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蒼穹の女神 ~The man of raven~  作者: 吉田独歩
第七章 ヴィクトリアシティ・ミラクルズ編
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第七章 第五十八話 トリック

この物語は残酷な表現が含まれる事があります。ご注意ください。

町中が戦場となる状況下でマリアとレオハルトは特に良く戦っていた。

マリアの拳闘を中心とした戦闘でドロイドたちを粉砕し、レオハルトもそれに合わせて青い残像となって敵の陣形を完膚なきまでに破壊した。

空からはジョルジョ、粒子機銃と小型榴弾の投下によって敵を撹乱する。それに合わせて、サイトウ、スチェイの二人が息を合わせて攻撃する。

レナとフェリシアの二人も良く戦った。二人の身体能力は人間のそれを凌駕していた。とてつもない反応速度と成人男性を大きく上回る怪力で機械たちを粉砕する。連携も悪くなかった。

だが、それでも戦果はサイトウ・スチェイ組の二人が上だった。

ジョルジョが追い込み、スチェイが自身のメタアクトによる『光の障壁』にて攻撃を凌ぐ、とどめはサイトウが刺した。グレネードと機関銃を交えた激しい攻撃をサイトウは加えた。

銃撃と榴弾の雨、そして洗練された技術と息の合った連携が彼らの戦闘の要であった。

そもそも、単純な戦闘能力だけならレナとフェリシアが上だった。

だが、戦術と技術、洗練された連携によって男三人が彼女たちよりも多くの戦果を上げることになる。

戦況はレオハルトたちが圧倒的に優勢で、警官隊と巡回していた軍人たちも息を吹き返していた。

「……」

だが、レオハルトはどこか疑問を感じていた。

順調すぎることに関して直感的に嫌なものを感じ取っていた。

「……おかしい」

紫電機関。グリーフモーター。

二つの呼び名がある高出力機関の存在が彼の脳裏に執拗によぎる。

そして彼は、マリアに声をかけた。

「マリア」

彼は100機目の敵を破壊した後にそう声をかける。

「……なんか変だよね」

「ああ、マリアも気づいたか?」

「うん。聞き慣れないエンジンを積んでいるのに……弱すぎない?」

レオハルトは自身の違和感の正体に気がついた。

敵が弱すぎる事であった。敵はまるで自身が壊されることを目的に動いているかのような脆弱さであった。もちろん、SIAの人員の練度の高さは言うまでもないが、十分な装備や兵装の無い歩兵や警官に敵が破壊されている様子が明らかに異常だったのだ。

「……」

「ねえ、この際だから聞くけど……」

「どうした?」

「……前にも紫電機関って何?変な法則の凄いエネルギーが出る事はなんとなく分かるけど」

「…………。詳しくは教えられない」

「どうして?」

「軍事機密なんだ。君を危険な目に合わせる」

「もう遭ってるわ」

「そんなレベルじゃない」

「この街が消えるかもしれないのよ。地図から……そうした大勢死んじゃうわ……」

「……そうだな」

「教えて。紫電機関ってなに?」

「……仕方ないか。……これは別名、グリーフモーター。あれはグリーフを……意志を持つエネルギーを放つ放射性物質をエネルギー転換する機関だ」

「意志?グリーフに?」

「……迎撃本能、と表現できる代物だ。生物がもつ自己や自己に近いものを守るものを強めようとする性質がある。生物や物質の性質すら捩じ曲げる未知のエネルギーだ」

「……滅茶苦茶ね。そんな代物だったなんて……」

「そうだとも。流星戦争の比じゃない災厄を起こす事ことも……」

「一体、敵の狙いって……」

「ああ……おそらく……『わざと破壊させること』だろう」

「え!?破壊?物体を守るエネルギーでしょう?」

「ああ、だが、グリーフの眷属と言える生物や物体が攻撃されたり殺傷されたりすればエネルギーはその事象に逆らう動きがある。それがグリーフの最大の特徴だ」

「……でも、そんな作用なか……あ!まさか……」

レオハルトは向かってきた敵の一体から粗悪品の紫電機関を引き抜く。

引き抜いた機関が停止し、一瞬だけ紫と青が混じった電気のような奔流が何処かへと飛び去ってゆく。

グリーフであった。

「そのエネルギーはどこに行ったかだ」

「レオ……敵の予備の策はこの攻撃じゃなくて……」

「攻撃させる事だ。我々にこの兵器を……」

「じゃあ……」

「……シンたちを呼べ。最悪の事態でも、無線で彼らを呼べばまだ対処は間に合う」

「あなたは?」

「……現場に行く」

「現場って?」

「僕の予想が正しければ敵は……アンチコメットの管制施設だ」

そう言い残してレオハルトは閃光になった。地上の流星。群青色の閃光。あるいは青い疾風。自動車の音速に近い速度でレオハルトは地上を駆けた。レオハルトの網膜に様々な景色や色彩が流れ去って行った。

街、道路、渋滞、信号、渋滞、ネオンサイン、ビル群、ネオンサイン、自動車、道路、鉄橋、道路。

島を駆け、鉄橋を駆け、レオハルトは目的地にたどり着いた。防衛の中枢拠点の一つにして、重要な施設。それがアンチコメットの管制施設であった。

レオハルトは急いだ。

詰め所の警備員が殺傷されていたからだった。

探し物はあっさりと見つかった。

グリーフの奔流があるコンテナに流れ込んでいたからだ。

だが、装置の無力化をするには困難な状況にあった。

紫電機関自体が爆弾への転用が出来るうえに、そのエネルギーの性質上人体への悪影響も十分に考えられた。

そもそもグリーフというエネルギーは『エクストラクターの非人道的な商売』を調査する過程で発見されたものであり、『三二七年前の悲劇的な大災害』の最大の原因と目されているものであった。

