アイネクライネ・リーベストランク
気が付くと僕は暗い箱の中でキャラメルとして店の一画に置かれていた。僕は自分を買ってくれる人に会う瞬間を想像して心を踊らせる。
しかし、新しい菓子が次々と発売される今日、昔ながらの菓子である僕の前で足を止める人は多くいても手にとる人は一部だけだった。
僕はそれを悲しく思うと同時に、自分と出会った人を笑顔にしたい、その人の幸せを作りたいと強く思うようになった。
そんなある日、僕は高校生の女の子に買われた。 長い黒髪と澄んだ瞳がとても綺麗な女の子。
次の日から彼女は僕を鞄に入れて学校へ行くようになった。
しばらくの間一緒に登校しているうちに、僕は彼女の事を段々と知っていった。
常に周囲を気遣う優しい女の子であるということ。自分に自信がないせいか、人、特に男の子と話すことがあまり得意ではなく、休み時間には少人数の女友達と話をしたり、一人で読書をしていること。
しかし最近友達の一人に恋人が出来たことで、その友達が幸せそうに話をするのを微笑みながら聞いているけれど、内心恋をしている、友達が羨ましいと思っていること。
自分も恋がしたいけれど男の人が苦手な自分には無理だと思ってしまう、そんな自分を少し寂しく思っていること...。
彼女の気持ちを知る度に僕は力になりたいと強く望む。けれど彼女はなかなか僕を鞄から出してくれず、もどかしい日々が続いた。
しかしそれから数日後、彼女が久し振りに僕を鞄から取り出したその時、僕の出番はやって来たのだ。
ある日の休み時間、彼女は甘い物を食べようと鞄に潜ませていた僕を取り出した。その時、
「あ、ミルクキャラメルじゃん!それ好きなんだよね!俺にも一つくれない?」
一人の男子生徒が彼女に声をかけた。その声に驚いて彼女が上を向くと、人懐こい笑顔をした男子生徒が彼女を見ている。
彼女の緊張と戸惑いが僕に伝わってきた。しかし同時に彼女の周りを取り巻いていた空気の色が、白色から桃色へと染まるのを感じる。
「うん、どうぞ」
彼女が笑顔で僕の入っている箱を傾ける。恋が始まる予感の中、僕は明るい外へと箱から飛び出した。 〈完〉
この小説は、私が書いた小説の中で初めて誰かに読んでもらうために書いた作品です
(説明にも書きましたが、「森永 キャラメル小説コンテスト」に以前応募した作品です)
内容、語彙共にとても拙い作品ですが、これから書いていく作品と一緒に温かく見守っていただけると嬉しいです!
とてもスローペースで書いていきますが、これからよろしくお願いします!