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三匹の鬼 2

3色目        『三匹の鬼 2』


「あなた、おはよう」


道場の中へ入ると夫は私に微笑みかけてくれた。


一緒にいる少女は今日も無表情で私を見つめている。


何か言いたいことがあるなら言えばいいのに。


「おはよう」


「朝ごはんの準備できたから」


「わかった。毎日来てくれてありがとう」


「どういたしまして」


「じゃあ、戻ろうかな」


夫は少女の手を握ったまま立ち上がりそのままこちらへ向かって


歩きだした。


何故手を握る必要があるのか問いただしたいところだが、


私は大人だからそんなことは聞かない。


私の目の前に立つ二人、先に手を離したのは少女。


瞬間、夫の顔が少しだけ引き攣ったことを私は見逃さなかた。


なんて顔をしているのだろうか。


「じゃあね、おじさん。私、家に帰らないと」


「うん。じゃあお姉ちゃんたちによろしく」


「わかった」


少女の頭を撫でようとする夫の手をすり抜けて少女は下駄箱に


向かって歩き出す。


この子はきっと夫の気持には気づいていないのだろう。


私はそう思い込んでいるが、だがそれはまだ確実的なものではない。


靴を履いているこの少女だって同じ女なのだから。


私が居るから敢えてそういう素振りは見せないだけで、見ていないところでは


何をどこまでしているのか分からない。


「さようなら、玄徳ちゃん」


優しい声を掛けてやれば、君ヶ主家の末娘は足を地面に軽く数回叩きつけて


靴を足に馴染ませてから、私の方に向いて深くお辞儀をした。


「さようなら、おばさま」


「さようなら」





また明日。




君ヶ主家の末娘が階段を降りて行くのを夫と二人、並びながら見つめていたら


久しぶりに夫の方から話しかけてきた。


「覗きなんて、悪趣味だよ」


「他人の子供と朝から密会しているあなたのほうが、よっぽど悪趣味でしょ」


「密会だなんて・・・。人聞きが悪いな」


そう言って私に微笑みかける夫。


せめてこの笑顔が嘘ではないようにと願いを胸に込めながら私も微笑みを返した。




「じゃあ、何で毎日会っているの?」



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