予期せぬ
俺は死ぬ事が出来ない。今まで幾度となく、死にトライしてきた。大量の薬を飲んだり、手首をカットしたり、マンションの最上階から飛び降りたり、走ってくる車や電車に飛び込んだりと。
しかし、薬を飲んでも早くに発見され、胃洗浄を行われ。手首をカットしても意識を失うだけで、気が付くと手首の傷が乾いていたり。飛び降りをしても、植え込みに落ち、軽傷に終わったり。車に跳ねられても、受け身をとってしまい結局、死に至れず。電車に飛び込んでも、線路の真ん中で、俺の真上を電車が通過したりと。
俺は死にたいのに、死に神から見離されているんだ。
ある日、バイトの帰りに暗い路地裏を通った。家までの近道を、昼間に発見したのだが、まさかこんなに街灯のない暗い道だったとは……。
しかしバイトの帰り道は、その日からその路地裏に定着した。暗い道ではあるが、近道である事には変わりはなかったからだ。
そんなある日、いつもと同じように帰り道を歩いていると、突然目の前に真っ黒な姿の男が現れた。
その瞬間、胸に痛烈な痛みが走った。俺は、その男にしがみつく、男は俺を振り払おうとする。そんな乱闘の揚句、男の顔に驚きの表情が現れ
「そんな事言うんじゃねぇよ! それじゃ、まるで俺が人助けしたみたいじゃねぇかよ!」
俺が大量の血を流しながら、その場に倒れ込むと、男は恐怖したその目で俺を見ながら、逃げるようにしてその場を去っていった。
『ハハッ。これで……、やっ……と……』
ありがとうにも、いろいろある?