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三匹の鬼 7

3色目        『三匹の鬼 7』



結婚を決めたのも束の間、弟からメールが入りもしやと思ったら予想通り


文さん(俺のお嫁さんになる女の子)がまた病院へ運ばれたらしい。


今回の原因は文さんが束ねているメンバーの子達と一緒に入った喫茶店で


注文した白玉入りのパフェ。


文さんはその白玉入りパフェを食べながらメンバーのみんなに卒業後、


俺と結婚するということを発表。


文さんへ送られる祝福の声。それを聞いてテンションが上がってしまった


文さんは大粒の涙を流しながら勢いよくパフェを口に頬張った。


結果、パフェの中に入っている白玉3玉を生クリームやバニラアイスと一緒に


噛まずに飲み込んでしまった文さん。


パフェを食べながら途中で呼吸困難に陥り顔を真っ青にさせながらテーブルの


上に倒れ込み救急車で運ばれたそうな・・・。


なんて、語っている場合じゃなかった。



「・・・公さん・・・」


病院へ行くとベッドの上で正座をしている若干涙目の文さん。


「どうしたの。また医者から笑われたの?」


文さんは首を左右に振り俺の言葉を否定する。うーむ・・・


じゃあどうしたんだ?文さんは


「私・・・また病院に運ばれちゃった・・・」


「うん。まぁ仕方ないんじゃない?」


君は極度のドジっ子だもんね。


「仕方なくないよ!!私、こう見えてリーダーなんだよ?みんなを纏め上げ


なきゃいけないのに、今日もまたメンバーのみんなに助けて貰ってばかりで・・・。


高校生活もあとちょっとなのに、


みんなに全然リーダーらしいことしていない自分が嫌で嫌で・・・!!!


・・・うぅぅ・・・」


感情を高ぶらせちゃったから疲れたのかな?


唇を噛みしめながら泣くことを躊躇っている文さんの身体を抱きしめて


あげれば、緊張の糸が切れたのか声を荒げながら鳴きだす文さん。


大丈夫、俺がずっと抱きしめていてあげるからね。


「公さん・・・!!公さん・・・!!」


「うん、大丈夫。俺にはそんな気遣い、いらないからね」



「・・・じゃ・・・じゃあ・・・」


泣くのを止めてゆっくりと顔を上げると、文さんは年の割には皺が多く


老け顔である俺の顔にそっと唇を近づけていき・・・。




「ん・・・」





いつだってそうだ。


いつだって不安を拭いたい時、文さんは俺にキスをせがんで来る。


分かりきっていたことだから俺に差し出された唇を食す。


最初は軽く、徐々に広く、深く味わっていきながら何の断りを入れずに内部に


舌を潜入させ深く奥まで味わい尽くす。


「・・・はぁっ・・・」


唇を離せば唾液がだらしなく垂れてくる。


文さんの口元をそっとハンカチで拭いてあげれば、「ありがとう」と感謝の言葉が


笑顔と共に送られた。


笑う文さんの姿が俺は一番好きだ。好きで好きで好き過ぎて、身体の熱が高まって


しまう。


「・・・文さんや」


「・・・何ですか?公覆さんや」


こういう時だけフルネームで呼ぶのは勘弁して頂きたい。


「あの・・・申し訳ないんですが」


「・・・」


「もしよろしければ・・・」


俺がお願いを言い終える前に文さんが先に動き出す。


ベッドに置いてある枕を両手で叩きながら俺を呼ぶ文さん。


「こっち、ここに座って」


言われるまま靴を脱ぎ捨てて枕が置いてある方へ上る俺の姿を見ながら


「うん、うん」と首を縦に振るう文さん。


とてもご機嫌そうで何より。


「えっと、座りました」


何なんだろうかこの状況。


高校生の男女が二人、病院のベッドの上で正座しながら向き合う夕刻。



不思議な風景だ。


「では、始めさせていただきます」


文さんが深々とお辞儀をするので、俺も深々と頭を下げる。


「よろしくお願い致します」


言い終えると文さんの手が俺の腰に巻かれている学校指定のベルトに向かって


伸びてきたので、俺は頭を下に向けたまま事の成り行きを生暖かい視線で見守った。


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