科学知識に優れ、爆弾の知識もある局員、強いて言えばギュンターが必要だったが、レオハルトがこの場所にいるのを知っているのはマリアくらいであった。

「……この大きさだと海に捨てるのも厳しいな……いや、そもそもそれは無理だな……」

レオハルトはグリーフモーターらしき物体の正体を可能な限り調べた。軍事機密に関わる立場であることが幸いし、大まかな構造を把握する事が出来た。

コンテナの紫電機関は爆弾へと改造されていた。町中の粗悪品を破壊させてグリーフを充填させ、溜まったエネルギーを爆弾へと変換する仕組みとなっていた。

「……敵の真の狙いはやはり地表での破壊工作か。だとすれば、あくまでハイパーコメットはやはりブラフか。流星が気づかれなければ良し。そう出なくてもアンチコメットを機能停止に追いやればなお良し……か」

レオハルトはすぐに対応できる仲間を集める段階に入った。

時間は余り無い。

大掛かりな解体処理をするにしても専門のチームが必要だが、動ける局員は別件の任務で動けず、しかも装置の性質上作業を行なう人員は複数かつ最低限に抑える必要があった。信用できる人間を複数。

最低でも機械の知識のある人物が一人。大掛かりな作業を行なう人員は数人。

しかも敵のドロイド兵たちの攻撃を抑えるべくSIAも正規軍も動ける人員は皆無であった。

「……まて、そうか」

レオハルトはこの日の街の事件に人物を思い返していた。

ヘルズキッチン、マリア、バレッドナイン、ウェルズ、ダニー。

「……そうか」

グリーフに関わる部品に関しては自分が処理するとして、ダニーの協力さえあれば爆弾に関わる部品を解体することが可能であった。

「……マリア、人を集めろ。特にダニーと……警察の危険物処理チームを」

レオハルトは無線で再度そう呼びかけた。







マリア、バレッドナインのジャック、ウェルズ、ダニー。そして爆弾解体の人員が一人。眼鏡をかけた警官だった。

集められた人員はこれだけだった。後は敵の機械兵たちとの戦闘でその場を動けなかった。

「俺たちはどうすればいい。爆弾の解体なんて初めて聞いたぞ」

「君たちには私の指示通りに動いてもらう。これは……ある種の動力機関だ。だが、中身は軍事機密なうえに危険な物質を使う。それ相応の代物である事を分かってほしい」

「アディたちが心配だ。早めにどうにかしたいな」

「逆だ。敵はこれが狙いだ。この装置を無力化すれば街は救われる」

「……話が見えないが、つまり、俺たちは爆弾解体の作業をするってことだろう?」

「そうだ。すまないがいろいろと……」

「この街は好きだ。爆破なんてもってのほかだ。だから手伝う。俺からは以上だ。それにフランク連合の軍に所属もしていた。爆弾の扱いはよく分かる」

ジャックは二つ返事で了承した。

ダニーも意を決したように口を開く。

「……得体の知れない軍用ロボットたちの襲撃の次はこれか……今何時だ?八時二十分かよ。チッ、もうこんな時間か。どうりで腹減ったかと思った。……あー、俺からは以上だ」

「……えっと、つまり?」

「協力する。それ以上でもそれ以下でもない。ウチで一番優秀な爆弾関連に強い若造を連れてきた。これで十分だろう?」

そしてウェルズ。

「力仕事は久々だ。それなりに協力できれば……」

「大丈夫だ。ありがとうウェルズさん」

「まあ、……お互いに大変な一日だったな。英雄殿」

「全くです。大作家殿」

レオハルトと合流できた人員たちは軽妙なやり取りの後、グリーフ爆弾の処理を始めた。

爆弾のタイマーは既に二十分を切り始めていた。

「九時ジャストで爆破かよ……」

「人員も少ない、時間もない、急いで処理しなければ……」

そう言ったときレオハルトは人の気配を感じた。

「誰だ?」

思わずダニーたちも身構える。ダニーに至っては拳銃を向けていた。

「人が少ないと聞いたわ」

「うむ、僕にも聞こえた」

二人の女の子の声が辺りに響く。

一人はヌルであった。ナンバーズだ。

そう言って二つの集団がこっちに向かってくる。

「な!?ナンバーズ!?お前ら警察署内に……」

「出てきた。ツテはあるからな。それにリーダーもゼクスも無事なら脱出は大した問題では無い」

「そういうことで0,2、5、6の面々が君たちをバックアップする。そこのハッカー集団も被害者だそうだ。信頼していい」

ヌルの言葉の後、もう一方のリーダーが手を差し出す。そちらの集団は女の子のみの集団だった。

「私はエレメンツ。『ガールズ&エレメンツ』のリーダーよ。ブルーベレーとも『ベレー』とも呼んで」

「そうか。作業を手伝ってくれるのか?」

「ああ、ただし条件がある」

「なんだ?」

「俺たちはあの裏切り者のアインとドライとは違うと認める事だ」

「……良いだろう。司法に関しては協力しよう」

「感謝する」

そう言ってその場にいた全員が作業に取りかかる。作業は急ピッチで進んだが、彼らはどうにかグリーフ爆弾の危険を取り除く事が出来た。

そしてようやく彼らはラインアークとクリンキットの姿を肉眼で確認できた。爆弾の無力化開始から十五分経った時のことであった。

そこでようやくレオハルトたちは安堵した。

脅威を排除。街に平穏が戻る……。


次回もよろしくお願いします。

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