ボーダー
外が明るい。
目を覚まし周りを見渡すと、時計が目に入る。時刻は…うん。まだ大丈夫そうだ。
ご飯を食べ、服や髪を整えまた家から出る。
登校の時間だ。
今日も坂を登り学園へと向かう。
しかしどこか違和感を感じる。
いつもと変わらないはずなのに。
どこか、…。
どこか違っている。
何か違和感はある。でもそれが何なのか自分では気づけない。いや気づかない。
朝のSHRが始まる。いつもあるはずのものが足りない。何が足りないのか…それがわからない。違和感は増してゆく。
僕は教室を出る。違和感の正体を……。
頭がボーっとしている。さっきまで何かを考えていた気がする。僕はどうして廊下に立っているのだろう。少し考えてみるが何も思いつかない。頭の中がもやもやしている。
何か雲がかかっているみたいに、何かを探している。みたいだ。
感覚は探している。そう思えている。
でも、どこかそれは違っているようにも感じる。
どこか他人事みたいなんだ。
頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。
これ以上は…。頭を整理するために一旦忘れることにした。
そのまま授業は始まってゆく。
何も変わらない日常。
でも何かが足りない日常。
違和感の正体を見つけれず、また1日がすぎていく。
再び、登校。
今日はまたいつもと変わらない1日だ。
日付は6月14日。特に何かがあるわけでもない。いつも通り学園の門をくぐる。
SHRが始まる。
先生の話を聞くだけだ。
その後は授業。
そして昼休み。
また授業。
そして放課後。
ああ、また1日が終わる。
今日も外は明るい。
時計の針はまだ大丈夫そうだ。
ご飯を食べ、髪と服装を整え、学園へ向かう。
今日の日付は6月14日。うん、いつも通りだ。
いつも通り…だ。
また。違和感を感じた。少し…少しおかしい。何かがおかしい。何なんだ。これは。
頭が痛くなる。
「ッ」少し額に汗をかいているみたいだ。
違和感はどんどん増してゆく。
汗もどんどんでてくる。嫌な感じだ。
いつもならここで…
「ッ!?」
何かが。何かが頭の中で再生された。
ザーッという砂嵐みたいな音。
顔にモヤがかかったみたいな映像。
その日も6月14日。
今日のことのはずなのに。なぜか懐かしい。
”今日のこと”?
どういうことだ??
まだ、僕は学園についていない。なのに。学園での思い出が再生されている。
なんだ、なんなんだこれは。
『存在ごと消される』
「ッ」声にならない何かを発してうづくまる。
これは何だ?
僕は一体どうしてしまったんだ?
あの声は誰だ?
なぜ、僕に親しげなんだ?
疑問が疑問を呼ぶ。
何も思いだせない。でも、懐かしさ…それだけは感じれた。
学園につく。
すると、唐突に吐き気が襲う。
「うっ」気持ち悪い。この学園そのものが気持ち悪い。
何かを探している。そんな思いがひろがってゆく。
頭の中が再びぐちゃぐちゃになり、門の前で倒れそうになる。
ッ…
誰かが僕を運んだ。
誰だかわからないけど、教室ではない。保健室でもない。ここはどこだ?どこなんだ?
不安が僕を包み込む。
辺りには何もなく、ただ石でできたまるで牢屋みたいな部屋。拷問部屋とでもいえばいいのか?牢獄とでもいえばいいのか?どちらでも正解しそうな、暗く薄汚れた石の壁たち。すごく、息苦しい。はやく、ここからだしてほしい。
そんなことを考えていると、誰かの足音が聞こえた。
カツカツ…カツカツ…カツ。
僕の目の前で止まる。誰だ?
見えてるはずなのによくわからない。服装や体型的に男なのはわかった。だが他がわからない。
この部屋の暗さがそうさせているのだろうか。
僕は顔を見上げ、誰だ?と叫ぶ。
僕を見ている男は声を上げる。
「ふっ。まだ気づかないか?お前はなかなかのクズだな」
いきなりクズ呼ばわりされた。だが、何のことか全くわからない。目も暗さに慣れたのか少しずつ顔が見えてくる。
その男は、学園の誰とも合わない服装だった。
学園のモノではないみたいだ。服装もどこか常人とは違うみたいだ。
黒と紫がかったローブみたいなものを着ている。首には変なアクセサリー。よくわからないが、この街にいたらすぐに見つけれるほどの目立つ格好をしていた。
「お前は何も感じないのか?」
ローブの男は話す。
何をっ!と言い返そうと思ったが最近の違和感…それのことについてだと直感で思った。
だが、ローブの男に話すのは躊躇われた。
ローブの男は続ける。
「この現実に気づかないのか…」
現実?仮想?この男は何を言っているんだ?僕は何を聞かれている!?
何も感じないのか…その言葉が頭の中で再生される。
何も感じないのか…何も感じないのか。
何だ?感じていることを素直にいえばいいのか?
でも何でだ。僕はこの男には言ってはいけないとそう思うんだ。頭の中の何かが警鐘を鳴らす。だめだ。この男にだけは。
するとローブの男は
「ふっ。わたしの見込違いか…。忘れろ」
僕の視界が閉じてゆく。