start アラート 為して
詩でありながら、お話でありながら。
ここは誰もが余韻に浸れようとする場所
学園 滔々耽韻学園/とうとうたんいんがくえん
少々苦労して受験に臨み無事合格しました私は。
主人公が如何にも座りそうな窓際の席にて呟き綴るのです。
長き長きプロローグの様な物を。
ちなみに私の名前は。
無為 無法/むい むほう
では開幕―
僕は、彼女の事が好きです。
彼女の名前は、音為 音鎖
おとなし/おんさとよむらしいです。
もう一度言います。
僕は、彼女の事が好きです。
放課後、教室にて、今日も彼女は一人で
その名前とは裏腹に音楽を好むようである彼女は、自らの日常スタイルを
一ミリたりとも崩すことなく、聴覚補助デバイスを耳に装着して一人耽溺しているご様子でした。
彼女は、其れを成している時、とてもうっとりとした表情をしているのです。
そして、そんなうっとりとしている彼女を見ている、あぁいえいえばれないようにひっそりと
教室の彼女の机付近に忍ばせている盗撮機によって眺望しているだけです。
犯罪? いえいえ違います違います、僕は唯単に美しい彼女を見ているだけなのです。
これはいわゆる、皆様ペットショップで檻に入ったペットを愛でるでしょう?
それと同じなのです、わかりますか?
おわかりなさいね。
今日も私は懲りずに彼女を見つめます。
彼女は気付いていました。
僕が彼女を日がな一日中、見つめてしまっていたことを。
半ば、彼女は僕を同時に監視していたらしい。
今日、僕は彼女に言われてしまった。
「申し訳ございませんが、私は不通ですので、貴方に対して理解の範疇を及ぼすことが出来ません」
昼休み、裸眼の彼女が、私を訪ねに来たかと思うと、開口一番に、そう告げられました。
唯、口をかぽんかぽんと開いていたママの私は、為すがままです。
彼女は至って冷静。
昼休みに食べたハンバーグ弁当の下に敷き詰められているパスタ程に味気ない。
けれど、彼女にはどうやらソルトがかけられていたようです。
実を言えば、実を言うと。
昨日の晩、電話がかかっていたのです。
プルルル、プルルルと2~3回程鳴ったかと思えば
すぐ電話はプルリと唐突に切られましたのです。
ですが結局、それが彼女の今つらつら述べた、不通、それらしかったのです。
―普通とは―不通です。
彼女はどうやらそう言いたいようで。
「……何を言いたいのかはわかりかねますが、ならテリトリーを広げましょう」
「不可能、私の範疇に及ぶ物は、眼前でしか決まらない、でも敢えて聞く」
「―貴方は、―不通なの?」
ここまで読んだ貴方はきっと、これから
世の中を暴き曝け出すミステリーが始まるかと思ったでしょう。
でも違います。
今から、これから始まるのは。
絶理絶対に渡り彼女のワンマンショー
彼女は、これから普通を不通に染めてゆきます。
それはあらゆる方法で。
とてつもない手段をもってして。
唯、私は其れを彼女の一ファンとして、
ただ赤裸々にここに綴ってゆく次第であります。
浮如何 フドウ とは彼女の為に存在する言葉。
……ここまでを綴っておきながら。
私が知りたい事は、
彼女が私とのファーストインプレッションの時にて
掛けてきた電話の内容について。
だって、今でも私は、彼女の事が好きなのだから。
語る事なんてちゃんちゃら、ございません。