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三匹の鬼 8 夜

3色目        『三匹の鬼 8・夜』


驚くほどに何も問題は起きないままこの町も季節が変わり、


気が付けば明日は卒業式と結婚式だ。


そんな記念日の1日前、この日俺たち弟塚三兄弟と


愛すべき君ヶ主三姉妹の運命は


緩やかにそして確実に歪み始めていた。







「・・・げっ」


「え?」


やっと退院できて『幸せ』な私はルンルン気分でケーキを買って


おうちに帰ったのに・・・


なのに玄ちゃん!どうして私を見て「げっ」なんて汚い言葉


吐くのおおおお????!!!!


そんなに存在を必要とされていないの私?長女のプライドがベルリンの


壁の様に破壊されていく。はあああああああ・・・・・・


「うっ・・・うっ・・・」


あまりにショック過ぎて座り込んでしまった・・・。


あぁ、もしかしてこんなことしちゃう私だから嫌われているの?


うぅぅ・・・


「・・・えっと、えっと、文ちゃん」


「うっ・・・うぅっ・・・何・・・?玄ちゃん・・・」


「とりあえず、もう少しそこで泣いてて」


「・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!」


そう言って部屋を出て行く玄ちゃん。・・・そんな・・・そこまで私は


嫌われちゃってますか?入退院しすぎて家計に大打撃与えてるとか?


それとも私の胸が姉妹の中で一番大きいのがまずかったの?


ねぇ、ねぇ、玄ちゃん。どういうことなの・・・どういう・・・


「ふえっ・・・」


・・・やっぱり・・・私が結婚することが・・・納得できない・・・の・・・


「うっ・・・うぅぅぅっっ・・・ふぇっっ・・・ふえええええええええええっ」


高校三年生にもなってこんなに声出して泣いちゃうなんて・・・。


でも・・・でも私は・・・私は二人に祝って貰えないなら・・・


結婚なんかしたくないよぉ・・・!!!



「うわあああああああああああ・・・・


ああああああああああああああああああ


ああああああっっっ・・・」


「文台!!」


「ああぁぁ・・・?!」


流れた鼻水が口の中に入ったとき、私を呼ぶ声が聞こえたから、声がした


方向に首を向ける。


そこにいたのは孟ちゃんと・・・後ろに隠れて玄ちゃんが・・・


私の方を見ながら立っていた・・・。


「文台」


「・・・孟ちゃん・・・?」


「文ちゃん」


「・・・玄ちゃん・・・?」


二人揃って・・・どうしたの・・・。やっぱりわたしのことを・・・


「これ」


「え?」


突然、大きな布を差し出してきた孟ちゃん。それは・・・?


「作ったの」


「え?」


何を。


「二人でね・・・文台が入院中の間に、ネットで調べながら頑張って作ったの」


「?」


「本当は、ラッピングする予定、だったんだけど、文ちゃん、帰ってきたの、


早くて、それで・・・、あの、・・・ごめんなさい」


「・・・何で玄ちゃんが謝るの?」


悪いのは私なんだから、玄ちゃんは謝らないで!!


「さっき、『げっ』って、言ったから。文ちゃん、きっと、勘違い、


してそうだから」


「・・・えっと・・・えっと、玄ちゃん?」


「ん?」


首を傾げる玄ちゃん、可愛い。


「私のことを・・・嫌いとか、邪魔とか、金使いすぎとか、なんか色々迷惑


だとは思ってないってこと?」


「・・・嫌いじゃないよ?」


邪魔とかは金使いすぎとか迷惑とかは思われているのね。OK、把握しておくね。


「じゃあ結婚については?私が結婚するの嫌?!」


「ううん、嫌じゃないよ」


「本当に?」


「うん」


「!!」


感極まって鼻血がでそうになっちゃった。


もう、恥ずかしいよぉっ!!でも・・・今凄くうれしいよ・・・。


「ということで、なんか雑な扱いになっちゃって悪いんだけど・・・」


孟ちゃんは布を持ったまま私の方へ歩いてくる。玄ちゃんも孟ちゃんの後に


続いて近づいてきた。


目の前に立つ二人。




えっと・・・、何が始まるの?




「はい」


「へっ?」


「文台へのプレゼント」


「へっ?」


「私とお姉ちゃんから」


「へっ?」


「ウェディングドレス」


「・・・・・・え・・・・・・」


手渡されたのは純白の布。


そっと持ち上げてみれば、それはとても綺麗でシンプルな形をした真っ白な


ドレス・・・。


二人が作ってくれた、たった一つしかないウェディングドレス。




「・・・っ・・・」


言葉が出てこない。二人にありがとうって、


声を出して言わなきゃいけないのに・・・。


なのに、涙が止まらなくて・・・。


「・・・あっ・・・ありっ・・・ありが・・・っ・・・」


あぁー・・・もう、涙がポロポロしてきて上手く喋れないよ・・・!!


「・・・っ・・・」


身体が突然重くなったのでビックリして目を大きく開いたら・・・


孟ちゃんと玄ちゃんが


・・・二人とも高校生なのに・・・甘えんぼさんみたいに私に抱きついていた。



・・・もう・・・二人とも可愛い・・・


「・・・あり・・・がとう・・・」


頑張って声を出してみれば、耳には二人の啜り泣く声が聞こえた。


「・・・ありがとう・・・大好きだよ・・・」


ぎゅーって・・・ぎゅーって・・・ドレスを片手に持ちながら二人の身体を


抱きしめてあげれば、二人もぎゅーって私を抱きしめてくれるから・・・





だから・・・だから私は今・・・とても『幸せ』・・・

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