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蒼穹の女神 ~The man of raven~  作者: 吉田独歩
第七章 ヴィクトリアシティ・ミラクルズ編
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第七章 第五十一話 攻略

この物語は残酷な表現が含まれる事があります。ご注意ください。

警官隊の突入に合わせて、シャドウとダニーは銃を抜いた。

シャドウはベレトM93を構える。流麗で実用的なデザインの銃をシンは手足のように扱う。シャドウの次元の違う練度の高さ対して、やはりダニーは異質なものを見るような視線を向けていた。

「……」

「ぼさっとするな警部補殿。敵地だ」

「お前、何人殺してきた?」

「……そういう警部殿は従軍経験がおありなようで?」

「……まあ、陸軍にいたのは秘密でも何でもねえよ」

「なら武器は使えるな」

「俺は警官だ。身を守る程度だ」

「承知した」

警官隊、SWATチーム、彼らが建物内周辺をくまなく捜索する。シャドウとダニーは敵の気配に注意を向け始めた時だった。

ビッグフロッグの声が建物内に響く。館内放送であった。

「招かれざるお客人ども、ビッグフロッグの領域へようこそ」

貴族のように気取った男の口調から憤怒の色がはっきりと現れていた。

口調こそはまだ理性が保たれていたが、明らかに殺気立った様子でもあったことがダニーにもシャドウにも感じ取れていた。

ギャングたちが機銃を構えながら物陰から現れる。古い型の火薬式機関銃であった。再興歴以前の銃器でギャングが警官隊らを迎撃した。

シンが隠し持っていた羽根手裏剣を投擲する。

鋭い風切り音と共にギャングたちが羽根型の物体に傷つけられる。

致命傷にはなり得なかった。ギャングたちは構わず銃を向けようとした。

だが、彼らが突如に痙攣を始めた。びくびくと痙攣した後、彼らはその場に倒れ伏した。

「なんてもの使いやがる……」

「命に関わるものではないから安心するといい」

「そういう問題かよ……」

目を白黒させるダニーとは対照的にシンは事務仕事を手早くこなすようにギャングたちを精密に処理して行った。ギャングたちは羽根手裏剣に仕込まれた神経毒で地に伏すかか、腕や鼻の骨を砕かれて地に伏す事になった。麻痺毒は軽度のものであるが、敵をしばらく無力化する分には十分な効果があった。

「確保!」

SWATチームと制服警官がギャングどもに手錠をつけて行く。彼らの護送を任せ、ダニーとシン、そしてアッカーマンを含める何名かの警官が上へ上へと歩を進めて行く。

「待て」

カラスの男が不意にダニーたちを止めた。

そして、その場から進行方向の通路に向かって羽根手裏剣を投げた。

羽根手裏剣に向かって四方からレーザーカッターが発射され、羽根手裏剣はバラバラな金属片へと変わっていった。

「……マジか……」

「アラクネに感謝だ」

そう言ってシャドウは耳元の小型無先端末を指で叩いた。

「キザな奴め」

ダニーがそう言って顔をしかめた。ダニーは元々、気障な口調や態度の人物を好まなかったが、シャドウというある種グレーな人物に言われる事でより一層からかわれるような気分に陥っていた。

