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淡々晋書  作者: ンバ
第百四、石勒載記上
100/313

四、挙兵

4.

及成都王穎敗乘輿于蕩陰,逼帝如鄴宮,王浚以穎陵辱天子,使鮮卑擊之,穎懼,挾惠帝南奔洛陽。帝復為張方所逼,遷于長安。關東所在兵起,皆以誅穎為名。河間王顒懼東師之盛,欲輯懷東復,乃奏議廢穎。是歲,劉元海稱漢王于黎亭,穎故將陽平人公師籓等自稱將軍,起兵趙魏,衆至數萬。勒與汲桑帥牧人乘苑馬數百騎以赴之。桑始命勒以石為姓,勒為名焉。籓拜勒為前隊督,從攻平昌公模於鄴。模使將軍馮嵩逆戰,敗之。籓濟自白馬而南,濮陽太守苟晞討籓斬之。勒與桑亡潛苑中,桑以勒為伏夜牙門,帥牧人劫掠郡縣繫囚,又招山澤亡命,多附勒,勒率以應之。桑乃自號大將軍,稱為成都王穎誅東海王越、東嬴公騰為名。桑以勒為前驅,屢有戰功,署為掃虜將軍、忠明亭侯。桑進軍攻鄴,以勒為前鋒都督,大敗騰將馮嵩,因長驅入鄴,遂害騰,殺萬餘人,掠婦女珍寶而去。濟自延津,南擊兗州,越大懼,使苟晞、王贊等討之。


(訳)

成都王の司馬潁しばえいが、蕩陰とういん

乗輿(天子=恵帝)を破るに及び、

逼迫した帝は鄴宮へ追いやられた。


王浚おうしゅんは司馬潁が天子を陵辱しているとして

鮮卑せんぴを遣わしてこれを撃たせた。

司馬潁は懼れ、恵帝を挟んで

南の洛陽へと奔走していった。


恵帝は今度は張方ちょうほうに迫られる所となり

長安へと遷った。


関東にて挙兵の在る所は、すべて

司馬潁を誅殺する名目によるものであった。


河間王の司馬顒しばぐう

東方の師団の旺盛さを懼れ、

東部を再度安定させようと

司馬潁廃立についての議を上奏した。


この年(304)、

劉元海りゅうげんかい黎亭れいていにて漢王を称し、

司馬潁のもとの将で陽平ようへいの人・公師籓こうしはんらは

自ら将軍を称し、趙魏ちょうぎにて挙兵し、

その軍勢は数万にのぼった。


石勒は汲桑きゅうそうとともに

牧人(牧場で働いてた人達)を率いて

苑の馬に乗り、数百騎にて

公師籓のもとへと赴いた。


汲桑は、ここで初めて

石勒に石姓を名乗るように命じ、

「勒」という名になった。


公師籓は石勒を拝して前隊督ぜんたいとくとし、

鄴における平昌公へいしょうこう司馬模しばも攻めに従軍させた。


司馬模が将軍の馮嵩ふうすうを派遣して

逆撃させると、石勒らは敗れた。


公師籓は自ら白馬の南に落ち延びたが、

濮陽ぼくよう太守の苟晞こうきが公師籓の討伐に赴き

公師籓は斬られてしまった。

石勒は汲桑とともに逃げ、苑の中に潜んだ。


汲桑は石勒を伏夜牙門ふくやがもんに任じ、牧夫を統率させ

郡県に捕われていた囚人らを掠め取った。

また、山あいの澤へ

亡命した者達を招き入れると

その多くは石勒に附き、

石勒は彼らを率いてこれに応じた。


汲桑はかくて自ら大将軍を号し、

成都王・司馬潁のために

東海王とうかいおう司馬越しばえつ東嬴公とうえいこう司馬騰しばとう

誅するという名目を称した。


汲桑が石勒を先駆けとすると

頻りに戦功を挙げたため

署されて掃虜将軍・忠明亭侯となった。


汲桑が進軍して鄴を攻めると

石勒は前鋒都督ぜんぽうととくとなり、

司馬騰の部将の馮嵩を大敗させて

長駆して鄴に入り、

かくて司馬騰および一万余人を殺害し

婦女・珍宝を掠奪して去って行った。


延津えんしんを渡って南へ兗州えんしゅうを攻撃し、

大いに懼れた司馬越は

苟晞・王贊おうさんらに石勒を討伐させた。



(註釈)

304年、蕩陰とういんの戦い。


皇帝・司馬衷しばちゅう

成都王・司馬潁しばえいの内ゲバトル。


司馬潁が勝利を収め

帝位継承権を得たかに思えましたが、

主力の劉淵りゅうえんに独立されて弱体化。

鮮卑を擁する王浚おうしゅんらに

ズタボコにやられてしまいます。


かくて司馬潁が失脚すると

その復権と報復を名目に

公師籓こうしはんが挙兵します。


石勒と汲桑のコンビも

公師籓の反乱軍に加わりました。



このタイミングで、汲桑は

石勒に、漢人名を名乗る事を勧めます。


「勒」はおさえるとか

ととのえる的な意味合い。


牧場(汲桑)にツテがあったから

馬の調達には不自由しなさそうな石勒。

劉秀りゅうしゅうなんか、挙兵した時

牛に乗ってたもんね。


かくて、一旗あげようと決起した

奴隷・盗賊あがりのチンピラ軍団でしたが

現実はそうそう甘くありませんでした。


公師籓も汲桑も、官軍に

情け容赦なく殺されてしまうのです。


石勒伝、

序盤の難敵は苟晞こうき劉琨りゅうこん王浚おうしゅん

王弥おうび靳準きんじゅん劉曜りゅうよう祖逖そてきもいるよ。


はじめは負け続きでも、最後には

不思議と何とかしてしまうのが

石勒のグレートなところです。


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