した。


石勒は徐光の方を振り返って言った。


「劉曜が成皋関に兵を集めていれば、上計。

洛水を阻んでおれば、次善の計だ。

坐して洛陽を守っていたなら、擒となるだろう」


諸軍は成皋に集結し、

歩兵は六万、騎兵は二万七千であった。


石勒が見ると(成皋には)、

劉曜の守備軍がいなかった。

大いに悦んだ石勒は

手を挙げて天を指し、

一方で自らの額を指して、言った。


「天よ!!!!」


かくてよろいをしまい、ばいを銜えさせると

詭道(間道)を抜けて倍の道のりを行き、

鞏、訾の間に出た。


劉曜がその十余万の軍勢を

城の西に布陣させている事を知ると

石勒はますます悦び、左右の者に謂った。


「我を慶賀せよ!」


石勒は歩兵・騎兵四万を統率して

宣陽門からかつての太極前殿へ升った。


石虎が歩兵三万で城の北から西へ向かって

劉曜の中軍を攻め、

石堪・石聡らが各々精鋭騎兵八千で

西から北へ向かって劉曜の先鋒を撃ち、

西陽門で大いに交戦した。


石勒は躬ら甲冑を貫き(着て)

閶闔から出てこれを挟撃した。


劉曜の軍勢は大いに潰乱し、

石堪が劉曜を捕えて、

彼を送る事で軍内を巡行した。


斬首された者は五万余級、

金穀まで屍が散乱していた。


石勒は配下に命じて言った。


「擒にしたかったのは(劉曜)一人だけだ。

今已にこれを獲たからには、

その指揮する将士の鋭鋒を抑止し、

彼等の天命に帰する路については

ほしいままにさせるものとする」


かくて師団は凱旋した。


征東(将軍)石邃等に騎兵を率いさせ

劉曜を北方まで護衛させた。


(註釈)

洛陽決戦って薬用石鹸みたいな響き。


司州・洛陽を奪った後趙に

前趙の劉曜がカチコミかけてきました。


後趙の絶対的エース・石虎せきこすらも

一捻りにしちまう劉曜。

有望株の石瞻せきせんもこの戦で

討ち取られてしまったようで、

さすがに桁外れの強さです。


石勒は自ら、劉曜に包囲された

洛陽の救援に向かおうとしますが

程遐ていかたちは猛反対。


これに失望した石勒、

そこで以前に生意気な態度を取った

徐光を復職させ、諮問したところ

「天が与えた好機を逃すな!」と

GOサイン。


石勒の背中に最後の一押しを与えるのは

張賓であってほしかった……。


荒れ狂う風と流氷が、

石勒達が渡河しようとする際に

示し合わせたかのように止まった。


劉曜が成皋に兵を集結させていたら

さすがに勝機は薄いかと考えていた石勒。

ところが、成皋には人っ子一人いない。


天運が俺に味方している。

石勒は思わず上天と額を指し、叫んだ!


「天よ!!!!」


かっけぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!


25年間戦い通しだった石勒が、

奴隷から身を起こした男が、

「天下取った」と確信した瞬間です。


ワシはこの場面にシビれたゆえに

五胡十六国時代をちゃんと

勉強してみようと思ったのです。


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