第二章 エピローグ 戦争狂の末路
今回はエピローグとなります。最低最悪の戦争中毒者ゲイリーの運命はいかに。
今回の話は残虐な描写が多いです。ご注意下さい。
刑務所の牢獄にて、ある男が悲鳴を聞いていた。
ゲイリー。多民族国家、オズ連合王国の歴史が生んだ『最悪の傭兵』であった。
「死刑は嫌ァァァァァ!」
ニーナの声が刑務所中に響くちょうどその時であった。
「……刑務所のなかなら『出るやり方』があるじゃねえか。あの女も馬鹿だねえ」
不敵な笑顔を浮かべながらニヤニヤと食事をとると刑務官が怒鳴る。
「そこ!無駄話をするな!」
「……へいへい、ご苦労なこって」
不敵な笑顔を浮かべながらゲイリーは刑務官をあしらった。
黙々と食事の時間が続く。
刑務所の食堂の中では囚人達が食事をとっている。
不意にナイフが誰かの腕に刺さる。
「がぁあああ!」
「おい、なんだテメェその態度?」
「おいそこ!なにやっとるか!?」
「なんだテメェ離せ!」
「うるさい!来い!」
刑務官達に引きずられる形で囚人の一人が連れ去られていった。
「……物騒で行けねえなぁ、そう思わねえか?オッサン?」
「……」
「おっと、こっちも物騒な面だぁ……なぁ?」
「……」
ゲイリーの顔を、隣で食事をとる隻眼の囚人が覗き込む。その顔の半分、ちょうど左目の部分に生々しい傷とケロイドの跡が見える。
「なぁ……お前だろ?天使部隊の剣野郎と、真正面からやり合って勝った傭兵ってさぁ?」
「……あ?黙って食えよ」
ゲイリーは邪険にあしらう。
その瞬間であった。
風を切る音。
ゲイリーの目の前にナイフの切っ先が迫る。
しかしゲイリーは冷静にそれをいなし、相手を椅子ごと転倒させる。
すると囚人の何人かがゲイリーのそばから逃げ出した。その代わり図体の大きな男達が一斉にゲイリーを罵る。
「あの世で神に詫びろやぁぁあああ!」
「死ねやぁ裏切り者がぁ!」
「おめえが殺したルチアファミリーのチャールズ兄貴に詫びろやぁ!」
「ずたずたにしてやるぜぇ!俺を嵌めやがって!」
刑務官達も騒ぎを聞きつけやって来る。
「おい、お前ら、そいつ殺すんだろ?手伝うぜ」
「こちとらダチ殺されてんだぜ?喜んで手伝ってやるよ」
大勢の刺客はおろか刑務官すら敵になっている。そんな集団に囲まれてもゲイリーは動じなかった。
「そうか。お前さんたち……ご臨終だ」
ゲイリーはその場にいた刑務官にナイフを突き立てた。
刺す。刺す。そして、頭を刺す。
こめかみに刺さるナイフを突き立てられた刑務官は血を流しながら崩れ落ちた。
十四名の男達がゲイリーに襲う。素手の者。角材で武装した者。ナイフやフォークを持つ者。ペンチを持った者。そして、銃や警棒で武装した刑務官。
圧倒的不利であったはずの状況をゲイリーはいとも簡単に突破した。
1人の殴打をあしらい、角材を持った1人を投げ飛ばす。襲ってきた大男の腹部をゲイリーは刺す。血が溢れ、大男は悶える。
角材を持った男が角材を振り回す。二回。しかし、角材はゲイリーに奪われ、目から後頭部にかけて角材で刺し貫かれることになった。
ペンチ男が得物を振り回す。が、奪われ頭を砕かれる。三人掛かりでゲイリーを襲っても次々と頭を砕かれる事になった。ナイフを持った男からナイフを奪いフォークの男の首をゲイリーは切る。赤い飛沫と滝のような液体が床を汚していった。残りは刑務官だけだ。ナイフを『持っていた』男は降伏のポーズをとったがゲイリーは顔を滅多刺しにして殺した。
「使えねえ囚人どもが!」
そう言った刑務官の手から銃が奪われる。
「な!?」
ゲイリーはにやりと笑うと刑務官の生き残りを射殺していった。
脳漿と血液が机と床に飛び散る。傍観していた囚人達は我先にと逃げ出していった。後に残るのは十四の死体と血液、そしてゲイリーだけだった。
「そんじゃあ、『外出』の時間だ。あばよ」
ゲイリーは刑務官の死体から鍵を奪った。
暗い夜の橋の上、橋は大きいものの行き交う車はない。
拾ったコートを着たゲイリーは夜の橋の上を歩いていった。その向こう側から歩いてくる男がいる。中年の男だ。鍛え抜かれて良い体格をしていたが、酒でぶらぶらであった。
「ゲイリーか。捕まったはずだが?」
「これはこれは……、ずいぶんお久しぶりだなぁ?飲んだくれのジョニーちゃん。また負けて飲んだくれかなぁ?」
「生憎、賭けの最中でね。どっちか、様子を見にいったんだよ。今回は俺の勝ちだな。まあ倍率低いからこんなもんだがな」
「それは、結構なこった。ちなみに賭けのないようは?」
「俺がラッキーな事になるかだ」
「へぇどんなラッキー?」
「伝言を伝えるべき人物にで出会えるラッキーさ」
「……伝言?」
「シャドウから伝言さ。イェーガーにせいぜい気をつけろってさ」
「イ、イェーガーだと?ま、まさか……」
「もし出会ったらゲームオーバー。イェーガーは遊び半分の奴に制裁をしてやるって言ってたっけ。毎回、仕事邪魔されてんじゃあな。怒るのも無理はねぇな……あばよゲイリー」
そう言ってジョニーは機嫌が良さそうな様子でふらふらと帰っていった。
「……あ……ああぁ…………」
ゲイリーは衛星モナに照らされた人物の姿を見た。
モナの月光に照らされ、その男の影を、シルエットを視認することになった。
始めは立っているだけだった。ビルの屋上に立っているだけだった。
しかし、その姿は何かを構えゲイリーに向ける。
その男の距離とゲイリーの距離は一キロ以上あると言うのに。
閃光とともにゲイリーは脳を破損した。ゲイリーの頭部は閃光の矢に射抜かれ大きな穴を空けることになった。
粒子式狙撃銃の音が、夜の橋に響く。
今回もお読みいただきありがとうございます。
次回から新章に入ります。これまでと毛色の違うことにも挑戦していきたいと考えております。