「そう苛立つな。今アラクネに無力化を頼んで……もう終わったか」

そう言ってシャドウは通路に歩を進めた。唐突なシャドウの行動にダニーがギョッと青ざめた顔で驚愕する。

「うぉ!?おい!」

だがシャドウにレーザーカッターは照射されなかった。

「システムを無力化してある。アラクネのハッキング技術にまた感謝だ」

「……な、なるほどな……」

デジタルな手段が使えない以上敵は別の手段に打って出るのは明白であった。

物陰に隠れていた敵が何人か銃器で応戦したが、前のように麻痺毒を仕込んだ羽根手裏剣で無力化されるだけだった。

「お前……その刃物といい毒といい……一体どこに……」

「プロテクターに隠してある。どうやってかは秘密だ」

「そうじゃない。それだけの装備は」

「それこそ秘密だ。悪いな」

「……ギャングどもをしょっぴいたら、次はお前だからな」

「自分や家族などの身を守る権利は共和国憲法で保証されている」

「だろうな。続きは署で聞いてやる。バレッドナイン所属の謎の男の正体が楽しみだ。なんでアラカワはこんな変人を雇ったんやら……」

「無駄口は後だ。ビッグフロッグを確保するまで油断するな」

「こっちの台詞だ。カラス野郎」

そう言ってシャドウたちは大きな扉の前にたどり着いた。階段や罠のあった通路や敵の襲撃でやや疲弊はしていたが、罠をアラクネのハッキングで無力化したお陰でダニーの予想よりもスムーズな行軍となった。

二人は大きな両開きのドアを慎重に開けてから周囲を警戒した。

部屋の中央には高級そうな大きめの円卓が、奥には玉座のように大きく立派な椅子があった。幹部が座るであろういくつかの椅子と比べて装飾が立派であったのですぐにビッグフロッグの座るものと理解できた。

無人。

ダニーたちの脳裏にその言葉がよぎった。

ダニー、アッカーマン、そしてアッカーマンの同僚が三人、シャドウ、SWATチームの隊員が二人。部屋の中に入り込む。罠や不意打ちに考慮し彼らは上下左右に注意を向けていた。

「……」

「どうした?」

「下手なかくれんぼ……いや、前座か」

そう言ってシャドウがある方向に向かって腕を伸ばした。風切り音と共に天幕の一部が剥がれ落ちた。羽根手裏剣の刃でワイヤーが切断され、天幕で隠されたものが露になる。隠し部屋だった強化ガラスで隔たれた部屋の中には恰幅の良いカエル顔の大男とライコフクローンが二人立っていた。

大男はビッグフロッグだとすぐにダニーたちは理解できた。大男はワインを飲みながらマイク越しに言葉を発した。部屋に隠された拡声器から音が響く。

「ぬふふ……ようこそ警察の諸君……とシャドウ……」

「ビッグフロッグ殿、ご機嫌はいかがかな?」

「シャドウ、この街は想定外が多すぎるな……狂った料理人軍団に変な女にユダのラインアークときたものだ……ユダだぞ!?ユダ!よもや正義狂いの改造人間どもがどうしてこのヴィクトリアに!?AGUの、外国の特務機関のはずだろう!?」

「日頃の行いだな。ついでにホソカワなどと手を組んだのが運の尽きということだ」

「黙れ!厄介者の凶鳥が!お前のせいで国の再興が遠のいたぞ!」

「俺のせいではない。この街に嫌われているのはアンタの方だということだ」

「ぐぐぐ……言わせておけば」

「これが取り柄でね。怒らせてこれを乱せ」

「くく……」

「?」

「その減らず口も今日までだとすれば、せいせいするわ!!本来なら『流星』のおまけみたいなものだが……ノブにもたらされた『紫電機関』。それを使った最強の用心棒で先に始末してくれるわ!」

