三匹の鬼 9
3色目 『三匹の鬼 9』
朝5時、夜中に目覚めてしまった母を何とか寝かしつけて
再び寝室へ戻ったものの目が冴えて眠れない。
結局今日も寝たのは2時間ちょっと。全身が重たくて気分も優れない。
きっと身体が限界を感じているのだろう。あぁ、もういいや。
学校・・・休もう。
学校なんて行っても、成績が良くても、きっと私は卒業したら大学へは
進学できない。
家に籠り、母の看病をしなくては。お金はお父さんが生きている限りは
安泰だし、もし死んだとしても・・・。
それでも十分な位にお金の蓄えがあるから生活に支障は出ないだろう。
だがそんなことどうでもいいことなんだ。
「・・・はぁ・・・」
とりあえずベッドの上に寝転んで目を瞑ってみる。
・・・眠れない。
またいつ母が起き出すのか、起きて家の中を徘徊してあの子の名前を呼んで
泣き叫ぶのか、それを押さえ込んで落ち着かせなければいけないのか。
そんなことを考えるだけで身体の節々が痛んで来る。
考えたくない、考えちゃだめだ。布団を頭からかぶり目を閉じ続けるが、
全く眠気が襲ってこない。
むしろ不安だけで頭がいっぱいになっていき、また私は目を開く。
ベッドの上、外は雨が降っている。
「・・・」
白い天井を眺めていると自然と頭にあの子の記憶が蘇ってきた。
長くて綺麗なハニーブロンドの髪の毛、陽だまりのような温かい笑顔、
みんなに愛されたあの子が、なぜあんな死に方をしなければ
いけなかったのか。
どうしてあんな酷い目に遭わなければいけなかったのだろう・・・。
「・・・公路・・・」
その時、机に置いてあった携帯電話が音を立てながら振動し始めた。
無視をしたかったが、うるさいとまた母が起きかねないので電話番号も
確認しないで私は電話に出る。
「・・・もしもし・・・?」
こんな時間に掛けてくるなんて・・・。孟徳?
でもあの子はこんな非常識なことはしないし。
「・・・もしもし?」
相手は何も言ってこない。ただ外から掛けているのか耳に強い雨音が
聞こえる。
イタズラ電話だと思い電話を切ろうとした時、決心がついたのかやっと
電話口から声が聞こえた。
それは本当に久しぶりに聞く彼の声。
「お久しぶりです・・・本初お姉さん・・・」
「・・・紀霊・・・くん・・・?!」




