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蒼穹の女神 ~The man of raven~  作者: 吉田独歩
第六章 解放戦争編
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第六章 四十八話 首都攻略戦・異常あり、その六

この物語は残酷な表現が含まれる事があります。ご注意ください

四台のフロンティア級兵員輸送車がホバーモードに移行する。

エナジー障壁の出力が上がり、外部に取り付けてある火器が警戒モードで駆動する。車両の周辺に目に見える光の壁が展開される。

後方から指揮を執るマサタカとレオハルトが浮遊する輸送車の様子をじっと見守っていた。

「幸運を……チャールズ・A・スペンサー大佐」

ブラックライダー号。突入部隊の指揮を執っているスペンサーに対してレオハルトは激励を行なった。

「そちらも後ろは頼みますよ。外部に特殊グリーフ生物……分かりやすく言えば『下級魔獣』でしたね。外の様子によってはそっちも危険ですからね」

「ああ、気をつける。そっちは特に気をつけろ。連携が勝負の鍵だ」

「大丈夫です。はぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、異端児の相手は普段から慣れていますので。……私もそうですし」

「それでこそSIAだ。多様な人材の居る我々にしか出来ない事があるからな」

「否定しませんよ。それで生きてきたようなものですから。……それにしても、他の軍との連携ですか……なかなか難儀しそうです」

「指揮官の立場として言っておく、友軍に後ろから撃つメリットはない。スパイでもなければな」

「了解だ」

「健闘を祈る」

レオハルトは通信を切断し、敬礼をした。

マサタカもユダの乗っている一台に敬礼を行なった。

ホワイトライダー。

ブラックライダー。

レットライダー。

ペイルライダー。

四台の車両が異空間への突入を完了した。






四台の兵員輸送車が降り立った先は外で見るよりもメルヘンな空間であった。

見た事のないぬいぐるみやビスク・ドールのような生物。絵の具を塗りたぐったような地面と空。アイビスタン王城の元々あったインテリアと別の内蔵が融合したような物体。浮遊する絵画は派手な色に変わったかと思えば内蔵のようなグロテスクな模様にも変化する。

四台の車両が降り立ったのは王城周辺の比較的広い空間であった。

浮遊モードを停止し、エナジー障壁の出力が上がる。

車両の後方からハッチが開き多国籍軍の兵たちと指揮官が降り立った。

庭の地形と城内部の突入には徒歩での移動が必須だった。

「……面妖な」

ジル・ベフトン騎士団長が目の前の異様な空間に呆気をとられていた。西洋甲冑型の強化外骨格をつけていた。

「今回もひでえな」

サイトウ・コウジが粒子式の機関銃を構え辺りを見渡した。顔をガスマスクに似た装置で保護していた。頭には迷彩柄バンダナ、首から下は歩兵用の黒い強化外骨格で覆われていた。

「慣れねえな……この空間は」

「ジョルジョ。お前だって俺と経験はほぼ一緒だろう」

「サイトウ。俺は女の子が犠牲になる展開は嫌いなんだよ」

「俺だってそうだ。だがよ。誰かが弔い合戦してやらないとな」

「……そうだな」

強化外骨格背面のバックパックの様子を確認しながらジョルジョは不機嫌そうな声色で返答した。顔はパワードスーツで覆われ、表情は伺えないが明らかに不機嫌そうな顔をしていた。

「友軍の皆さん。この空間は一時も油断できないので気をつけてください。あらゆる物体、生物が敵です」

ぬいぐるみのような生物に警戒しながらスチュワート・メイスン大尉がアサルトカービンを構える。彼はメタアクターなので軽量なプロテクターのみを着用していた。メタアクター用で特殊な金属で構成されていた。

「……こうして肩を並べるのは久しぶりだな。サイトウ」

「やはり大暴れだったな。戦友」

シンことシャドウはワタリガラスを模したような漆黒の強化外骨格を纏っている。顔の下半分だけでなく目の辺りもシャープなフォルムのゴーグルが着用されていた。

ユキはそれとは対照的に白いアーマーを着用している。背中には蜘蛛の足のような補助腕が取り付けられていた。漆黒の瞳と長く黒い髪だけが外に出ている。

人造人間で特殊なナノマシンを服用してあるユキの場合は通常の出で立ちでも活動は可能だが、集団戦や強敵との戦闘を考え、戦闘に適した装備を揃えてあった。

「俺もいる。いつでも援護可能だ」

気配はないが、声はする。

ハッチの方から狙撃手らしき男が現れた。

アルベルト・イェーガーが電磁加速式徹甲ライフル銃を抱えて現れる。顔はカメレオンのようなマスクで覆われていた。ズームレンズが取り付けてあった。

「期待してるぜ。イェーガー」

「何を今更」

「お前が居ると敵が総崩れになるからな」

「当然だ。仕事だからな」

イェーガーは淡々とサイトウに返事をする。

「指揮官のアディル上級大将とモリ室長というのは?」

サイトウが聞くと、イェーガーは黙ってある箇所を指差した。

二人の男が向かってくる。

一人は筋骨隆々のオズ系ヒューマンらしき男、巨大な斧と機関銃を組み合わせたような武器を所持していた。

もう一人は高そうな背広のアズマ人。アズマ人にしては長身で、顔はガスマスク型装置で覆われていない。『神の剣』の乗り手は特殊なナノマシンによってメタアクターと同様の効果を体に宿していた。彼の腰にはアズマの刀剣、大太刀がぶら下がっていた。

