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少女漫画に恋をして ~元ヤン達の恋愛模様~  作者: 宇都宮かずし
第四章 カルパスと発泡酒
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Chitose Viewer 01

 フローリングに敷かれたカーペットの上にペタリと座り込んで、スマホの画面を呆然と見つめる私……


 夢? 夢じゃないよね……?


 取りあえず、ホッペを抓ってみる。


 ――――い、痛い。


 しかし、頬の痛みとともに、猛然と嬉しさがこみ上げてきた。


 スマホの小さな画面。そこにはなんと、トモくんの携帯番号とメールアドレスが表示されているのだ。


 そう、中学時代からずっと知りたかった、トモくんの携番とメアド――


「んん~~~~♪」


 私はスマホを胸に抱きしめて、そのまま後ろへ倒れ込んだ。そして、嬉しさのあまりにフローリングの床をゴロゴロと転がりまわ――


「あだっ!?」


 物凄い勢いで、本棚の角に額を激突させた私。


 しかし、その痛みすら夢ではない事の証拠(あかし)である。額に激痛を走らせながらも、私の頬は緩みっぱなしだ。


 や、やばい……この感動を誰かに伝えたいっ! このままでは、窓を開けてベランダから叫び出してしまいそうだ。


「そだっ――」


 私はスマホの画面を切り替えて、発信履歴からお目当ての番号を探す。

 そして発信をタップし、その薄い機体を耳に当てた。


『もしもし、お疲れさまッス』


 コール三回で繋がる電話。聴き馴染んだ声――


「もしもし、由姫ぃ? いま、何してる?」


 電話の相手は、小倉由姫。私が鬼怒姫で頭を張っていた時にナンバー2だった娘で、私が引退した後もこの娘とは交流が続いていた。


『えっ、いまッスか? ヒマだから、単車で流して来ようかと思ってたとこッスね』

「ちょうどよかった。ヒマならウチ来なさいよ。一緒にパーッと飲みましょ♪」

『えっ? いいんッスか? てか千歳さん、なんかご機嫌ッスね。いい事でもあったんッスか?』

「ふふふっ、ナイショ♪」


 とか言いながら、話したくてウズウズしてる私。きっと由姫が来たら、聞かれてもいない事までベラベラと話してしまうのだろう。


「そうだっ、あと昔のメンバーで来れそうな娘がいたら、声を掛けてみて」

『来れそうな娘って、なに言ってんッスか……? 千歳さんが集合掛けたらアイツら、彼氏と事の真っ最中でも男ほっぽり出して全裸のままソッコーで駆け付けて来るッスよ』


 いや、それは嬉しいような、まったく嬉しくないような……

 とゆうか、その例えはどうなの? 少し慎みとか恥じらいを持ちなさい。


「そこまで慕ってくれてるのはありがたいけど、流石に全員集合とかしたら近所迷惑だし…………じゃあ、テキトーに三、四人、ノリのいい娘に声掛けてみて」

『了解ッス』

「それから、お金は出すから銀麦と――」


 と、銀麦というワードに、さっきのトモくんとした会話が頭を過ぎった。


 ――だったら、銀麦じゃなくてプレモルぐらい出しやがれ。


 プレモル――プレミアムモルトか……


「いえ、銀麦はヤメ。プレミアムモルトにしましょう」

『えっ? プレモルッスか?』

「そう、プレモルを三箱。それと、この時間なら梅子ん家のお寿司屋は、まだ開いてるわよね。特上寿司を十人前、持ち帰りで作って貰って。あと何か食べたい物があったら、好きに買って来ていいわよ」

『プ、プレモルが三箱……しかも寿司が特上で十人前って……? あの貧乏性で、コンビニ弁当の箸ですら洗って使い回す千歳さんが……明日は雪どころか槍、それもゲイボルグ級の魔槍が降るかも……』


 なにやら失礼な事を言われている気がするけど、私はすっかり舞い上がっていて、怒りなどみじんも湧いてこない。


『ホント、何があったんッスか?』

「だから、ナイショだって。フフフン♪」

『まあ、飲みながら、ゆっくり聞かせて下さい。じゃあ、買い物済ませて、一時間くらいで行くッスから』

「ええ、お願いね」


 電話を切った私は再びスマホのアドレス帳を開き、トモくんのページをタップした。


「えへへへっ♪」

 そしてまた、スマホを胸に抱いて床をゴロゴロと――

「あだっ!?」


 さっきと同じ場所を同じ場所へぶつける私。それでも私の顔は、ニヤけたままだった。


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