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淡々晋書  作者: ンバ
第百四、石勒載記上
124/313

三十四、張賓の鶴の一声

34.

勒纂兵戒期,將襲浚,而懼劉琨及鮮卑、烏丸為其後患,沈吟未發。張賓進曰:「夫襲敵國,當出其不意。軍嚴經日不行,豈顧有三方之慮乎?」勒曰:「然,為之奈何?」賓曰:「彭祖之據幽州,唯仗三部,今皆離叛,還為寇讐,此則外無聲援以抗我也。幽州飢儉,人皆蔬食,衆叛親離,甲旅寡弱,此則內無強兵以禦我也。若大軍在郊,必土崩瓦解。今三方未靖,將軍便能懸軍千里以征幽州也。輕軍往返,不出二旬。就使三方有動,勢足旋趾。宜應機電發,勿後時也。且劉琨、王浚雖同名晉籓,其實仇敵。若修牋于琨,送質請和,琨必欣于得我,喜于浚滅,終不救浚而襲我也。」勒曰:「吾所不了,右侯已了,復何疑哉!」


(訳)

石勒は兵を集めて期日を定めた上で

王浚を襲撃しようとしたが、

劉琨りゅうこん及び鮮卑・烏丸が

後難となることをおそれて

沈吟ちんぎん(思い悩む)し、出発できずにいた。


そこで、張賓が進み出て言った。


「そもそも、敵国を襲撃する際には

相手の不意を衝いて出るべきなのです。


軍を戒めてより日が経過しても

行かれようとなさいませんが、

三方(劉琨・烏丸・鮮卑)を

顧慮しておいでなのですな?」


石勒は言った。


「その通りなのだ。如何すればよいか?」


張賓が言った。


彭祖ほうそ(王浚)が

幽州に拠ることが出来ていたのは、

単に三部(烏丸や鮮卑)の力に

よるものでありましたが、

それらは今や皆離叛してしまっており、

反対に掠奪や報讐を為しております。

これはすなわち、外部からの救援なしに

我々に抗う……という事であります。


幽州は飢餓にて貧しく、

人々は皆粗食し、

大勢が叛き、自ら離反して

甲旅(武装した師団)は寡弱となっております。

これはすなわち、内部の強兵なしに

我々をふせぐ……という事であります。


(内にも外にも恃みのない敵から見て)

もし大軍が近郊に在らば、

必ずや土崩、瓦解いたしましょう。


今、三方はいまだ靖んじられておらず、

将軍が千里の先まで軍を隔てさせ

幽州を征伐できるなどとは考えておりますまい。


軽軍(軽装の軍)なら、往復するのに

二旬(20日)はかかりませぬ。


遠征の途上で三方に動きがあろうとも、

きびすめぐらす(軍を返す)には十分です。


宜しくこの機に応じ、

電撃的に出撃なさるべきであって、

この時期を逃す事などなきように。


かつ、劉琨と王浚は、建前上は

同様に晋に称藩してはおりますが、

その実は仇敵にございます。


もしも劉琨に手紙を修め

人質を送って和を請うたならば、

劉琨は間違いなく

我々を得たことをよろこび、

王浚が滅びることを喜んで、

結局は王浚を救援することも

我々を襲撃する事もありますまい」


石勒は言った。


「吾が考えあぐねているうちに

右侯は結論を出してしまっていたのか。

また何を疑うことがあろう!!」



(註釈)


烏丸・鮮卑の助力のない王浚など

張子の虎も同然と言わんばかりの

張賓の熱弁です。


君がそう申すなら、

何も迷うことはない!

と爽やかに言い放つ

この主従の全幅の信頼感よ。



官途の戦いの時に、弱音を吐く曹操を

あなたならできますよ!と

激励してくれた荀彧みたい……

いや、超えたかもしれない。


曹操は最終的に荀彧切っちゃったもんね。


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