三匹の鬼 6
3色目 『三匹の鬼 6』
「ねぇ、うんこ」
「うんこじゃねぇよ、雲長だよ」
「どうなってんの」
「・・・」
本当に、世の中・・・いやこの町は常時おかしいよね。
現在屋上に居るのは嫁さんと愉快な仲間たちと俺、そして・・・
「何よ」
目があった相手全員に眼を飛ばしている讐居瑠葉 奉先。
「何よじゃねーよ!アンタなんでうちの高校にいるのよ!!」
翼徳の問いに答えたのは讐居瑠葉ではなく俺の嫁さんだった。
「それについては私から」
周囲の空気が変わる。さすが俺の嫁さん、カリスマリーダーって
感じだ!
「えっと・・・、この子は奉ちゃん。
私の友達以下他人以上な正直仲が決していい訳では無い子。
今日からうちの学校に通うことになりました。
学費や手続きなどは暴力的で人格破綻者な逮捕歴有の奉ちゃんを川で
拾ったという、桃太郎のおじいちゃんおばちゃんのような、ものごっつ物好きな
男の御両親が、将来そこに嫁ぐということを条件として、出してくれたそうです」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
空気は張り詰めたまま。
だが確実に俺を含めたこの場にいる嫁さん以外の人間全員が口角をピクピクと
痙攣させ、必死に笑うのを堪えていた。
当の本人である讐居瑠葉は顔を真っ赤にしながら俯いている。
照れているのか、恥ずかしいのか・・・俺には全く理解不能だ。
だってこの子を拾った男というのは俺の元ストーカー・纏伊 文遠だろ?
実家は赤の他人を一人養えるほどの金持ちで、しかも相当な人格者だっていうのに
・・・どうして息子だけあんな変態野郎になってしまったのか。
謝れよ、腹痛めて産んでくれたお母様に謝れよ!
「みんな、殺したいとは思うけど、どうか殺さないで、仲良くしてあげてね」
嫁さんの言葉に反論することなく頷く一同。
ま、嫁さんがそう言うなら誰も文句は言わないよな。
やはり俺の嫁さんは今日も天使の様な女性だ。
「ねえ玄徳」
屋上でみんな輪になってご飯を食べていた時、私の横に座っていた奉ちゃんが
購買部で買ってきたコロッケパンを口に頬張りながら話しかけてきた。
モグモグしながら喋っちゃいけないんだよ?
「なに?」
「玄徳はお姉さんが嫌いなの?」
「なんで」
「私を利用しようと企んでいたっていう人物は、あんたのお姉さんの知人
なんでしょ?」
知人っていうか・・・、まあ、いいか。
「うん」
「それを知っていながら計画を阻止したのはお姉さんへの嫌がらせ
なのかなって・・・」
「嫌がらせは、いけないことなんだよ?」
ちまちまやらずに殺すなら一気に殺せ、ってね。
「じゃあ」
何故かって?
そんなの決まっているよ。
「私、嫌いなの。あの女」
「あの女って」
奉ちゃんが喋る前に私が喋る。
「私は私を同じ人間として見ない人間のことが大嫌いなの」
あの女も、
あの人も、
大嫌いだ。




