表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女漫画に恋をして ~元ヤン達の恋愛模様~  作者: 宇都宮かずし
少女漫画に恋をして ~元ヤン達の恋愛模様~
1/49

プロローグ

挿絵(By みてみん)

「ダメッ! 私には出来ないっ!!」


 放課後の体育館。下校時間も過ぎて人気(ひとけ)の無くなった舞台の上で一人、セパレートのトレーニングウェアを身に着けた佐藤千菜乃(さとうちなの)は悔しさを滲ませ膝を着いた。


 一ヶ月後に迫った、高校生ダンスコンテスト。彼女の所属するチーム『フラッシュ・ガールズ』はこのコンテストに向けて連日特訓に励んでいた。

 しかし、自分のソロパートで躓き、他のメンバーが帰った後も密かに練習を続けていた千菜乃。


 だが、その自主練習にまったくの成果が見えずに焦り、そして自身の不甲斐なさに強く唇を噛み締めた。

 受験を控えた彼女達にとって、今回のコンテストは最後のコンテスト――フラッシュ・ガールズとしての最後の舞台。


 このままでは、私がみんなの足を引っ張ってしまう……


 そう考えれば考えるほど、身体が思うように動いてくれないのだ。


 照明の落ちた体育館に、半照明の薄暗い舞台(ステージ)

 悔しさに溢れた涙で、視界を滲ませる千菜乃。


 そして、その涙が頬をつたい舞台の床に落ちると同時に、丸めた背中にふわりと上着がかけられた。


「千菜乃ちゃん、風引くよ」

「は、萩原くんっ!?」


 振り向いた千菜乃の瞳に飛び込んで来たのは、優しい微笑みを浮かべた同級生、萩原充流(はぎわらみつる)の姿。


 中腰で千菜乃の顔を覗き込む充流――


 その優しい笑顔に、千菜乃の涙は一気に崩壊した。


「萩原くんっ! 私っ、私ねっ! みんなのお荷物になりたくないの。みんなに泣いて欲しくないの……でも、でもね……ダメなの……出来ないの……」


 充流にすがり付くようにして、子供みたいに泣きじゃくる千菜乃。溢れる涙と反比例するように、トーンの下がっていく声――

 充流は彼女と視線を合わせるように片膝を着くと、涙に濡れる顔を自分の胸に抱きしめた。


「大丈夫――大丈夫だよ、千菜乃ちゃん。千菜乃ちゃんは一人じゃない、チームのメンバーが付いているし、みんな千菜乃ちゃんを応援してるから。きっと出来るようになるよ」


 ゆっくりと頭を撫でながら、優しく語りかける充流の声。その声に千菜乃はゆっくりと顔を上げた。


「萩原くんは……?」

「え?」

「萩原くんも――応援してくれるの?」


 涙に濡れた頬を赤らめさせて問う千菜乃。そして、その問いにやはり頬を紅潮させる充流。

 しかし、その不安の色を浮かべる瞳から視線を逸らす事なく、充流はハッキリと言い切った。


「当たり前だろ、応援してる」


 間近で交わる視線、お互いの吐息が届く距離で見つめ合う二人――

「萩原くん……」

「千菜乃ちゃん……」


 ゆっくりと閉じられる千菜乃の瞳。

 それが合図だったかのように、距離を詰めていく互いの唇――


 そして、二つの吐息が交わり一つになっていく……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一ポチお願いしますm(_ _)m
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