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今回の舞台は札幌です。
札幌に着いた時には、夜中だった。
だが、私にとってそんなことは障壁になりもしない。
見える。それだけで大丈夫なのだから。
私はどうやら、【超能力者】のみを見る事が出来る、いわば「限定的な【千里眼】」を手にしたらしかった。
実に望み通り、思わず喜びの歌を口ずさんでしまう。
「ふろーいでーしぇーねーるげってーるふーんけーんとーほてーりあうすえーりーじうーむ!
びーるべーとれーてーんふぉーいえーるとぅるーんけーんひーむりーしぇーだいんはーいりひとぅむ!!
だーうねーつぁーべーるびんでんびーでーる!
ばーすてぃーもーでーしゅとれんげーたいると!
あーるれーめんしぇんふっふんふーふんふーふふーふーふーふーふふーん・・・☆」
最後の辺りを適当に鼻唄で補完して、スキップを続けていく。
しばらく歩いて、たどり着いたのはある一軒家。
「ここが、能力者さんの家・・・☆」
表札は読めなかったのだが、そんなことも最早どうでもよかった。
能力者と話して、理解したい。
その気持ちばかりが先回りしていたのだ。
インターホンを鳴らす。
無論、返事はない。
時間が時間だ、仕方ないだろう。
「・・・どちら様でしょうか?」
・・・と思ったら、誰かの声が。
「夜分遅く申し訳ございません。私、埼玉の方から・・・・・・」
身の上と事情を説明すると、その人は家の中に入れてくれた。なんて心優しい。
「【ミノガワ】って読むんですよ。苗字」
「やっぱり、ばれてましたか。」
親切ではある。だが、少し無用心ではなかろうか?この家、二階建ての割に人の気配や生活感がまるでない。
「私の父、運転業なんで出勤早いんです。」
「はぁ。そりゃまた大変ですね。」
やはり、相手のこの女性は私が何を考えているか、まるまる分かるらしい。
「唐突ですが、貴女は超能力者か何かですか?」
「・・・フフッ。違いますよ?」
本当に違うのか?と疑いもしたが、彼女はどうも嘘はついていなかった。
彼女がもし超能力者ならば、私の眼が逃さない。
だとすれば、この家で超能力者は・・・?
「・・・娘さん、いらっしゃいますね?」
「何で分かったんです?」
「勘、とでも言っておきましょう。」
「確かに居ますよ。ですが、今は病院にいます。」
そうか、と思った。能力が露見して、病院送りになってしまったか、と。
「事故に遭って、植物状態に・・・。」
え、と意表を突かれる。
「あの娘、読書が好きで。苛められていたのに、気づいてあげられなくて・・・・・・。」
私はそのあと精神的にぐらついた母親をなだめ、娘の垂水さんのもとへと向かった。
だが、それはある意味運命だったのかも知れない。
私は垂水さんにとって、垂水さんは私にとって、お互いに必要な人間だったのだから・・・。