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まおうといっしょ! 〜復習、虐殺、建国への道〜  作者: 爪楊枝
魔王との旅立ち
7/26

02


「これなんかまだ使えるんじゃないか?」

「そんな子どもっぽいのやだ!もっとこう大人っぽいやつにしてくれ!」

「大人っぽいものって言われてもなあ…ロベリアの身長じゃああんまり大きいのだとぶかくなっちゃうだろ?」

「むぅ…それは確かにそうだがやはり魔王を名乗るからにはそれ相応の格好というものがあろうて…」


現在、旧カルミア市街にてロベリアの服を探している俺達は比較的崩れていない石造りの家でロベリアの服と首を繋げるための糸と針を探していた。


…といっても、俺自身の服もなんとかしないとな…今はなんとか隠されているが、そのうちダメになるぞこれ…


「にしてもなんでここに子ども服なんて残ってんだ?カルミアには魔物しか住んでいなかったんだろ?」

「……王城が囲まれ我々が籠城した時、勇者とそれについて来た行商人やその家族、カルミア占領後に講和会議を開くために各国の代表がこの市街地を拠点に使っておったからな、こういったものが残っておっても不思議ではないさ。それについ50年ほど前まではある国の領土として僅かばりの駐屯兵があったそうだぞ」

「そうか…ん?50年前までここに人がいたってことはロベリア、お前はどこにいたんだよ?」

「ん?それはだなあ…おっ!これなんてどうだゼンノスケ!」


体に抱えられる形で衣装タンスの中を物色していたロベリアが嬉しそうな声をあげた。


頭部をタンスの上に置き、体が器用に取り出した服を着る。ロベリアが着たのは黒い…ワンピースのようなもの、多分ワンピースだと思う。所々ほつれているしあまり状態が良いとは言えないが、彼女の体型や身長と相まってその幼さを際立たせている。もしこれにちゃんと頭がついていたらとてつもない美少女…そんな感想が俺にもあったかもしれない…


「うーん、寒くないのかそれ?」

「あ?今はどちらかといえば温暖な時期だぞ。こんなので寒さなんて感じてたまるか」

「あぁ、そういや寒くないな…」


今思えば俺の元いた世界は丁度正月真っ只中、つまりは冬だ。それなのにここまで寒さを感じることはなかった。つまりここは日本より比較的温暖な地域か…それとも季節が違うのか?


そんなことを考えていると、ペタペタと足音を立てロベリアの体が俺に近づいて来た。


「ん?なんだ?」

「さあ、我は知らんぞ」


いやいや、脳みその伝達で動いてんだろ?…そういえば神経とかそもそも繋がってるのか?これも魔法的な力?え?なにこれ気になるな…


俺の元まで寄ってきた体はその場でくるりと回りワンピースをヒラヒラと持ち上げる。ピタッとバランスよく止まると裾を少し持ち静止した。


「え?」


一体目の前で行われたことになんの意味があるのかさっぱり分からなかったが、恐らくなにか理由があるのだろう。俺は助けを求めるためにもロベリアの残された頭部を見るが


「なんだあ?それは…」


本人も分かってないご様子。


というか、やっぱりロベリア以外の意識があるよなこれ?どう考えても本人もわからない行動を体が勝手に取るなんておかしいだろ…いや、まさかロベリアが実は俺をからかっているとか?……いや無いな、あの顔は本当に何もわからないって顔だ。うちの姪も宿題をやりながらよくそんな顔をしていた。


「う、うーん…」


ロベリアの体は未だに謎の行動をとったまま静止しているが…これはなにか俺に伝えたいことがある…のか?えっと…服を手に入れてそれを着てから俺の前で一回転してその服を摘んで俺の前で止まる…え?もしかして褒めて欲しいのか?可愛い服だねとかそんな感じで?おいおい冗談だろロベリアちゃん…頭と体でこうも性格に差が出るかね…とりあえず服を褒めてみるか。


「か……可愛いワンピースだな!黒色ってのが色っぽくて素敵だと思う……ぞ!?」

「なっ!……なにを恥ずかしいことを言うておるのだ貴様は!?」


おや?案外頭の方も可愛らしい反応をするではないか。


面白い反応を見せてくれたロベリアに気を取られている俺は、今注視すべき存在から目を一瞬だけ外してしまった。その隙をついてかどうかは分からないが、ロベリアの体は俺に抱きつこうとしたのだ。そして…


「うおっ!?」


バチっ


強い拒絶の光が放たれ、俺とロベリアの身体はそれぞれ後ろに倒れこんだ。


「…なにをしておるのだゼンノスケ、今はそんなことをして遊んでおる暇は無いのだぞ。」

「い、いや今こいつが…あれ?」


ロベリアの身体も倒れたと思ったのに、俺の目の前には姿勢良くその身体が立っている。いや、よく考えればこいつの身体能力なら一瞬で起き上がることくらい簡単か…


「まあ良い、それよりも針と糸を探すぞゼンノスケ!」

「お、おう…」


何事もなかったかのように首を持ちあげた身体はその後は先ほどのような脳みその命令以外の行動をとることは無かったが、若干…というより結構自らの頭部に対する扱い方が乱雑だったよう思えた。

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