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一話 かませ犬、運命の自覚

お、おひさしぶりです・・・はじめましての方ははじめまして・・・

それは突然のことであった。

齢5歳ぽっちであるこの少年「ゲイル・ヴェイヘレ」は圧倒的な衝撃を頭に感じながら前世の記憶を思い出した。一般的なごくごく普通のありふれた人間として30年生き、そして事故によってあっけなく途絶えた人生のことを。それを自覚した瞬間に彼の脳は悲鳴を上げ、床に倒れた。

「坊ちゃま!?」

そう叫ぶメイド長の声が耳に響く中、彼の意識は途絶えた。が、しかし。

「そうか。これが、僕か。」

その数秒後には彼は「5歳までの自分の人格」と「前世の人格」でのせめぎ合いをおさめ、床に倒れながら己の自我を確立させていた。前世の記憶を持つゲイルという人格を。たった5歳の人格が約30年の記憶を持つ人格に勝利できたのはその人格が人生にすでに疲れきっていたからであるのだが、そんなことは余談である。



そうして無事前世の記憶?を取り戻した少年ゲイルは床から起き上がってメイド長に大丈夫だよと伝えながら気づく。

「これ、もしかしてあのゲームの世界じゃね???」

そして彼自身の人生が詰むことが決まっているということにまで気が回った瞬間彼は絶望感をたっぷりにもう一度気を失った。この未来がまやかしである事を祈りながら。



その二日後。

「父上。もう大丈夫ですよ。」

「うむ。それならばよい。だが、今後はくれぐれも気をつけてくれよ。おぬしは唯一の跡取りなのだから。」

「う、うん。もちろんわかっているよ。」

そう言葉を発しながら彼は部屋から出て行く自分の父親の姿を見ながら嘆息した。

「危なかった・・・」

おそらくこれから自分が生涯通ることになるであろう人生を記しているノートを父に見られるわけには行かなかったからだ。

「ふう。」

そう一息つくとまた自分の人生を思い出し始める。彼こと「ゲイル・ヴェイヘレ」は前世の世界で大ヒットを記録したRPG「DAEMON×DESTRUCTION」の悪徳宰相一家のかませ犬系跡取り息子であったのだ。そのゲーム中での彼の人生を語る前にその設定を話しておこう。DAEMON×DESTRUCTIONこと通称DDの世界では5歳のとき全人類に現れる魔力の量によって全てが決まってしまう。そんな世界で主人公こと「ジーベル・ヴェイヘレ」は5歳で魔力をまったく欠片ほども発現させずヴェイヘレ公爵家の恥さらしとまで言われ公爵領地の凶悪な魔中だけが棲む「魔の森」に棄てられてしまう。が、そのあとなんやかんやあって世界を救うというまあありふれた物語である。つまり僕「ゲイル・ヴェイヘレ」は現在2歳の弟のかませ犬となることが決まっている悲しい男なのである。そのネットでの評判は「才能はある無能」であった。そう。僕は運命によって強くなることが決まっている弟とは違って自分のがんばり次第では逆転できる男かもしれないのだ。ここに気づくまでかかった日数が二日である。あまりの衝撃に最初の一日は「自分は弟に殺される」というおびえと「先手を打って弟を殺す」という考えに支配されていたので実質一日でこの考えにいたれたのは本当に僥倖だとは思う。僕はこんな無常な世界でどうにか生き残って生きたいのだ。なればこそ、努力は惜しむまい。その才能の全てを使い切って強く、強くなってやる。運命の加護を受ける弟に負けないように。そして何よりこの体が「魔神」に奪われることすらないくらいに。

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