「周辺の警護は万全そうだな!SIAの諸君!」

「はい、AFが交代で周辺を見ています」

アディルにアンジェラ曹長が返答した。アンジェラのそばにはレイチェルもいる。

「おお!それは大丈夫そうだな!」

キャリー・カリストの赤い機体が周辺を見渡していた。機体は腕を壊されたため戦闘が休止した時に取り替えられていた。キャリー機はブラックライダー号を中心に辺りを警戒している。

「へえ。アンタがモリか。ちょっとツラ貸せ」

「……いきなり喧嘩越しか。力の使い方がなってないな」

「うるせえ。お前とハヤタとドウミョウのせいでマリンちゃんが死にかけたんだろうが。俺はベッピンさんが酷い目に合うのが嫌いなんでな。いいからツラ貸せ」

「ほう、なら真正の暴力を教えてやろう。ミスター軟派男」

「へえ、見てみたいねえ……こっちは味方死んでるんでな……調子に乗ると舌と歯がどうなっても知らないぜ?」

「口だけは回るようだな?」

「硬派ぶってると後で泣きを見るぜ?」

モリが大太刀の鯉口を切った。

ジョルジョもアーマーに付いた武装の安全装置を切ってある。

SIAの面々も止めようとしているが、二人の殺気の強さに手が出せずにいた。

文字通り一触即発だった。

「それまで!やめないか!!!」

「いい加減にしろ馬鹿ども!!」

アディルの怒鳴り声に合わせ、乱入する男の姿があった。

アラカワ・タカオ教授。

背広姿、マスク型装置なし、黒い手袋着用、モリと違いそれほど背は高くないが凄まじい殺気を放っていた。

威風堂々とした戦神が降臨するようにしばし浮遊した後、二人のそばに降り立った。

「……モリ、これはどういうことだ?」

あまりの殺気にハヤタがその場に転移する。ラインアークの機能の応用だ。

「な、なんだ?敵襲か!?……え?」

ドウミョウやミシマも泡を食ったようにその場に駆けつけたほどだった。

「身に降り掛かる火の粉を払おうとしたまでです」

「払うのは敵の攻撃だけにしておけ馬鹿が」

「申し訳ありません。タカオの兄さん」

「おい、そこの金髪、お前もだ」

「は……はい……」

モリが甲斐甲斐しく頭を下げるのとは対照的に、タカオの殺気に慣れていないジョルジョは歯をガチガチと鳴らしていた。

「……格が違うな」

「当然だ」

サイトウの唖然とした言葉にシャドウが頷いて前に出た。

「シャドウか」

「よろしく頼む」

「ああ……」

しんみりとした空気を壊したのはアディルだった。

「うむ!協力に感謝するぞ!」

「……上級大将」

「お、どうしたのだ?」

「い、いや。やめておこう」

「うむ!一件落着!!」

色々と豪快なアディルに、タカオもどこか困惑した様子であった。







城内に入ると赤い絨毯と絵画、銅像が設置されていた。

いかにも王族か独裁者の住む宮中といった様子であったが、上品さはなく飾り付けられていた装飾品で一杯であった。

黄金、宝玉、彫刻。

それらは自らの住まいを極彩色と光輝で満たそうとする強欲と自己顕示が辺りから存分に見て取れた。

これだけなら、特に違和感はない。

外が異常である事を除けば多国籍軍の面々が警戒する要素は皆無であったはずだった。

似つかわしくないものが他に存在する。

肉片。

脈動。

鮮血。

絢爛な王城に似つかわしくない人間の形跡がそこに存在していた。

「○×□……げごぐぎゃ……ががががぎぎゃ……」

「おげ…………げげぎゃ……がぎゃ……」

肉片が言葉ですらない音の羅列を人間の声域で発していた。

「……これで驚いていたら、怒りで狂うぞ?前を……チッ」

「サイトウ?どうした?」

「……いる」

「お前も気付いたか。イェーガー」

イェーガーが狙撃銃を構えるのに合わせ、サイトウが持っていた銃を足音の方に向けた。

「当然だ。……いかにも大勢で来ますって音だな」

「来るぞ!警戒しろ!」

全員が正面に警戒する。足音は赤い鎧の群れとなって目の前に現れた。

「祖国は偉大なり!」

「鮮血は忠誠の印なり!」

「祖国の敵は我らの敵!」

赤い出で立ちの兵士が一斉に銃剣を構える。着剣した小銃が一斉に火を噴いた。火薬式の銃のために強烈な銃声が辺りに響く。

火薬の破裂音と共に放たれる一斉射撃は敵に恐怖を与える筈だった。

「……うん、相手が悪かったね」

大盾を構えたジルとスチェイが前に出る。

スチェイが片腕を眼前に差し出すと光の粒子で出来た壁が形成される。高速で飛来した弾丸は光の壁に遮られ運動エネルギーを失った。まるで硬質な壁に阻まれたように衝突しその真下に落下した。

スチュワート・メイスンのメタアクト。『実体をもつ光の生成』であった。

スチェイが腕に力を込めると壁が滑るように前へと押し出され眼前の敵を吹き飛ばした。

「これなら正規軍のドローン兵も必要ないな」

「いや……ここまでやろう」

サイトウがホルスターから粒子式拳銃を取り出すと容赦なく倒れた敵兵の頭を撃ち抜く。

「何してる!」

ドウミョウが怒鳴るがサイトウは気にせず敵全員の頭を撃ち抜いた。

「これで安全を……いや、増援か」

鮮血騎士団が重機関銃を持ち出すのをサイトウは確認した。

スチェイが動く防壁を作り、SIAとユダが身を隠しながら前進した。

鮮血騎士団、前進。アディルは?ユダは?戦場は更なる混沌へ


今年もよろしくお願いします。

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