ヘ
白色の四角い巨大ジッパー。またの名を病院。
その一角で私は迷っていた。目の前に立ちはだかるは重厚な扉。
ノックして、彼女に会うだけ。
それだけのはずなのだが、なぜかこう、緊張で身体が強ばる。
三〇七号室の威圧感が凄まじい。
扉をくぐれば彼女がいるというのに。
・・・ええい、当たってブロークンだ。
迷いを振り切ってノックする。
「失礼します。」
扉を開いた。
中は思いの外開放的な、明るい部屋だった。
ベッドは一つだけ。それは彼女のものだ。
簑河垂水。植物状態にある【超能力者】である。
胸の高鳴りが抑えられない。
すぐそこに、手の届く距離に、超能力者が・・・。
「・・・ウフフ・・・ッン☆」
身悶えしてしまうほど、私は高揚していた。
「簑河さァん・・・、こんにちわァァッ☆
私ィ、日扇夜月、と申しまぁす☆
貴女の話、訊かせて頂戴・・・☆」
その頃、日扇研究所で、【超能力】研究は着々と進んでいた。
「・・・やはり、そうなのか。」
彼、日扇夢路は独り、その核心に迫りつつあったのだった・・・。
「もしこれが本当なら、世界を、私が変えられる・・・!!」
おもむろに夢路は、顕微鏡の横に立ててある写真を見た。そこには夢路と夜月、そしてもう一人の女性の姿が・・・。
「・・・お前を、連れて帰るんだ・・・。」