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三匹の鬼 10-3

3色目        『三匹の鬼 10―3』



父が再婚したのは私が中学1年生の頃。


それからすぐ父がうちに連れてきたのはハニーブロンドの長い髪が靡く美しい


女性と、その女性にそっくりの幼い少女。


少女が私に向ける笑顔はいつも明るくて、性格も外見も地味な私にとってそれは


とても眩しかった。


だけど、嫌じゃなかった・・・。









「・・・はっ」


我に返る。


伏せていた顔を上げて辺りを見渡すとすぐ、現実に引き戻された。


リビングで泣き崩れる両親。その腕の中には小さな白い壺がとても大切そうに


抱かれている。


・・・あぁそうだ、妹が・・・公路が・・・殺されたんだ・・・。




私は立ち上がると台所へ行き冷蔵庫から牛乳を取り出すとパックに直接


口を付けて一気に牛乳を飲み干す。


普段こんなことをしたら『行儀が悪い』と強く怒られる飲み方だが、


そんな注意をするような余裕など今の母にはなかった。


「ぷはっ」


強引に飲み干した牛乳の大半は口の中へは入れずに顎を伝って床に落ちて行き、


私の足元には白い水溜りが出来ている。


喪服に付いた独特の臭いが鼻を突く。なんだかとても気持ちが悪くて、同時に


精神がまともに保てなくなってきた気がする。



例えるなら、そう・・・。



私の足元に出来た白い水溜り。



これは牛乳ではなくて、妹を殺した犯人の男の○○○○だとか思えちゃったりしちゃって。



「うぐぇっっ・・・!!!」


吐き気を催したのでその場で胃の内容物を一気に吐き出す。


「かはっ・・・はっ・・・はぁっ・・・」


吐き出しながら私は泣いていた。


苦しさと悲しさが交互に来たから。なので、そのまま床へ倒れ込む。


真横に嘔吐物と牛乳の混合物が存在しているため、更に吐き気を催したので


身体を横にして2度目の嘔吐。


しかし嘔吐の連続で台所全体に異臭が立ち込めてきたため、耐え切れず


3度目の嘔吐をその場でしてから風呂場へ向かって走り出す。


走りながら私は自分が出した劇物を後に処理するであろう我が家の使用人たちの


姿を思い描き、大変申し訳なくなり脳内で土下座をしておいた。


風呂場に付くと衣服を着たままお湯の張られた大理石の浴槽へダイブ。


浴槽から溢れ出るお湯と共に流れ出す玩具。


三十秒ほど湯船の中へ潜っていたが息が苦しくなってきたので堪らず顔を上げてみると


視界に入ってきたのは排水溝のところであの子がよくお風呂で泳がせていた玩具・


泳げ瑠太郎が穴に入れず寂しそうに一人放置されている姿。


それが殺された妹の姿と重なって見えた私は再び湯船の中に身体を沈めた。



願わくば、私もこのまま公路のところへ・・・。


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