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淡々晋書  作者: ンバ
第百四、石勒載記上
129/313

四十五、坫城の戦い

45.

勒攻樂平太守韓據于坫城,劉琨遣將軍姬澹率衆十餘萬討勒,琨次廣牧,為澹聲援。勒將距之,或諫之曰:「澹兵馬精盛,其鋒不可發,宜深溝高壘以挫其銳,攻守勢異,必獲萬全。」勒曰:「澹大衆遠來,體疲力竭,犬羊烏合,號令不齊,可一戰而擒之,何強之有!寇已垂至,胡可舍去,大軍一動,豈易中還!若澹乘我之退,顧乃無暇,焉得深溝高壘乎!此為不戰而自滅亡之道。」立斬諫者。以孔萇為前鋒都督,令三軍後出者斬。設疑兵於山上,分為二伏。勒輕騎與澹戰,偽收衆而北。澹縱兵追之,勒前後伏發,夾擊,澹軍大敗,獲鎧馬萬匹,澹奔代郡,據奔劉琨。琨長史李弘以幷州降于勒,琨遂奔于段匹磾。勒遷陽曲、樂平戶于襄國,置守宰而退。孔萇追姬澹于桑幹。勒遣兼左長史張敷獻捷于劉聰。


(訳)

石勒が楽平がくへい太守の韓拠かんきょ坫城てんじょうに攻めると、

劉琨は將軍の姫澹きたんに十余万の軍勢を統率させ

石勒の討伐に当たらせた。

劉琨は広牧こうぼくに宿営して姫澹を声援した。


石勒はこれを拒がんとしたが

或る者が諌めて言った。


「姫澹の兵馬は精鋭かつ盛強で

その先鋒に当たるべきではございませぬ。


宜しく溝を深くし、とりでを高くして

その鋭気を挫くべきであり、

攻守の勢いが変転したならば

必ずや万全を得られましょう」


石勒は言った。


「姫澹の大軍は遠来し

体は疲れ、力は尽き果てて

犬や羊のような烏合の衆であり

号令も行き届いておらぬゆえ

一戦でこれを擒にする事ができよう。

どこに精強さが有るというのだ!?


賊は已に至らんとしておるのに

どうして捨て去れよう!

大軍をひとたび動かしておきながら

どうして容易く途中で帰還できよう!!


もし姫澹が我々の退却に乗じれば

顧みる暇すらもなくなるというのに

どうして溝を深くして

塁を高くするなどということが

できるというのか!!


それは、戦わずして

自ら滅亡を辿るための道だ!!」


石勒は立ち上がると

諫言した者を斬った。


孔萇を前鋒都督に任じ、

三軍に「後退した者は斬る」と命じた。


疑兵(兵士に見せたダミー)を山上に設けて

伏兵を二つに分け(て配置し)た。


石勒は軽騎で姫澹と交戦し、

偽って軍勢を収めて逃げた。


姫澹が兵を放って追撃すると

石勒は前後の伏兵を繰り出して挟撃し

姫澹の軍は大敗を喫した。


石勒は武装した馬一万匹を獲得し、

姫澹は代郡へ、韓拠は劉琨のもとへ奔走した。


劉琨の長史の李弘りこう

并州を挙げて石勒に降伏し、

劉琨はかくて段匹磾だんひつていのもとへ落ち延びた。


石勒は陽曲・楽平の戸口を襄国に遷し、

守宰を配置して退却した。


孔萇は姫澹を桑幹そうかんまで追撃した。


石勒は兼左長史に張敷ちょうふを派遣して

劉聡に捷報を献上させた。


(註釈)

316年、冬頃の出来事です。


同年8月には、

劉聡率いる漢の本隊が

とうとう長安を攻め落とし、

かくて西晋せいしんは滅亡しました。


265年の禅譲に始まり

52年間の歴史に幕。


江南に逃れていた宗族の司馬睿しばえい

これを受けて翌々年に皇帝に即位、

こちらの亡命政権を

東晋とうしんと呼んで区別します。


河北で西晋の残党や鮮卑と

激闘を続けている石勒ですが、

彼はあまり東晋の方は

マークしていない印象です。

しかし、祖逖そてきの出現により

認識を改めざるを得なくなります。


「異民族から中原を取り戻す!!」

という祖逖の信念は

「北府軍」という形で以降も

継承されていくこととなります。


ゆかりのない江南に亡命したため

権力基盤が脆弱な東晋にとって

扱いを間違えれば即座に爆発する

時限爆弾的な内憂にもなっていくのが

また皮肉なところ。



長安の陥落を受け、匈奴漢の打倒に

より一層燃えるようになった劉琨は

10万単位の派兵で石勒を潰しに来ます。


消極策を嫌う石勒、

「敵の方が勢いあるから守り固めましょ」

と進言したヤツを斬り捨ててしまいます。


後ろ向きな作戦ホントに嫌ってます。

たとえ負けるときも前のめり、

それが俺のジャスティス!!


「後退した者は斬る!」という命令を出し

兵士たちにも覚悟を決めさせた石勒、

伏兵や疑兵を使って

蓋を開けてみれば圧勝です。


この敗戦の影響で

劉琨の長史の李弘が、并州ごと

石勒に寝返ってしまい……

こうなると戦うどころの

話ではありません。



石勒は要所要所の判断力が凄いなぁ。

即断即決だし。


孫堅もそうでしたが、

裸一貫から始めたタイプは

思い切りが良い印象があります。


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