固有魔法
相手の初手を受けることは無い。
何の魔法を使うかわからない状況で、俺が出来ることは…
ーーー 先手必勝だ!!
「|巨人の手《ハンド・オブ・ギガント 》!」
俺は素早く魔法を展開する。
すると、ヴェルツンの足元を中心にして大きな魔法陣ができる。
その魔法陣からは巨大な腕が4本…ヴェルツンを囲むように現れる。
だが…
「なぁ、キアン…自慢していいぜ?俺にこの魔法使わせるなんて滅多にないことなんだからよ!」
「ふんっやれるもんなら、耐えてみやがれ!」
そう言うと同時に、4つの手は拳を作ってヴェルツンめがけて攻撃をする。
手が動いた時、ヴェルツンのオーラは紫色へと変わったのが見えた。
そして…
『吸収!』
4本の巨大な腕はヴェルツンに届くことは無かった。
そして、何事もなかったかのように俺の魔法は消えた。
「ッ!まじかよ…」
ーーー してやられた…何をしたか分からんが、魔法が消えた?
「………何をした?」
この今起きている訳の分からない現象は聞くしかない。そう思い聞いてみた。
答えが返ってくるとは思わないが…
「あ?あー…これね。こりゃあれだ、吸収したんだ。引き寄せて自分の魔力に転換したんだ。これは誰にも真似できねぇ俺だけの魔法。知ってるだろ?固有魔法ってやつさ」
答え返ってきました。こいつバカなの?いや、馬鹿か。普通言いますか?自分の手を晒すなんてあり得ないだろ…
それとも、余程自信があるか…
だがそれより、固有魔法なんてあるとは知らなかったが…
「なるほど…お前の魔法は、つまりは『吸収』に特化した魔法ってことか?」
そう。知ったかぶりである。
俺は負けず嫌いな部分は少々ある、だからこそこいつより馬鹿とは思われたくはない!だからこそ、とっておきの知ったかぶりをするのだ!
ふふっ俺は馬鹿に馬鹿と言われるのだけは御免だ。
しかもあのツンツンにだけは馬鹿にされたくない!そして…あいつだけには何故か喧嘩でも負けたくない。
そう思ったりしていると、ヴェルツンが話す。
「そうだな…まぁ7~8割程度は正解だぜ。だから言っておく!俺に魔法は通じねぇ!!」
「チッ…クソめんどくせぇ野郎だな!!」
何故だ?何故、楽しんでいる?
これまでの喧嘩で楽しいなんて思ったこと1度も無い。戦い方「魔法」が加わったからだろうか?
確かに魔法を駆使して戦う事は新鮮で楽しいとも思う…だが、それとは違う。
ーーー ……俺は今コイツと戦っている事が、その事自体が嬉しく、そして楽しいのか…
今…目の前で起こる現象が
今…相手の拳が
今…俺の拳が
今…相手の魔法が
今……!!!!
「「ハァハァハァ…」」
二人は、肩で息をする。
それ程までに二人の戦いは凄まじいものだった。
ヴェルツンの固有魔法である「吸収」は魔法だけでなく、認識したもの全てを吸い寄せる。その吸い寄せたモノを体内へ収める事ができる魔法。
ただ、体内へ収めることができるのは、魔法だけらしい。戦ってみて俺の拳や、崩れた壁などは吸い寄せることしかしなかった。
そのことが分かったのは戦い始めて数分…
かなり時間をかけてしまった…と言うより、ヴェルツンの魔法の使い方が上手かったのだ。
俺は1つ思った。
戦いの最中、見様見真似で固有魔法である吸収を使おうとしたが…
『おい、いくらお前でも固有魔法は真似できねぇよ』
と、言われてしまったのだ。
全属性に適応していると言っても、固有魔法までには及んでいない。
故に思ったのだ。
今後戦う相手に固有魔法の使い手がいたとしたら…と。
実に厄介だ…
そんな事を思っていると、一瞬の隙をつかれたのか
「吸収!」
魔法発動と同時に、俺の身体が見えぬ何かに引っ張られる。
それは徐々に強くなっていきヴェルツンへ身体が吸い寄せられる。
ーーー やっべ!
「吸収した分、全部返してやるよ!『黒き鬼の手』!!」
ヴェルツンの右腕は真っ黒でそれでも輝いている。
拳を作り、タイミングを合わせるように殴りかかってくる。
どうすることも…できねぇ…
ッズン!!!!!
俺はそこからの記憶を覚えていない。