「…………典型的な小物の台詞だな」

「ああ、ビッグフロッグも落ちたものだ」

奥の絵画の一つ、隠し扉から何者かの姿が現れた。

それは電流のような蒼いエネルギーの奔流を放ちながらシンたちのそばに向かってきた。

「……祖国再興…………アスガルド……敵国……首都破壊……任務……カイシセヨ……カイシセヨ……」

ぶつぶつと何かを喋りながら、甲冑のような出で立ちの屈強な大男がゆっくりとダニーたちに近づいてきた。

「退避!退避だ!!」

そう言ってダニーたちはその場から逃げ出そうとする。だがシンは逆に迎撃態勢を整えていた。

「シャドウ!?紫電機関はまずい!一度引け!」

「問題ない。俺は絶縁体質だ」

「なに?絶縁?」

「問題ないってことだ。お前たちは引け。あの肥満体が逃げないようにしておけ」

「……ちっ、格好つけといて死ぬなよ!?」

ダニーや警官たちはその場からさっさと逃げ出した。

「……カラス……シャドウ……破壊スル……破壊スル……」

「……タカオ兄貴にいい土産話が出来そうだ。……さて、じっくり念入りに……潰してやろう」

大男は蒼い火花を放ちながら突進する。それは猛牛のような迫力があり、それでいて眼はしっかりとシャドウの動きを捉えていた。シンはフェイントを交えて回避したおかげでその即死級の攻撃を避ける事が出来た。だがその代償に、ビッグフロッグの邸宅に巨大な大穴が空く事になった。

「オォォォォォォオオ!!」

大男が闇夜に吠えた。

ビッグフロッグの制御がなされていたはずだが、それは意味をなさなかった。

首魁の目的は街の破壊。古き因縁の代償を共和国一の大都市に払わせることにあった。

警官隊とSWATが銃を撃つ。

機関銃や拳銃から粒子の弾丸が放たれた。が、甲冑のような狂戦士に届く前に弾丸は霧散した。グリーフフォースの力の一端であった。

「退避!退避!」

甲冑がパトカーを踏みつけ念入りに破壊する。サイレンの音が歪に歪み、フロントガラスが無残に破損する。パトカーにグリーフのエネルギーが流れ込みエンジン内部で形作られた結晶が車体をずたずたにした。電気が結晶にながれ四方で爆発する。

甲冑男はどういうわけか無傷だった。

不意に甲冑男の左肩に何かが刺さっていた。

羽根手裏剣。それも炸裂弾が仕込まれていた。

爆煙と衝撃。

車一台を吹き飛ばす程の衝撃と熱が敵を覆った。

「まあ……これで倒れるとは思わねえが」

シャドウの言葉は的を射たものであった。

事実、甲冑男は健在でシャドウのほうに突進してきた。

甲冑は何かを投げ飛ばす。手槍のような蒼い光はシャドウ以外には視認できていなかった。シンはジグザグに移動して甲冑男の背後にまで回り込んだ。そしてその背中を登るようにして至近距離から粒子拳銃を首元に浴びせる。さすがに手傷を負わせたが致命傷にはならない。血の一滴も彼からは流れる事はなかった。

「…………まさか」

AIの設計したアレックの企業。

カズの抹殺未遂。

そして紫電機関。

出血をしない敵。

シンの中で敵の正体が繋がりつつあった。

「……こいつ……」

制御された機械。甲冑の正体はアナクロな低性能ドローンであった。ただし、出力は元々重機並みな上に紫電機関で底上げされた戦闘能力はもはや戦闘車両や旧式のAF並みに引き上げられていた。

「やっぱここか。手伝うか?」

「……ハヤタか」

ハヤタがその場に『転送』した。

「まさか、いつの間に抜け出すとはな……」

「お前らが鈍すぎるんだよ」

「そんなこと言ってると助けないぞ」

「助けは要らない」

「やれやれ、そんな事言っている場合か」

ユダがハヤタに駆けつける。

「さて、我々の仕事を果たすとしよう」

モリの尊大な言葉に合わせてユダの面々が態勢を整える。

「私たちも忘れてない?モリ室長?」

ユキの声と共にバレッドナインもその場に駆けつける。

二つの大軍勢が一つの破壊兵器を睨みつける。

その陣頭には二人の男がいた。

コウイチ・ハヤタとシン・アラカワ。

白と黒。

現人神と黒衣の男。

大義に生きる鉄心の若者と信念に生きる鴉の騎士。

街を揺るがす敵を二人の男が迎え撃つ。

呉越同舟。ハヤタとシン。共通の敵を倒すため、敢えてタッグを組む!!


次回もよろしくお願いします

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